原発のリスク

原発を運転するリスクは震災前と比べてどうなのかとか、止めたままだとどうなのかとか、じゃぁどうしようかとか。
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Flying Zebra @f_zebra

世の中には、原子力発電所の安全性は震災前から変わっていなくて、同じような災害が起これば同じように事故が起きると思っている人が結構いるらしい。業界側にいる私からしたらどうしてそんな風に考えられるのか不思議だけど、考えの前提が違うんだろうということに思い当たった。

2014-02-12 12:34:45
Flying Zebra @f_zebra

震災、事故の直後には「もう原子力は無理だろう」と考える人は実はそんなに多くなくて、東電管内が計画停電で大変だったこともあり、西日本など他地域からの融通が大きな関心事だった。東西で融通するための周波数変換所の容量が小さすぎることが問題視されたりしていた。

2014-02-12 12:35:57
Flying Zebra @f_zebra

原子力に対する世間の意識が変わったのは、当時の菅首相による浜岡原子力発電所の停止要請がきっかけだ。2011年夏の計画停電が辛くも回避されたこともあって、喉元過ぎれば何とやら、電力不足への危機感は薄らぎ、原子力に対する不信感が募っていった。

2014-02-12 12:37:18
Flying Zebra @f_zebra

震災から1年余りは国内で複数の原子力プラントが運転を続けていたけど、現在のように1つでも原子炉が稼働すれば日本が大きな危険に曝されるといった意識はなく、多くの人はどこで何基の原子炉が動いているかなんて関心もなかった。どのプラントがいつ止まったか、皆さん覚えているだろうか。

2014-02-12 12:40:01
Flying Zebra @f_zebra

人の記憶はいいかげんなもので、多くの人は震災、事故の直後からもう原子力はダメだと思っていた、と感じているだろう。もしかしたら、震災直後から全ての原子炉が止まっていたと思っているかもしれない。そうでないと、自分の危険意識の整合が取れない。

2014-02-12 12:41:12
Flying Zebra @f_zebra

とにかく、原子力はもうあり得ないという前提であれば、そうでなくても火力の燃料費で大変な電力会社が多大なコストをかけて原子力発電所の安全性向上対策に取り組んでいるなんて考えなくても当然だ。電力会社がプレス発表しても報道されることも稀だったので、気付かなくても不思議はない。

2014-02-12 12:42:49
Flying Zebra @f_zebra

現在の電力供給体制は本当に綱渡りで、関係者は毎日冷や汗をかきながら調整しているのだけど、普通に生活していてもそんなことは意識しない。電力会社が原子炉の再稼働に拘るのは、よく分からないけど何か「利権」があるんだろう、くらいにしか考えないのかもしれない。

2014-02-12 12:44:45
Flying Zebra @f_zebra

現実には、電力会社にとっては原子力なしで電力の安定供給が担保でき、原子炉の廃止措置や使用済燃料の処分を含めた費用をちゃんと回収できるのであれば、何も世間を敵に回してまで原子力に拘る理由は何もない。利用者の利益に反することをする理由なんてないのだ。

2014-02-12 12:45:58
Flying Zebra @f_zebra

ところが、実際にはすぐに原子力を全廃して安定供給を維持するなんてコストを度外視したとしてもとても不可能だ。民主党政権ですら、検討した結果どう頑張っても無理なことが分かったから30年という期間を設けた。火力でも、本格的な発電所の新設には10年単位の時間がかかるのだ。

2014-02-12 12:47:41
Flying Zebra @f_zebra

もちろん、費用の問題も無視できない。これは電力会社だけの問題ではなく、仮に既存の地域電力会社が潰れるなり解体されるなりしたとしても、既にある原子炉施設や使用済燃料が消えて無くなるわけではない。どういう形であれ、最終的には国民の負担で何とかするしかない。

2014-02-12 12:49:08
Flying Zebra @f_zebra

そんなこんなを考えると、電力会社はまずは供給責任を果たすために、そして利用者の負担(これは国の経済にも大きな影響がある)を少しでも抑えるために、既にある原子炉を活用するしかない。だからこそ、苦労して安全性を高める対策を進めてきたのだ。

2014-02-12 12:49:46
Flying Zebra @f_zebra

福島第一原子力発電所の事故については、何がどこまで壊れて炉内がどうなっているかについては未だ分かっていないことが多い。とは言え、何が原因で、どこをどう直せば同様の事象の進展を防ぐことができるのかについてはほとんど解明され、対策もされている。

2014-02-12 12:50:46
Flying Zebra @f_zebra

自動車事故でも、当事者が死亡していたりするとどのタイミングでどう操作したか、その時何を見てどう考えたかなどは分からないことが多い。それでも事故の原因を推定し、対策を講じることはできる。ブレーキをいつどの程度踏み込んだか分からなくても、それほど影響はない。

2014-02-12 12:52:47
Flying Zebra @f_zebra

だから、1F事故について「まだ解明もされていないのに」というのは半分正しく、半分正しくない。同じ状況で事象が進展するのを防ぐ、あるいは予期しない事象が過酷事故に進展する確率を1/100に下げるといった対策に必要な解明は済んでいて、だからこそ対策が取られているのだ。

2014-02-12 12:53:25
Flying Zebra @f_zebra

どれほど対策したところで、リスクをゼロにすることは絶対にできない。リスクがあるのは原子力だけではないのでゼロリスクを指向することに意味はないというのは散々議論されているけど、それでも原子力に対する抵抗が大きいのは事故が起きた場合の影響の大きさだろう。

2014-02-12 12:54:59
Flying Zebra @f_zebra

1F事故の前、原子炉の炉心が損傷する過酷事故はスリーマイルアイランドとチェルノブイリだけだった。1Fを含めて3つのうち2つがINESレベル7の重大事故だったので、原子炉の過酷事故と言えば国が滅びかねないという印象を持ちがちだが、それは必ずしも正しくない。

2014-02-12 12:55:36
Flying Zebra @f_zebra

原子炉の炉心が損傷(メルトダウン)しても、放射性物質が環境に放出されるまでにはまだいくつもバリアがあり、放出に至る可能性は高くはない(実例からは実感しにくいが)。放出に至っても、スリーマイルアイランド(レベル5)のように限定的なものに留まる可能性もある。

2014-02-12 12:56:49
Flying Zebra @f_zebra

INESレベル5くらいの事故なら起こしても構わないなんてことはもちろんないが、リスクを比較する際にはハザードの大きさは重大な要素だ。原子力災害は他のリスクに比べて影響の「上限」を決めにくいが、影響が大きければ大きいほど発生頻度は小さくなるので、確率変数として評価する必要がある。

2014-02-12 12:57:34
Flying Zebra @f_zebra

原子力発電所の安全性向上対策には、それがなければレベル7くらいになるかもしれない事象をレベル5くらいに抑えるというものもある(ベントとかね)。原子力産業に関わる人は、原子力の利用がトータルで社会の安全に寄与すると確信しているからこそ苦労しながらも頑張っているのだ。

2014-02-12 12:58:30
Flying Zebra @f_zebra

私個人について言えば、自分が給料を貰うのはもちろん大事だけど、そのために自分の子供を含む将来の世代を危険に晒すような仕事は絶対にしない。子供を持つ親なら、普通はそう思うんじゃないだろうか。それとも皆さん、自分なら「利権」とやらのために魂を売っちゃいます?

2014-02-12 12:59:49