肉ネームさんによる、ゲド戦記の楽しみ方

肉ネーム @mn38ka

そういえば、アニメーションも監督の人格に関わらず面白いものは面白くクソはクソですけど、宮﨑吾朗監督のゲド戦記は、映画として面白くないですけど、彼の人生、人格を知った上で見るとめっちゃ楽しいので、そういう見方をするといいですよ

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吾朗のゲド戦記を語る上で駿のもののけ姫は外せなくて、これは親子で対になる作品なんですね。両方とも、呪われた王子様の放浪を描いた作品なんです。ただ、主人公の描き方と登場人物に大きな差がある。

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アシタカが呪われた理由は明白。村を守るために神殺しをして呪いを受ける。外から見てハッキリわかる。一方、アレンは呪いを受けてる事さえ明示的に描かれない。既に呪いの中にいて辛い心情だけが前面に出てくる。これを、単純に「吾朗の着眼点が悪い。説明が足りない」と読むとゲドはつまらん

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実はアシタカもアレンくんも、モデルはどうも吾朗くんらしいのである。宮崎駿は、中学生くらいになり心の闇のようなものを見せ始めた吾朗君を見て、彼を励ますために呪いを受けた主人公が、曇り無き眼で見定め、決める物語の映画を作った。

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吾朗くんは実際、どこに行き何をしても誰からも、"あの宮崎駿の息子"としてしか認識されない、というクソみたいな困難さの中にあったらしく、その呪いとどうやって生きればいいかについて、親は「頑張ればなんとかなるっしょ」と描き、子は「ワケわかんねぇマジで辛すぎる…」と描いたのである

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それと合わせて「ゲド戦記に出てくるアレン王子が父王を殺すシーンは原作に無く、吾朗が入れた」てとこを押さえておくと、クッソ面白いですよ。親はアニメを通して息子を応援しようとしたのに対し、息子は父の愛したアニメを通して恨みを叩きつけ返してる。この映画見た時の駿の心境、マジで知りたい

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愉快なのが、もののけ姫には、アシタカのお父さんは出てこないが、ゲド戦記の方には父王と、魔法使いゲドが、明らかにアレンの父親役として劇中に出てくる。そしてきっちり、父王とゲドの二人ともがアレンに刺される。マジで駿はこれ見てどう感じたんだろうなー

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で、見た人皆が批判して、原作者にまで批判された「ゲドがアレンに長ゼリフで説教するシーン」、ここも映画の中だけでみるとゴミシーンです。アニメがメッセージを絵や動きでなく文章で伝え出したらアニメと演出の敗北ですが、この時、映像は、ゲドがアレンを抱きしめてるんですね

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悪い魔法使いに支配されたアレンはゲドを刺し殺そうとして、ゲドはかわしてアレンを抱き止めて動きを封じる。その後、ゲドは囚われ、しかしアレン君はなんやかんやありつつ自分を取り戻して主人公として復活するんです

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映画だけ見ると難しい。なぜアレンは父王を殺したかわからない。アレンが呪われている理由も悪の支配から逃れた理由も、よくわからない。けれど、監督の人格と人生を踏まえるとすごく単純明確。全部「お父さんだから」です

肉ネーム @mn38ka

で、ここでさらに、吾朗君が小さい頃、まだ監督として有名になる前の駿は、めっちゃ吾朗君を可愛がり一緒に絵を描いて遊んだらしく、吾朗君は将来アニメーションをやりたいと思ったそうな。 けど、監督として売れ出した駿は「比較されて不幸になるからやめろ」という

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それで吾朗くんは一旦建築の道に進むも、ゲド戦記でアニメの道に戻ってくる。その中で父王を殺す王子、父親役のゲドをまた殺そうとしつつ抱擁されて改心するアレン君を描く。 吾朗くんはゲドの抱擁でアレン君の殺意が改心することを疑ってないんです。

肉ネーム @mn38ka

殺したいほどの憎しみを抱きつつ、同時にお父さんと一緒にアニメを作りたくてたまらない吾朗君の、切り分けることのできない愛憎の深さもやばいし、ゲド戦記の後、実際に親子でコクリコ坂を作ってるのもやばい。制作に行き詰まる吾郎に、駿が1枚の絵を渡して、また吾朗が進み出した小話とかやばい

肉ネーム @mn38ka

あの親子マジでおかしいからな。親が子を応援することも、子が親に憎しみを伝えることも、全部アニメーションを通してしかできなくて、和解ですら、一緒にアニメーションを作る事でしか歩み寄ることができない

肉ネーム @mn38ka

そういう、宮崎駿吾朗親子の、ドロッドロの愛憎劇を踏まえた上で、宮崎駿ともののけ姫に対するもうひとつの影、コインの裏側としてゲド戦記を見ると、クッソ面白くてよだれ出るからな。映画はつまらんけど