エピソード主義について

全聾の作曲家・佐村河内守のゴーストライター問題から、作品批評におけるエピソード主義についての話。
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服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

「現代のベートーベン佐村河内守」の存在を今回初めて知ったのだが、僕の目から見ればこれは結構痛快な話だな。みんな「音楽」を聴いてたんじゃない。音楽にまつわる「裏話」を買ってたんだよ。僕はこういうのを「エピソード主義」と呼んでいる。 http://t.co/rU0teAQi7g

2014-02-06 06:20:28
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

ベートーベンの楽曲は、彼が難聴だったという事実を抜きにしても素晴らしい。佐村河内守の名前でリリースされた楽曲が、作曲者が聾者であることを抜きにしても素晴らしいのなら(皆さんそのように絶賛していたわけだが)、本来の作曲者である新垣隆は今後売れっ子になるだろうけどね。そうなるかい?

2014-02-06 06:23:37
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

僕は映画批評の仕事をしているわけだけど、ここにも常に「エピソード主義」による評価は付いて回る。ほとんどの人は作品だけでなく、それ以外の部分も含めて作品を評価しているのだ。まあでも映画にしろ何にしろ、作品評価なんてそんなものだろうな。作品だけを純粋に評価することなんて不可能だし。

2014-02-06 06:27:22
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

作品にまつわるエピソードでCDが売れた例としてすぐ思い出されるのは、大江健三郎の息子大江光のCDが10数年前にバカ売れしたことだ。本人には知的障害があり、父親はノーベル賞作家。この話題性で大江光のCDは大層売れたけど、実際のところはどうだったのかね。

2014-02-06 06:36:29
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

大江光のCDが売れてたのはもう20年前か……。一応まだCDは出てるみたいですけどね。 http://t.co/fYAyCCpTr1

2014-02-06 06:39:17
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

佐村河内守のゴースト問題が急に出てきたのはなぜかと思ったら、今日発売の週刊文春にゴーストライターである新垣隆の記事が載るのね。週刊誌に暴露記事が出て大騒ぎになる前に、本人が真相を告白しておこうということだったわけか。 http://t.co/zoikVbWYvA

2014-02-06 06:46:18
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

無名の作曲家が作った曲に「絶対音感を持つ被爆者で聾者の作曲家が作った」というエピソードを添えて売っていたわけだけど、これは双方にとってメリットのある関係だったと思うんだよな。ただ内部で利益の分配がどうなっていたのか……。

2014-02-06 06:52:48
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

「社交下手な天才」と「製品にまつわるエピソードを作る天才」がコンビを組んで大儲け……。これアップルのウォズとジョブスの関係みたいだな。

2014-02-06 06:57:47
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

音楽評論家の長木誠司はこれを「現代的な事件」と言っているけど、エピソード主義は大昔からあったと思うよ。ただ現在はエピソードがないとものが売れない時代なのかもね。マーケティングの世界でも「ストーリーで物を売れ」とか言ってるし。 http://t.co/bW0P32llXq

2014-02-06 07:01:57
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

映画業界で有名なゴーストライターと言えば、赤狩り時代に偽名や他人名義で作品を発表し、『黒い牡牛』や『ローマの休日』でアカデミー賞まで受賞してしまったダルトン・トランボが有名。でもこのことを誰も責めないよ。ハリウッドを追われて困窮していた脚本家を、仲間が助けた美談になっている。

2014-02-06 07:19:03
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

エピソード主義で作品が葬り去られた例としては「一杯のかけそば」がある。作品自体はわるくない話。一時はすごいブームで映画化もされた。でも作者がろくでなしだったんだよね。それでみんな白けちゃった……。 http://t.co/T2yxh5J1c0

2014-02-06 07:27:13
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

エピソード主義に反逆しようとした小説家がスティーブン・キング。彼は「自分の本が売れるのは作品が評価されているからではなく、自分が有名作家だからかもしれない」と考えて、偽名で小説を書いて出版社に持ち込んだ。これはそこそこ売れたが、キングが書いたとばれた後にその何十倍も売れた。

