気分はもう戦争 安倍晋三的ウォー・ゲーム(2)~「安倍=ファシスト」論

新しい「ファシズム」の形態をめぐる議論。
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笠井潔 @kiyoshikasai

一昨年の尖閣危機前後に、政治的な分析をかなりの回数ツイートした。その後の総選挙、安倍内閣の成立、参院選、秘密保護法などの流れは、一昨年に予見したことの延長上だったが、今回の都知事選は少し違う。これについて、感想を少しまとめてみたい。

2014-02-14 15:44:28
笠井潔 @kiyoshikasai

主要候補の得票は、舛添211万、宇都宮98万、細川95万で、大雑把に2:1:1だった。 61万票の田母神は、0・6ということになる。原発の是非に則して分類すると、再稼働賛成派が272万、即時廃止派が193万票。しかし今回の都知事選では、原発問題が最大争点だったとはいえない。

2014-02-14 16:02:59
笠井潔 @kiyoshikasai

かといって、総合的な政策の評価で票が分かれたともいえない。むしろ各候補の政治的・思想的スタンスに則して、票は配分されたようだ。とりあえず分類してみれば、保守主流は舛添、保守リベラルは細川、左翼は宇都宮、右翼は田母上という具合である。この比率が大雑把に、2:1:1:0・6になる。

2014-02-14 16:10:25
笠井潔 @kiyoshikasai

仮に「保守主流」としたが、現状維持を基本線として福祉や生活環境の相対的な行政的改善を求める秩序派である。戦後日本の「平和と繁栄」の受益層で、いまだに「昨日のように暮らしていきたい」と望んでいる層が今日でも最大勢力だとしても、しかし、すでに半分を割っているのも事実だ。

2014-02-14 16:23:28
笠井潔 @kiyoshikasai

宇都宮と田母上に流れた票は、掲げる方向性こそ対極的だが、「平和と繁栄」の戦後社会が内的に崩壊したことを示している。細川票の場合は、脱原発という点で戦後的な繁栄からの決別を意図するが、その秩序の枠組みは「保守」したいという二面性が窺われる。

2014-02-14 16:31:40
笠井潔 @kiyoshikasai

ところで田母上を支持した勢力は、伝統的な自民党極右派(旧青嵐会的・慎太郎的)支持者と、ネトウヨ的な新排外主義が二本柱である。自民党極右派は自民党タカ派を母体としていたし、この勢力は1950年代後半の岸派、それ以降は清和会として存続してきた。現在は安倍晋三に代表される。

2014-02-14 16:39:35
笠井潔 @kiyoshikasai

「行動する保守」を標榜する新排外主義勢力は都知事選候補者の田母上に、田母上は石原慎太郎や百田尚樹に、百田は安倍晋三に繋がる。いうまでもなく安倍は自公政権の首相であり、日本の行政権力の頂点に位置する人物だ。しかし自公が推したのは舛添で、ここにはネジレがある。

2014-02-14 16:47:07
笠井潔 @kiyoshikasai

他方、宇都宮候補の場合も戦後左翼の共産党・社民党と、新世代の反貧困運動や反原発運動と、支持層には2本の柱があった。ほんとうの意味で21世紀的なのは、「行動する保守」の新排外主義と、ここ数年のあいだに形成されてきた反貧困・反原発・反排外主義の新興勢力である。

2014-02-14 16:55:33
笠井潔 @kiyoshikasai

反排外主義の新興勢力のあいだでは、とりわけ秘密保護法反対闘争以降、安部政権をファシズムと規定する意見が少なくないようだ。一昨年の首相官邸前(反原発)から、昨年は新大久保(反ヘイト・反レイシズム)に大衆闘争の焦点的な現場は移動した。

2014-02-14 17:01:19
笠井潔 @kiyoshikasai

新大久保の排外主義デモに対抗したレイシストしばき隊(現CRAC)は、自身をヨーロッパのアンティファ運動に重ねあわせている。ヨーロッパでは、アンティファ(シズム)の敵はネオナチだから、この反ファシズムに定義上の問題はない。事実そのままである。

2014-02-14 17:05:30
笠井潔 @kiyoshikasai

しばき隊をはじめとするカウンター勢力が街頭で対峙した排外主義デモには、ヒトラーやナチズムを肯定する人物が多数参加しているが、自称「行動する保守」を21世紀日本のファシズム運動と定義できるだろうか。

