Orphe兄貴の艦これ航海日誌~ペナン編(2014年2月)

マイアミ鎮守府VSケンペイ天狗
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orphe @orphechin

強烈な刺激臭とアルコールの臭い。羽黒は三式弾を砲から続けざまに打ち出す。業火が臓物と彼の身体に広がる。 照らしだされた羽黒の顔には、あの笑みが戻っていた。それでいい-提督は彼女の笑顔を見て思う。お前はそうやって、自分の望みを果たしているんだろう、羽黒。 #艦これ航海日誌

2014-02-21 01:24:55
orphe @orphechin

俺は今までお前に何も返してやれなかった。どんな勲章も名誉も金も言葉も、お前が俺にしてくれた事に比べたら、何一つ吊り合わない。お前の美しさに釣り合うだけの容姿も、心も持ちあわせていなかった。だが、もしそんな俺でも、お前の望みを叶えられるなら。#艦これ航海日誌

2014-02-21 01:30:14
orphe @orphechin

この俺の命を使って、お前の望みを叶えてやれるとしたら。くれてやる。こんなちっぽけな命でお前の夢が叶うのだとしたら、それはこの世で最高の取引だ。俺の命が削られる度、この赤い世界が生まれる。お前は誰よりも強くなり、そして自らの力を思うがままに行使できるのだ。#艦これ航海日誌

2014-02-21 01:33:12
orphe @orphechin

羽黒、俺は俺の命を使い、お前が笑う世界を作ってやる。俺も、鎮守府も、艦娘たちも、深海棲艦も、国も、世界も、何もかも、全てお前の生贄に捧げてやる。何もかもお前の赤い海と空に溶けて吸い込まれていけばいい。その果てでお前はきっと、幸せに笑っているのだろう。 #艦これ航海日誌

2014-02-21 01:37:14
orphe @orphechin

苦痛を歓喜に変えて、提督は彼女を見る。天狗面が獣の唸りを上げて羽黒の胸を切り裂く。彼女はそれを鼻で笑い、彼の頭を掴む。乾いた音とくぐもった水音と共に、彼の頭蓋が割れ、脳が溢れた。羽黒はそこにさらに手を尽き入れ、乱雑にかき回す。獣の声がさらに高くなる。#艦これ航海日誌

2014-02-21 01:42:18
orphe @orphechin

天狗面の振り上げた左腕が、彼の脳をかき回している羽黒の右腕を裁断する。そして彼の右手が羽黒の下顎を掴み頭部から引き剥がす。右手は砲身へと変貌し、揺らぐ彼女の顔を爆砕した。報復とばかり、彼女の肩の砲が唸りを上げて天狗面の腹部に連射を浴びせる。#艦これ航海日誌

2014-02-21 01:46:46
orphe @orphechin

体を砕き、再生し、幾度もの殺戮を応報し合う。異なり合う力と法が野蛮に自らの正当性を主張する。彼女たちは神々しく、そして、狂っていた。提督の身体が限界を越え、強制的に膝をつかせる。内なる痛みは一層苦痛を増す。彼はそれに踏みとどまろうとして、両手を合わせた。#艦これ航海日誌

2014-02-21 01:51:36
orphe @orphechin

奇妙な祈りの形がそこにあった。 #艦これ航海日誌

2014-02-21 01:51:51
orphe @orphechin

天狗面は幾度化の再生の後、仮面越しに提督の姿を見やる。滑稽に跪く姿を見て、彼は腕を下ろす。突然敵から戦意が消えるのを見て、羽黒一瞬動きを止めるが、再度攻めかかる。 だが、彼女の拳は、振りぬく寸前に動きを止めた。それを為したのは、彼のただ一本の指。 #艦これ航海日誌

