超短編SF小説『大空位』(倉沢繭樹)

@mayuqix(倉沢繭樹)のツイッター小説。 22世紀半ばの物語。帝国化したアメリカと「世界政府」と「国連加盟途上国」とに三極化した世界に、新独立国が誕生しようとしていた。
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倉沢 繭樹 @mayuqix

index1:超短編SF小説『大空位(だいくうい)』 ( #daikuui#twnovel

2010-10-24 18:05:38
倉沢 繭樹 @mayuqix

超短編SF小説『大空位』(2008年) (物語の背景)人間とクローン人間とロボットが暮らす2145年の世界。「新しい宗教」めぐって対立が勃発。また、アメリカは「統合アメリカ連邦」となり、「世界政府」と国連加盟国とに国家群が三極化。そこに新独立国が誕生する兆し。 #daikuui

2010-10-22 16:21:29
倉沢 繭樹 @mayuqix

超短編SF小説『大空位(だいくうい)』 2145年、10年間ほど中断していた世界宗教会議で、コンピューターを媒介として、人間は「神」と融合できると信じるフュージョン派(ユダヤ・キリスト教、仏教、イスラム教、ヒンドゥ教など主要な既成宗教にも大勢の支持者がいる #daikuui

2010-10-22 16:26:28
倉沢 繭樹 @mayuqix

―スーパーコンピューターそのものがもはや「神」だと言う者もいるが―)、「人間」概念を再定義し、彼らとは違う自らのものである新しい宗教をつくろうとするクローン人間とロボットたち、そして何百年、何千年にもわたって抑圧、弾圧、差別されつづけている歴史を見つめ、 #daikuui

2010-10-22 16:29:24
倉沢 繭樹 @mayuqix

自分たち自身の「歴史」を通してアイデンティティを確立するために、土着・土俗の信仰、祭儀を保持しようとする世界中の少数民族を中心とする回帰派が、世界宗教連盟からの分離、脱退を宣言。 #daikuui

2010-10-22 16:31:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

 するとまもなく、ある人物が、彼らの主張を承認し、自国を「宗教障壁自由領域(バリア・フリー・ゾーン)」として、布教活動、宗教コミュニティ建設に使用してよいと打診してきた。彼、T(テート)・イザワは、現在、ある独裁国家から「統合アメリカ連邦」 #daikuui

2010-10-22 16:37:44
倉沢 繭樹 @mayuqix

(アメリカは、カナダ、南米を吸収し、「統合アメリカ連邦 Unified Nations and States of America」となっている。通貨はG〈グローバル〉ドル)に亡命中で、アフリカ南部で売りに出ている地域を購入して #daikuui

2010-10-22 16:41:14
倉沢 繭樹 @mayuqix

近々建国される国のイデオローグである。その国は、インターネット上で<サイバー・ユーゴスラヴィア>というサイトとして存在していた。21世紀初頭から加入者を募り、とうとう半年前に、目標の一千万人に到達し、プロジェクトが仮想(サイバー)から現実(リアル)に動き出した。 #daikuui

2010-10-22 16:43:47
倉沢 繭樹 @mayuqix

 数十年前、いくつかの大国は国際連合から分離し、「世界政府」を設立。国連側、世界政府側は双方の思惑から、サイバー・ユーゴスラヴィア・プロジェクトに多大な資金提供、人的協力などをしたものと思われる。 #daikuui

2010-10-22 16:46:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

「サイバー・ユーゴ」は公募した国名案から採用された「テラフラータ」という国として出発しようとしていた。およそ20億の人々が一日一Gドル以下で暮らしている一方、前世紀には「発展途上国」であった国々の過半数は、GDPにおいて「先進国」と並ぶようになった(注)。 #daikuui

2010-10-22 16:48:32
倉沢 繭樹 @mayuqix

また、統合アメリカ主導で、地球規模のテロ組織掃討作戦が行われたが、テロリストは兵器とともに拡散して大きな成果は得られず、各国で局地的な紛争が頻発している。22世紀半ば、世界はそういう状態であった。 #daikuui

2010-10-22 16:50:32
倉沢 繭樹 @mayuqix

 (注)ジャック・アタリは次のように述べている。「あらゆる文明は、努力に意義をみとめ、時間がかかることに価値を与えない限り持続しえない。短期の見方になり、価値がひっくり返ったり、不安定だったりということを繰り返しているうちに、市場民主主義には力がなくなる。 #daikuui

2010-10-22 16:52:51
倉沢 繭樹 @mayuqix

それを覆い隠すためには、人生に意義があるかどうかなどと考えさせないように、つまり楽しんで生きる人生が理想的であると思うように、皆を導くしかない。市場と気晴らし―これこそがグローバリゼーションの標語である。 #daikuui

2010-10-22 16:55:01
倉沢 繭樹 @mayuqix

そうであるためには、絶えずもっと刺激的で、感情的で、メロドラマ的で、勧善懲悪的でなければならない」(『反グローバリズム』)。彼は、死に対する不安への慰謝の形象化として、「商品」を挙げている。商品こそは、われわれの生への慰撫である。 #daikuui

2010-10-22 16:56:44
倉沢 繭樹 @mayuqix

 引用・参考文献 ジャック・アタリ/金塚貞文訳『カニバリスムの秩序 生とは何か/死とは何か』みすず書房、1984年。近藤健彦、瀬藤澄彦共訳『反グローバリズム 新しいユートピアとしての博愛』彩流社、2001年。 #daikuui

2010-10-22 17:00:58
倉沢 繭樹 @mayuqix

西垣通『刺客(テロリスト)の青い花』河出書房新社、2000年。 (END) #daikuui

2010-10-22 17:02:24