東京にて-明治7年-

綺羅(@kiraboshi219)さんによる薄桜鬼の創作小説第8弾です。 ~内容~ 会津戦争でまたしても離れてしまった斎藤と千鶴が斗南で再会した後、上京して初めて迎えるお正月。 斎藤の実家に招待されて喜ぶ千鶴、 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

東京にて-明治七年- 綺羅 2014.2.18

2014-02-18 20:57:46
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これは、忘れることができない戦と、出会いのお話。

2014-02-18 20:57:59
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

私と一さんは会津戦争の際、 一時的に離れ離れとなり、斗南藩で再会することができた。

2014-02-18 20:58:18
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

十二人を率いて如来堂の守備に出た一さんは、 そのまま城外で降伏を受け入れたあと、謹慎を強いられ、斗南へと移住する。

2014-02-18 20:58:46
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

私は一さんの強い希望でお城に入れさせてもらい、そこで降伏を迎えた。

2014-02-18 20:59:07
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行方知れずになった一さんのその後を知ることはできず、 それでも再び会えると信じて、私は会津の方と共に未開拓の地へと身を移した。

2014-02-18 20:59:22
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土方さんや島田さん達が蝦夷へ渡ったことも、北に行く意味のひとつだった。 一さんと離れ、心の拠り所となっていたのは土方さんだったのだ。 少しでも近くに、と吸い寄せられるように。

2014-02-18 20:59:43
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一さんは別の行程で斗南へと移った。

2014-02-18 20:59:53
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一さんの誠は新選組と、会津藩への恩顧に応えることにあり、一貫してきたものだった。

2014-02-18 21:00:09
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

だから私は、会津の方と関わっていれば、また会えると信じていた。

2014-02-18 21:00:39
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斗南で甘やかされた人はいない。 皆、生きることに必死だった。 飢えや寒さを乗り越えられない人も多くいたし、人々の表情は暗かった。

2014-02-18 21:01:08
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私が一さんと再会できたのは、本当に奇跡的なことだ。

2014-02-18 21:01:19
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一さんは名を変えていたし、私は会津藩に属しているわけではなかったから、 一さんが私を探し当ててくれたことは、思い出すだけで涙が滲む。

2014-02-18 21:01:32
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私達は倉沢さんのお宅で、他の方と共同生活を続けながら、明治七年、上京した。

2014-02-18 21:01:46
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

荒れ果てた雪村の家を補修し、そこで二人で生活を始めて半年。 斗南藩から上京して初めて迎えるお正月を、この家で過ごすものと思っていた年の瀬。

2014-02-18 21:02:02
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

日雇いのお仕事を終えて帰って来た一さんの表情がとても明るくて、私まで気分が上向きになる。

2014-02-18 21:02:14
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一さんはいつも頬を上気させて帰って来る。 それは、ここまで早歩きで……もしくは走って来るからなのだと知っているけれど、一さんはそう感じさせないように、決して肩で息をしない。

2014-02-18 21:02:37
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でも少し赤くなった頬を見るだけで、私の胸はきゅうっとなる。

2014-02-18 21:02:54
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

いつも一緒にいるのに、もっと、ずっと一緒にいたいと、我儘なことを思ってしまう。

2014-02-18 21:03:06
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一さんは手土産にと、頂き物のおからを渡してくれた。 朝が早かったので、一さんの好きな豆腐屋さんが、出かける一さんを引き止めてくださったのだという。

2014-02-18 21:03:20
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一さんの機嫌が良いのは、これのせいではない。 私は早く理由を聞きたくてうずうずする。 でも自分からあれこれ聞くよりも、一さんの言葉で教えて欲しい。

2014-02-18 21:04:06

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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一さんは外套を脱いでから土間に上がる。 私はそれを受け取って、一さんの温もりを感じようと、ちょっと抱きしめる。

2014-02-19 18:42:13
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

今はこうやって自然と渡してくださるけれど、 このやりとりが出来るようになるまで、私達は互いに照れ合い、 なかなかうまくいかなかった。 そんな日常の些細な事が、私のしあわせ。

2014-02-19 18:42:35
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「正月を、実家で迎えようと思う」 「……え?」

2014-02-19 18:42:50
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