2014-02-14 17:10:11
笠井潔 @kiyoshikasai

先に述べたように排外主義デモが、田母上を象徴的な中間項として安倍政権まで連続しているとしても、この政権をファシズムと規定できるだろうか。アンティファ運動の「敵」という意味を込め、厳密性を要求しない大衆的スローガンとして「安倍=ファシスト」を用いるのなら、それでもかまわないが。

2014-02-14 17:14:06
WKT @msadralapse

↓ 「オオカミがくるぞ!」式の昔の左派のレトリックは、枯渇したのではなく、もともと的外れだった。オオカミ=総力戦体制はもう来て、みんなオオカミになったあと幸せに暮らしてたんだから。全員慣れ切った嵐の真っ只中で、「嵐がくるぞ」言っても効くはずない。@kiyoshikasai

2014-02-14 18:57:05
笠井潔 @kiyoshikasai

「安倍=ファシスト」論にこだわるのは、日本の戦後左翼による「オオカミが来る!」式の安易な大衆煽動、危機感の煽りたてを反復しても意味がないと考えるからだ。「××は戦争とファシズム(軍国主義)への道だ」という決まり文句で、1960年代まで社共は大衆を動員してきた。

2014-02-14 17:22:28
笠井潔 @kiyoshikasai

「××は……」の××には、破防法でも警職法でも、安保改定でも日韓条約でも、ありとあらゆる「反動攻勢」が代入できた。戦後日本人の戦争嫌悪、戦中の抑圧体制嫌悪を呼び起こせばなんとかなるという安直さでは、戦後の「平和と繁栄」を批判する運動にはなりえない。

2014-02-14 17:31:17
笠井潔 @kiyoshikasai

また、この種の戦後左翼の大衆動員法は、戦争体験世代が減少するにつれて必然的に有効性を失ってきた。宇都宮支持派の二本柱のうち、戦後左翼の政党勢力はともかく、新世代の大衆運動派は第二次大戦の記憶をもたない。

2014-02-14 17:38:32
笠井潔 @kiyoshikasai

「オオカミが来る!」式の戦後左翼の大衆煽動とは無縁の場所で、「安倍=ファシスト」という規定が自然発生的になされてきた以上、そのことの意味が問われなければならない。

2014-02-14 17:41:05
WKT @msadralapse

古典的なファシズムは、政治において戦争のための権威主義国家、経済において「大きな国家」だ。いまの安倍政権は福祉予算を削りまくるネオリベなので、後者の特徴が当てはまらないように見える。

2014-02-14 18:13:29
WKT @msadralapse

20世紀のファシストは「民族の生命圏」を保護・拡大すべく、一部の基幹産業を国有化し、グローバル資本主義を非難する。良質な兵士=労働者を再生産し続け、民衆の喝采を集めるため、差別的な仕方ではあるが、福祉政策を徹底する。

2014-02-14 18:17:44
WKT @msadralapse

それは安部自民党には当てはまらない。だが、経済の統制と生命圏の守護によるグローバル資本主義批判は、戦間期の植民地獲得競争で負けた国の大企業にとってそのほうが資本蓄積の再開に適していたから採られた政策にすぎない。つまりファシズムの本質ではないと思う。

2014-02-14 18:24:13
WKT @msadralapse

ファシストの経済政策の本質は、むしろ社会ダーウィン主義(優れたものが生き残るべき)とコーポラティズム(平等よりも適材適所のヒエラルキー的共同体)を、権威(カリスマ、二世、エリートの威光)で結合する点にある。

2014-02-14 18:27:30
WKT @msadralapse

これは安倍に当てはまる。安倍は、左翼のみなさんが気づかないうちにファシズムを更新したのだ。

2014-02-14 18:30:35
WKT @msadralapse

権威の働きはいつもと同じ。国内の階級対立を他民族や外国への差別的な敵意に移し替えるといういつもの策術。

2014-02-14 18:32:29
WKT @msadralapse

20世紀のファシズムは以上の仕方で、ある種の資本主義批判、貧困批判、福祉国家、自民族の労働者擁護だったので、多くの左翼がファシストになったし、SPDとKPDのごたごたもこの幻影に引きづられて起きたとも言える。

2014-02-14 18:35:34
WKT @msadralapse

だが21世紀のファシズムにおける権威主義的な支配者は、国内の労働者を守るというレトリックを使わない。使えない。大企業がもはや「日本の」大企業とは言えないほど資本と労使関係を国際化し切っているから。

2014-02-14 18:39:36
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