お玉さんのほぼ日刊御手洗潔レビュー(1)
- taiga_tanaka
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さて、ほぼ日刊御手洗潔レビューその1『占星術殺人事件』 ご存知2012年の東西ミステリー100で『獄門島』『虚無への供物』に続き国内三位を獲得した紛うことなき歴史的名作で島田荘司のデビュー作。(1985年度版の東西ミステリーでの21位ってのも、何気にスゴイね) 別名、現代の古典!
2014-02-06 23:35:50『占星術殺人事件』 そして、第26回(1980年)江戸川乱歩賞の落選作(>人<;) 皆様周知の通り、井沢元彦『猿丸幻視行』が受賞されてるわけ。その時の選評を読みました。 …… はい、完全に『猿丸幻視行』の満場一致なのよ(>人<;) 占星術をけっこう褒めてるの、斎藤栄くらいヤン。
2014-02-06 23:36:51ま、『猿丸幻視行』面白いからしゃ〜ないよね。 『占星術殺人事件』の現実からの乖離度は察しの通りだが、よく考えたら『猿丸幻視行』も相当ファンキーでトチ狂った構成である。(褒め言葉) だが、読者への矢継ぎ早での謎の提示と畳み掛ける推理のスピード感の前に、違和感があまり感じられないのよ
2014-02-06 23:37:17つまり、『猿丸幻視行』は、かなり変なことやっていても、すごくわかりやすくて、メチャメチャ読みやすい小説なのよね。しかも歴史要素もスイスイ頭に入ってくるので何か賢くなった気がするのもポイントが高いΣ(゚д゚lll) 比較して『占星術殺人事件』は……
2014-02-06 23:38:29「父や姉妹を全部殺すほどの動機が充分説明されていない」(南條範夫)「あまりにもリアリティに欠ける」(海渡英祐) 『占星術殺人事件』の選評どおりの作品なんだよね。 何度も改稿されチューンナップされた『占星術殺人事件』での、それらのつけ込まれる隙は未だ残っており、的は外れてない。
2014-02-06 23:39:50僕らは『占星術殺人事件』以後の世界線で生きており、リアリティから逸脱したミステリにすっかり慣れてる頭なのだが、当時の感覚からすると(いくら幻影城とかのムーブメントで下地があったとしても) 「アゾートだぁ〜♫ 女のカラダを切り刻むぞ〜♫ 蘇れ〜♫」な内容は、変だよね? そうだよね?
2014-02-06 23:41:24けど、そこらへんのリアリティの希薄さ(特に動機まわり)は、『占星術殺人事件』のその他を構成要素の魅力の大きさの前にはすっかり麻痺しちゃうんだよね。正直、どうでもよくなっちゃうの〜
2014-02-06 23:45:00①美女切断という猟奇いっぱいの事件を ②漫才のような掛け合いをするホームズとワトスンばりの愉快な探偵たちが ③物理的大トリックを解き明かすことで事件の不可思議な事柄を ④きわめて論理的に割り切れるカタチで解明する んだから魅力満点。動機なんて感傷的な手記の言いなりで構わんよな
2014-02-06 23:46:51①猟奇ムンムン♡ ②イけてる探偵♡ ③大トリック♡ ④合理的に割り切れる快刀乱麻な解決♡ を考えたとき、過去の国内作品で相当するのが『獄門島』と『人形はなぜ殺される』くらいしか類例が浮かばなかった。①や②や④は単独及び複合で何点か浮かんだが、やはり③を満たすのが……ないんよね
2014-02-06 23:47:25ちなみに読者メーターとかブログ感想とかで『占星術殺人事件』を見ると、やはりあの大トリックのことばかり。 凄かったです、とか。マンガで読みました、とか。金田一許さん、とか。『六枚のとんかつ』でもパクられてるよ、とか(ウソ、それはなかった……(>人<;)) あの、大トリック!