2014-02-06 07:29:16
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

@281028 @nobeoka_apostle 映画やドラマのBGMや主題歌として音楽に出会うことはありますよね。でもこれも映画やドラマの内容と曲がダブって記憶されているわけで、純粋な意味での「音楽の価値」を評価しているのかはわかりませんけどね。でも音楽ってそういうもんです。

2014-02-06 09:28:10
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

@281028 @nobeoka_apostle 匂いもそうですけど、音楽のように言語化されていない体験というのは、特定の体験に結びついて強く記憶されることがあります。ある音楽を聴くと、頭の中が青春時代にタイムスリップ!とかね。まるで「ノルウェイの森」だ。

2014-02-06 09:30:56
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

@281028 @nobeoka_apostle 作品とは直接関係のないエピソードで物を売る、例えば今回の例だと「全聾の被曝二世が絶対音感で〜」みたいな話で音楽を売ろうとするのも、やっぱり音楽の聴き方を狭めることなんでしょう。だから付随するエピソードが瓦解すると音楽もダメになる。

2014-02-06 09:39:20
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

@281028 @nobeoka_apostle コロモはコロモで美味いのです。天ぷらそばの天ぷらはコロモがなければ話になりません。でも何事もバランスというものがありますからね。

2014-02-06 09:48:56
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

@nobeoka_apostle @281028 僕は「全盲のピアニスト」の存在は知ってますが、彼の演奏をCDでもラジオでもテレビでも一度も聴いたことがない……。

2014-02-06 09:50:05
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

「ラーメン発見伝」における芹沢の名言「客はラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」は、あらゆる「エピソード主義」に対する強烈な批判だと思う。「全聾の作曲家」というエピソードで、多くの人が作品を名曲だと思っていた。 http://t.co/MSObquUulc

2014-02-06 10:05:58
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

作品を批評するとき「作者の生い立ちや思想」を手がかりにすることは、昔からも行われていたし今も有効な批評手段だと思う。ただそれが肥大化すると、作品を見なくても作品をわかった気になっちゃうんだよね

2014-02-06 10:14:25
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

「一杯のかけそば」はいい話だけど、それが忘れ去られてしまったのは実話だという触れ込みだったからだろうな。日本中みんなが感動していたのに、作者の素行の悪さから「実話ではない」という話になった途端にそっぽを向かれた。

2014-02-06 11:11:28
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

世の中には「実話です」と言われると必要以上に感動する人が多い。これは映画も同じ。コーエン兄弟はそれを皮肉りあざ笑うがごとく、「実話です」と称して『ファーゴ』という映画を作った。中身は全部フィクション。でもそのことが『ファーゴ』の価値を貶めてはいない。大傑作だよ。

2014-02-06 11:16:26
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

「取材や制作の過程で検討やチェックを行いましたが、本人が作曲していないことに気づくことができませんでした。視聴者の皆様や番組の取材で協力していただいた方々などに深くおわび申し上げます」だそうです。朝日新聞はすごいなぁ。 http://t.co/cgydmYibZB

2014-02-07 11:45:47
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

一流の新聞マスコミであれば、作曲者が佐村河内氏ではなかったことを見破れるはずである……というのが朝日新聞のスタンスらしい。僕がこれを読んで思うのは、「朝日新聞とは何様なの?」ということなんだけどね……。 http://t.co/cgydmYibZB

2014-02-07 11:47:28
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

あるオリジナルの楽曲があり、その作曲者と称する人がいて、誰もそれを否定していない。その状態でなぜ「本当は違う」と見破れるんだろうか。楽曲が既出の完全コピーだった、盗作だったというのなら、それは気付かなかったのが悪いと言われるかもしれないけどさぁ。

2014-02-07 11:50:18
服部弘一郎(聖書&キリスト教ナビ) @bible_go

僕は映画批評家だけど、芸能人格付けチェックの「プロの映画監督が撮った映像」と「映画好きのアマチュアが取った映像」の区別が付かないことがある。これは出演者が同じ、セットが同じで、撮影や編集にも別のプロの手が入り、純粋に監督の演出力だけ比べるという、プロの監督側にも酷な企画かもな。

2014-02-07 11:54:00