ラルフ・ローレンVSトミー・ヒルフィガー仁義なき戦い

本で読んだ90年代のラルフ・ローレンとトミー・ヒルフィガーのマーケティング戦争がとても面白かったので記録に。まとめを作るのは初めてなのでつたない点はご容赦ください。
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カム @comekurisu

テリー・エイギンス著「ファッションデザイナー―食うか食われるか」を読んでるが面白い。著者は、ウォールストリートジャーナルに寄稿するような人で、ファッションに対して大して愛情なさげでむしろ皮肉っぽく、純粋なマーケティングとしてみているのだけれどそこが面白かった。 

2014-02-08 23:03:04
カム @comekurisu

2000年に出版された本だけど、ファストファッションに関する予言めいたことも書かれていてたりする。特に第三章のラルフ・ローレントミー・ヒルフィガーについて書かれていたものがとても面白かったので備忘録がてらまとめて投稿したいと思います。ウザかったらすいません。 

2014-02-08 23:03:51
カム @comekurisu

僕は80年生まれで、アメカジよりも裏原がブームの世代で、その後2000年代半ばあたりからアメカジを多く買い始めた人間です(単にデヴったから)。90年代に関しては渋カジもひと段落し、アメカジというとエイプがモチーフにしてるか原宿のプロペラくらいしか印象にないです。

2014-02-08 23:05:36
カム @comekurisu

ゼロ年代には若者よりも一番金を持ってるかつてのポパイ世代を対象にした雑誌フリー&イージーなんかで盛り上がるのですが、そもそもそこで押されていたのは日本人好みの凝りまくったラルフ・ローレンでトミー・ヒルフィガーはギャップやバナリパと同じでアメカジ好きに取り上げられた印象がない。

2014-02-08 23:06:19
カム @comekurisu

だからこの二つが並べられているのが非常に違和感があったのですが、読んでみるとアメリカ文化の移り変わりなどにまで言及された非常に骨太な文章でとても楽しめました。ちなみに僕はアメリカにもヒップホップ文化等に大して詳しくないのでアレな点が多々ありますがご容赦を。

2014-02-08 23:07:06
カム @comekurisu

ラルフ・ローレンとトミー・ヒルフィガーには色々共通点があるようです。NY出身の白人であること、一部の人々からは剽窃者とみなされていること、自らデザインをせず、イメージをデザインチームに伝え、それを修正していくクリエイターというよりは編集、リミキサータイプであること。(続く)

2014-02-08 23:08:15
カム @comekurisu

(承前)ともに星条旗に強いこだわりがあり、購買者の帰属欲求をあおる事で成功したデザイナーであること等です。とりあえずまずは両ブランドの歴史を簡単に記しつつ、共通点について掘り下げ、相違点にも触れたいと思います。

2014-02-08 23:08:59
カム @comekurisu

ラルフ・ローレンは1939年、NYのブロンクスでロシア系アシュケナジムユダヤ人の移民の子供として誕生。出生時の名前はラルフ・リフシッツ。大学中退後ブルックスブラザーズの営業マンをやり、1967年にネクタイの店を開店。その後、洋服も手掛け始める。

2014-02-08 23:19:23
カム @comekurisu

初期のラルフ・ローレンの特徴はアメリカ上流階級の服装(三つボタンの紺ブレザー、ボタンダウン・シャツetc)をアレンジし、「高価ではあるが買えないほどではない」値段設定で上昇志向と上流階級への憧れを叶えてくれるものとして白人中流層をターゲットにした事。 

2014-02-08 23:20:10
カム @comekurisu

これに反発する本物の上流階級でアイビーリーグな方々も。「自分達にとってファッションではなく伝統であり血統書であるものをブロンクス出のユダヤ人が剽窃し貧乏人相手に金儲けに利用している」といった感じ。ビースティーボーイズが黒人から似たようなこと言われたし、どんな文化でもある話ですな。

2014-02-08 23:21:30
カム @comekurisu

こんな批判もイその後急成長し、ネクタイ点から始まったラルフ・ローレンが巨大な帝国を創りあげ、イギリス王室までラルフ着たりするになった今からすると隔世の感がある。そんなわけでトミ・ヒルフィガーが出てくる80年代半ばにはアメリカを象徴する総合的なブランドになっていたわけです。

2014-02-08 23:29:21
カム @comekurisu

一大で帝国を創りあげたという点とブランドイメージから貧乏な元軍人が恋人をとりもどす為にあらゆる事をやって一大で財をなし、徹底的に「上流階級のアメリカ人」に自己改造する、「グレート・ギャツビー」のJ・ギャツビーとローレンは重ねて語られる事が多いらしい。