2014-02-21 02:01:42
orphe @orphechin

次いで視界が赤から白へと一瞬切り替わった。今までにない速さで、天狗面が彼女の首を下から蹴りあげたのだ。 頭部から全身へ衝撃が伝わり、羽黒が膝を衝く。動こうと思うが、何もできない。何もかも、桁の違う攻撃。今までのは遊びだったというのか。 #艦これ航海日誌

2014-02-21 02:04:35
orphe @orphechin

獣の唸りが頭上から聞こえる。 殺されるか、だがまだやれる。羽黒は体に動けと言い続ける。 「…もう、いいにゃ」 少女の声が羽黒の耳に届いた。それは先ほどまでの獣のそれと同じ声の主だったと、羽黒には思えた。「彼女の寛大さに感謝することだ」再びそれが男の声に変わる。#艦これ航海日誌

2014-02-21 02:09:47
orphe @orphechin

「これ以上の戦いは実際無益。…裁きは先延ばしだ。またいずこかで会おう」 羽黒がようやく顔を上げる。 赤い海も空も、あの天狗の男も、そこには存在しなかった。提督は祈りの姿勢のまま、意識を失っていた。 ただ破壊を免れた仏像だけが、空虚な笑みを彼女に向けていた- #艦これ航海日誌

2014-02-21 02:12:08
orphe @orphechin

…提督は現地の病院のベッドで目を覚ました。結局、戦いの途中で、俺は気を失ってしまった。肌に感じる蒸し暑さと、強く残る全身への痛みから、自分はまだあの世には行っていないのだと実感する。俺はまだ生きている。だが羽黒は。当たりを見回すと、隣のベッドで眠る彼女がいた。#艦これ航海日誌

2014-02-21 02:15:25
orphe @orphechin

彼女はすうすうと寝息を立てている。体のあちこちに包帯が巻かれているが、大事には至ってないようだ。 病室に張られてあるカレンダーを見やると、すでに3月も半ばに入っていた。1ヶ月近く眠っていた事になる。 とんだタイムロスだ。提督は舌打ちする。#艦これ航海日誌

2014-02-21 02:17:40
orphe @orphechin

今一度、彼は羽黒に目をやった。 体の内側がちくりと痛む。一瞬、あの赤い海が見える。世界はすぐに正気を取り戻したが、痛みは未だに残っている。多分、これは消えることがない。彼女の隣に、自分の身を置く限りは。 かすかな誇りと喜びが、彼の体をじわりと包んでいく。#艦これ航海日誌

2014-02-21 02:22:57
orphe @orphechin

天狗面の男は去った。ペナンの仕事仲間の連中は皆死んだ。そして俺と羽黒は生き残った。俺がこれからやること?それはわかりきっている。祈りの中で俺がたどり着いた答えを忘れたわけではない。俺の仕事は、こいつの望みを叶えてやること。提督は痛みを押してベッドから起き上がる。#艦これ航海日誌

2014-02-21 02:24:19
orphe @orphechin

そして羽黒の手を握る。痛みは一層強くなる。それは義務の呼び声なのだと、彼は確信した。法に服従せよとの義務。俺にとっての法と力である、この黒髪の少女への帰依。 扉の向こうの廊下から、仲間たちの声が聞こえる。おそらく俺達が消息を断ったのを心配して、直接来たのだろう。#艦これ航海日誌

2014-02-21 02:27:40
orphe @orphechin

鎮守府に戻ってからは、やらなければいけない事が多くある。あいつらにも協力してもらわなければいけない。そう、この世界は何もかもこの子のためにあるのだから。 #艦これ航海日誌

2014-02-21 02:28:44
orphe @orphechin

3月14日、ペナンの空は限りなく青く、そして穏やかに広がっていた。 #艦これ航海日誌

2014-02-21 02:29:22
orphe @orphechin

なお今回 #艦これ航海日誌 はあくまで特別編、本編の #マイアミ鎮守府 はまだまだ続きます。まだまだちゃんとした読み物には程遠いですが、これからもよろしくお願いします。

2014-02-21 02:37:18
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