てい
@orztee
セーラー服を翻し、少女が走る。夜の雪道を、時々滑りながらも、ムートンブーツで駆け抜ける。腕に抱えた袋の中には、板チョコが数枚。この日のために揃えておいた型は、家にしまってある。まだ家に着きもしない内から、彼女は微笑んでいた。明日、チョコをあげたら。あの人は喜んでくれるだろうか。
2014-02-13 23:46:30
てい
@orztee
@orztee 「そう……ですか」少女は、担任教師の前でうなだれた。手に持った鞄が所在無げに揺れる。「ごめんなさいね。別れるのが寂しくなるから引越しのことは言わないでと、あの子に口止めされていたの」申し訳なさそうに言う担任に少女は首を振り、笑顔を作った。「分かりました」
2014-02-13 23:53:26
てい
@orztee
@orztee 初めて挑戦したチョコレートは、結局、誰の手にも渡らなかった。引っ越してしまったあの人は、今日がバレンタインだということも知らなかったのだろうか。そんなのって不公平だ。まるで私だけ馬鹿みたいじゃないか。少女はセーラー服を脱ぎ捨て頬を膨らませ、口の中の物を噛み砕いた。
2014-02-13 23:57:39