2014-02-08 23:31:43
カム @comekurisu

ちなみにローレンはグレート・ギャツビーの最初の映画化の衣装を担当してアカデミー賞受賞。最近のディカプーバージョンではブルックスブラザーズが担当したけど、確かにギャツビーという人物が持つエグさにはブルックスのシックさよりもローレンが持つギラついた感じの方が合うんじゃないかと思う。

2014-02-08 23:33:20
カム @comekurisu

一方のトミー・ヒルフィガーは1951年にドイツ人とアイルランド人の血を引き、NYで時計屋を営む両親のもとに誕生。ジーンズの小売で成功した後にデザイナーになり、1984年に自らの名前を冠したトミー・ヒルフィガーを創設。

2014-02-08 23:36:07
カム @comekurisu

トミー・ヒルフィガーの特徴はラルフ・ローレンのビジネスモデルを徹底的に模倣した事。デザイン、経営など様々な分野で元ラルフ・ローレンの人材を集めた。剽窃者と呼ばれたローレンが今度はパクられたわけです。一方で値段に関しては抑え、「安価なラルフローレン」として幅広い層をターゲットに。

2014-02-08 23:37:24
カム @comekurisu

その後は安価な路線で幅広い層の顧客を獲得しながらもプレミアムラインなどを作ることによりラルフ・ローレンの牙城を脅かそうとする。特にロゴのデザインなどに凝り、差別化をする宣伝戦略が非常にうまかったそうです。

2014-02-08 23:40:04
カム @comekurisu

これにはローレンさんもブチ切れたようでインタビューで「ヒルフィガーはデザイナーとして一流とは思えない。彼がやっているのは僕から学んだ事だけ。なんの新しさもない。」などとブルックスブラザーズさんあたりが聞いたら「お前が言うな」と言いそうな事をおっしゃっている。

2014-02-08 23:41:47
カム @comekurisu

日本でも先行のポパイを後発のホットドッグプレス徹底的に模倣しつつも、ポパイがあえてやらなかったエロに踏み込んで差別化をして大ヒットした例もあるし、模倣とその換骨奪胎は世の中のデフォですね。ポパイが低迷しながらリニューアルで復活し、ホットドッグプレスが消えた今からすると懐かしい。

2014-02-08 23:45:41
カム @comekurisu

ヒルフィガーがローレンの凡庸な模倣者にとどまらなかったのは「安価なラルフ・ローレン」でありながらも、一方で非常に革新的なマーケティングを行った事。つまり当時流行していたヒップホップに接近し、アメリカ服飾文化のスタンダードの白人の流行に黒人が追随するという流れを逆転させたのです。

2014-02-08 23:54:48
カム @comekurisu

ラッパーにヒルフィガーの洋服を無償でばらまき黒人層とヒップホップ文化を愛好する層の取り込みに成功する。写真はサタデーナイトライブにスヌープドックが出演した時のもの。このヒルフィガーのラグビーシャツには問い合わせが殺到したとか。 http://t.co/Y72YAwHfYM

2014-02-08 23:58:35
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カム @comekurisu

モデルに関しても積極的に黒人、有色人種を起用し、ラルフローレンとの差別化を図る。しかしこの手法、うまくいったから良かったけど、LA暴動の衝撃も覚めない時期で下手したら今までの客層だった白人層から総スカン喰いかねないし、成功させた嗅覚と実行力は本当にパネエっす。

2014-02-09 00:00:41
カム @comekurisu

この大成功にはローレンさんも慌てたのか対抗策として安価なラインのポロ・スポーツを創設し、モデルにヒルフィガーも使った黒人スーパーモデル、タイソン・ベックフォードを起用。ちなみにヒルフィガーさんはこの時ここぞとばかりに「やーいそっちの方がマネっ子」と言ったそうです。大人げねえw

2014-02-09 00:03:48
カム @comekurisu

その時のカタログがここに乗っている95年のもの。今までの白人一色のものとは明らかに異なっており、ラルフ・ローレンが方向を大転換したのが非常に良くわかる。黒人が普通に着てる今となっては普通に見えるけど当時は凄い衝撃だったんだろうな。http://t.co/SVxkNaTAfd 

2014-02-09 00:05:47
カム @comekurisu

ラルフ・ローレンを模倣しながら全く別方向にマーケットをみつけたヒルフィガーにしろ、それを模倣のし返しを自らのブランドイメージを損なわずにやってのけたローレンにしろ、ここらへんは本当にあきれるしかない決断力と経営手腕だと思います。 

2014-02-09 00:07:53
カム @comekurisu

作者は両ブランドに関して、帰属という視点に重きを置いて共通点と相違点を解説しています。確かに両ブランドともに「独創的であり個性的でありオンリーワンである」事を志向するパリのデザイナーとは異なり、保守的なデザインでアメリカ文化に対する帰属欲求を満たす事で成功したデザイナーです。

2014-02-09 00:10:11