2014-02-06 23:48:09『占星術殺人事件』 あの大トリック自身よりも、それを解明した直後での、死体の位置と穴の深さに関しての推理のほうが、僕はシビれるんだけども……、ね。
2014-02-06 23:48:41ただあの大トリックが頭の中から離せないので、再読の際の中盤での石岡クンの大阪や明治村の探索行、足で調べる当時のミステリシーンにおけるリアリティの付随的行為なのだが、ここがものすごく味気なく退屈に思えるのよ。このパート、あの大トリックの引力から完全に離れているもんなぁ
2014-02-06 23:51:24(まあ、島田荘司の興味や関心の対象が目まぐるしく変化していても、それを見つめる島田荘司自身の視線の位置は一貫しているんだなぁ〜、というのがあの調査の描写から伺えるので、このマラソン的には、収穫が大きかったのだが……) やっぱりあそこは、ちょっと退屈だよね(キッパリ)
2014-02-06 23:52:55あっ、血液型に関するトリビアちっくなデータが、あの読者への挑戦状、その以前のページにキチンと明記されていないのは、ちょっとアンフェアじゃないかなぁ〜。そこが不満
2014-02-06 23:54:43『占星術殺人事件』 そして、あの大トリックの影にこれも隠れてしまっているんだけど、俺、思うんだぁ〜。 あの第一の殺人事件での密室トリック。アレ、『水晶のピラミッド』の真の解答で明示される密室トリックと双璧レベルでの、超しょうもないトリックなんじゃないかしら?(>人<;)
2014-02-06 23:56:26第二の殺人に関しては、世間の目を誤魔化しつつも、特定の個人に対して最大限の効力を発揮しており、尚且つ労力と手間も少ないトリックなので、私、結構好きだったりします。 また第二の手記の、おにぎり三つや妻の病気のくだりが、この浮世離れした物語の中ではリアル生っぽさになってるので、好き。
2014-02-06 23:58:03『占星術殺人事件』 あの大トリックだけでなく、こまごまとしたトリック(手記でのあの記載とかね)も仕掛けてるんですよね、あの犯人。 ただ以後の作品と違い、全てのトリックが明確な意思の下、計算づくで実行されており、偶発的な要素が全く存在していないことに、ちょっとモヤモヤを感じるのです
2014-02-06 23:58:53『占星術殺人事件』は島田荘司の代表作なんだけど、僕の中の島田荘司のイメージは、犯罪事件の中で「偶然にも起こってしまった」奇妙な現象を物語のシンボルとして用いるそんな作家なんよ。鎧武者が飛んだり、怪物や巨人出たり、変な夢見たり……。 (そこらの突っ込んだ考察は人喰い木のときにでも)
2014-02-06 23:59:26『占星術殺人事件』では犯人側における偶然成分が極めて少ない。むしろ以後の作品で、何でそこまでわかるの? クラスの推理を綴る御手洗が、偶然の助けで真相を得るカタチになっている。 この作品の犯人は全島田作品の中でも一番の名犯人だろう。(匹敵するのは『奇想、天を動かす』のあの人くらい)
2014-02-07 00:00:21『占星術殺人事件』 名犯人vs御手洗潔。この作品で見られたその可能性は、その後の作品でどんどん変遷していく御手洗潔というキャラクター性が故に成立しづらくなっていくんだなぁ〜(>人<;) 正直、この作品の御手洗は、ちょっと変だけど、まだ普通の人だものなぁ〜
2014-02-07 00:00:59うん、その後の島田荘司の三十年を考えたとき、「島田荘司のらしさ成分」が『占星術殺人事件』には薄いように感じるわけ。 代表作でありながら異色作。 冤罪やら都市論やら脳科学や犯罪学。出来すぎた偶然、翻弄の運命、とにかくロープ。そういった要素が、この作品には存在してないのよね。
2014-02-07 00:01:36というわけで、長々とした、しかし、要旨が不明な『占星術殺人事件』の感想でした。 『占星術殺人事件』はデビュー作という性質を除いても島田荘司の中では特別な作品だった。 そういうことが言いたかったんだ♫
2014-02-07 00:04:59しかし『占星術殺人事件』という本に纏わるアレコレが、いろいろと楽しすぎるよなぁ。 最初の版では御手洗と石岡クンの名前が違ってた、というのは有名だが、文庫化の際メチャメチャ揉めた話(島田荘司全集ⅳ)や、熱いラブコールを送った森村誠一のエピソードはいい話だよね( ´ ▽ ` )ノ
2014-02-07 00:05:48あと、その年の乱歩賞に下読みで参加してた梶龍雄に「目ぼしい作品はなかったか?」と電話連絡してたり、『占星術のマジック』の落選を知り徳間書店で刊行させようと暗躍したりしていた鮎川哲也(あゆてつ( ´ ▽ ` )ノ)には、ものすごいファンタジーを感じるよね(『本格ミステリー館にて』)
2014-02-07 00:06:06