中学生でも読めるフーコー『性の歴史Ⅰ』(第三章「性の科学」部分)

フランスの哲学者ミシェル・フーコーの著作である『性の歴史Ⅰ知への意志』を中学生でも読めるように要約したもパート4です。
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zutabukuro @ClothSack

中学生でも読めるフーコー『性の歴史Ⅰ』プロジェクト、第三章「性の科学」の部分を連投しますかね~(ちょっと長いです)

2014-02-17 19:33:06
zutabukuro @ClothSack

前の章では、17世紀以降性について体系だって言われたことの増加と変態のカテゴライズが起こったということについて述べてきました。この二点について多数の人が同意していただけると思います。(続く)

2014-02-17 19:33:35
zutabukuro @ClothSack

それにしても、この2つの試みは、性そのものを見るというよりも、性を自分たちにとって都合のいい型にはめようとしている、見たくないものを避けているようです。  17世紀以降、性に関する分析を担当したのは科学でした。(続く)

2014-02-17 19:34:06
zutabukuro @ClothSack

科学というと合理的で中立と思われるかもしれませんが、ここでは違っていたのです。性に関する科学は、真実に従うというよりも、政治家や法律、世論、道徳に基いて対象を選択し分析していました。そして、そのようにふるまうことで、この科学は自身の勢力を拡大さていったのです。(続く)

2014-02-17 19:34:24
zutabukuro @ClothSack

人種差別を例に考えてみるとわかりやすいでしょう。白人が黒人を差別する場合、白人が黒人よりも優れているとした方が都合がよいのです。そこで白人たちは科学に対して白人は黒人より優れていると言うように要請します。(続く)

2014-02-17 19:35:16
zutabukuro @ClothSack

科学側とすれば、真実に従うよりもその要請に従ったほうが社会に認められ、利益を得ることができます。  19世紀になると、性は2つの考え方の分野で用いられるようになります。一つ目が、科学一般の規則性にしたがって発展した生物学。もう一方が、性に関する科学に基づく性―医学です。(続く)

2014-02-17 19:35:45
zutabukuro @ClothSack

この2つはお互いに離れており、影響を与え合うこともあまりありませんでした。生物学と性―医学には明確な差があり、前者が西洋的な科学を支えてきた真実を生み出すというものの考え方に基づくとすれば、後者はそれに反するものであり、真実が生み出されることを防いでいるように見えます。(続く)

2014-02-17 19:35:54
zutabukuro @ClothSack

しかし、真実が生み出されることを防ぎ、避けているということは、その反面、真実があるということを認めているということです。これは、うそをつくためには何が本当かを知っていなけれなならいいのと同じです。つまり、性―医学も、西洋的な科学を支えてきたものの考え方に属しているのです。(続く)

2014-02-17 19:36:18
zutabukuro @ClothSack

当時のサルペリエール精神病院を見てみましょう。この病院では精神疾患関する調査・実験・分析がおこなわれ、学習のための公開診察も開催されていました。公開診察は、公開と言っても診察のさなか患者が性的に興奮するとすぐさま中止になり隠されてしまったのです。(続く)

2014-02-17 19:36:46
zutabukuro @ClothSack

診察中の患者の性的興奮は医師が意図したものであったのですが、それは隠され、カルテからも消され、公開される資料にはまったく書かれませんでした。(続く)

2014-02-17 19:37:34
zutabukuro @ClothSack

この病院は、性に関する真実を生産する仕組み(学習のための公開診察)が作られ、それと同時にその回避(患者の性的興奮は隠される)がおなわれていたこと、そして性と西洋的な科学を支えてきたものの考え方(調査・実験・分析)が結びついたことを示すよい例になるでしょう(続く)

2014-02-17 19:37:51
zutabukuro @ClothSack

性と西洋的な科学を支えてきたものの考え方が結びついたということは、つまり、性と西洋の科学的な真実が結びついてしまったということです。しかも、どうやら、この性と真実の結びつきは19世紀以前からあったようなのです。(続く)

2014-02-17 19:38:25
zutabukuro @ClothSack

少し歴史を振り返ってみましょう。歴史を検証すると、性の真実を生み出す方法には次の2つがみてとれます。 一つ目が、「性愛の術」と呼ばれるもので、アジアや古代ギリシアでよく用いられていました。これは、性に関する実践から経験的に導き出されたもので、性を楽しむためのものでした。(続く)

2014-02-17 19:39:03
zutabukuro @ClothSack

また性愛の術は、後輩が先輩から性に関する話を聞くように、先生から生徒に対して直接的に伝授される、秘伝の技のような性質を持っていました。 もう一つが、「性の科学」と呼ばれるもので、主にヨーロッパで発達しました。(続く)

2014-02-17 19:39:49
zutabukuro @ClothSack

これは性愛の術のように秘伝の技の伝授ではなく、権力に基づくシステム的な手続きによって真実を生み出すものでした。そこの用いられたシステムというのが「告白」です。 ヨーロッパ社会では、中世の教会以来、告白が真実を作り出すシステムに組み込まれていきました。(続く)

2014-02-17 19:41:04
zutabukuro @ClothSack

この告白も、最初のうちは他人によってある人に与えられる身分や本生、価値の保障でした。しかし、時代が進むにつれ、自分自身の行動や思考について他人に語り、他人に認証してもらうものとしての告白に変化していったのです。(続く)

2014-02-17 19:41:31
zutabukuro @ClothSack

例えば、家族などと会話し自分が家族の一員であることを確認することが前者的な告白、医者に病状を語り「あなたは風邪です」と医者に行ってもらうことが後者の告白にあたります。(続く)

2014-02-17 19:42:33
zutabukuro @ClothSack

このように変化した告白は、真実を生み出すための技術として、司法、医学、教育、家族関係など様々な分野に広がっていきました。これは文学作品においても例外ではなく、中世的な英雄の物語から、主人公が自分について告白する私小説と呼ばれる種類の物語へ変化していったのです。(続く)

2014-02-17 19:43:03
zutabukuro @ClothSack

このような動きは哲学の分野でも進み、自分について考えるということが学問の中心になっていきました。(続く)

2014-02-17 19:43:45
zutabukuro @ClothSack

「真実は権力的ではなく、自由であり、それを白日のもとにさらすことは良いことである」と考えている人にとって、真実を生み出す告白は権力による束縛や暴力からの解放のように映るかもしれません。しかし、この告白という真実を生み出すシステムを生み出したのは権力なのです。(続く)

2014-02-17 19:44:04
zutabukuro @ClothSack

つまり、真実の産出の背景には権力があるということです。 そもそも、権力によって整備された告白というシステム自体が解放とは程遠いものでいた。(続く)

2014-02-17 19:44:48
zutabukuro @ClothSack

自分自身の行動や思考について他人に語り、他人に認証してもらうものとなった告白、その特徴をひとことで言えばそれは「服従=主体―化」、わかりやすい言い換えると「従う私になる」ということです。  ある人に対するモヤモヤした気持ちを友人に聞いもらう場面を想像してみてください。(続く)

2014-02-17 19:45:13
zutabukuro @ClothSack

あなたの話を聞いた友人が「その気持は恋だよ」と答えたとしましょう。するとあなたは、このモヤモヤした気持ちは恋心なんだ、と思うよになってしまうのではないでしょうか。(続く)

2014-02-17 19:45:30
zutabukuro @ClothSack

しかし、もとの気持ちはあくまでモヤモヤした気持ちであって、恋心ではなく単純にある人のことが嫌いだったのかもしれません。(続く)

2014-02-17 19:46:17
zutabukuro @ClothSack

この告白によって生み出されたのは恋する私(主体)ですが、友人の発言が違えば恋する私ではなく、憎む私や嫌う私になっていてもなんら不思議はありません。これは、私(主体)というものが友人の発言に従って生み出せれている、強い言葉で言えば服従しているということを示しています。(続く)

2014-02-17 19:46:48