『ゴリラスレイヤー ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#5

ゴリラスレイヤーの続編。パート6
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碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「ドーモ、エート、ゴリラスレイヤー=サン?ヨロシサン製薬海外戦略部企画7課……と名乗っても仕方が無いな。しがない係長で、一応ここの責任者だった。ま、見ての通りお払い箱寸前だがね。ドーゾヨロシク」そう言って男は軽くオジギし、名刺を手渡した。 20

2014-02-20 21:54:37
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

なんとぞんざいな名乗りか!ここがネオサイタマならばケジメは免れぬだろう。そして、渡された名刺がゴリラスレイヤーには読めぬ事も重点せねばなるまい!!「どうも体色が違う様だが……そうなると、プレシャス=サンは本当にやられた様だな」 21

2014-02-20 21:55:46
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

しかし、男はゴリラスレイヤーと一対一の密室状況下でゴリラプレッシャーを受け続けているのだ。一般人ならばとうの昔に重篤なゴリラ・リアリティショックにより正気を失っている。「……いやしかし、シツレイだが本当にゴリラだな」だが、男は全く意に介していない。 22

2014-02-20 21:56:51
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「オヌシ一人か」ゴリラスレイヤーもまた構わず聞いた。「他のスタッフは既に引き上げたよ。薄情な奴らさ。一人でいいと言ったらホントに先に帰った……ついさっき、バイオバナナのサンプルが完成してね」「これがそのバイオバナナ製造機で間違いないな?」 23

2014-02-20 21:58:47
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゴリラスレイヤーは巨大な機械を指差した。この男の身の上話に付き合うつもりは毛頭ない。「一応聞いてみるが……プレシャス=サンを倒した君のデータを我々は求めている。我々に協力しては貰えないか?」だが男は質問には答えず、そう言った。「協力すると思うか?」 24

2014-02-20 21:59:35
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「残念だが思わない。だから、聞いてみただけだ。これがバイオバナナ製造機だよ」……ゴリラスレイヤーの力。セクトはもう持たないだろう。上には取引相手が勝手に潰れた、と伝えれば良い。ゴリラの情報も不十分ながら手に入った。この国でのヨロシサンの仕事は既に無いのだ。 25

2014-02-20 22:01:48
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「そうか」ゴリラスレイヤーはバナナ製造機へと向かう。その後ろで「予定通り、出港準備だ。この国から撤退する。ゴリラスレイヤーは我々には興味が無いとさ」ヨロシサン係長は無線機に向かって日本語でそう伝えた。 26

2014-02-20 22:02:43
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ピラー最上階。「ゴリモト・チバ様。……バイオバナナが先程完成したとの報告が」「ムッホホホホ!よいぞ!」少年ゴリラは知らせを聞き、手を叩きながら喜びの声を上げた。「すぐに持って来い!!」「既に、高速リフトにて地下から搬送中です」「ウム」 28

2014-02-20 22:04:17
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

勝利は近い。チバの脳裏を過去の記憶が過った。父から聞かされた話だ。昔は、この国はジャングルの覆う自然豊かな国であったという。……しかし、この国の形は、戦争によって変わってしまった。大地をニュークに削られ、ネオマタディは海に面するようになった。 29

2014-02-20 22:04:58
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

だが、海は汚れ、海外との物流は大半が停止した。鉱業を中心とした貿易が成り立たず、国の経済はガタガタになった。内戦の火種も燻ったままだった。……それを、ゴリラ達が立て直したのだ。 30

2014-02-20 22:06:47
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

そして今。バナナが尽き、滅びかけたゴリラ憑依者達。政府は彼らを見捨てはしなかった。バイオバナナによりゴリラ達は息を吹き返すだろう。だが、チバの目的はその先にある。幼き支配者、ゴリモト・チバは窓の外を見やる。 31

2014-02-20 22:07:47
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

外は雨。ピラーの眼下には、肉食ホタルめいたネオキンシャサの街明かりがまたたいている。この街を全てゴリラの物とし、再び、この国をゴリラの楽園とする事。それだけが、亡き父……ゴリモト・カンに報いる術なのだ。 32

2014-02-20 22:08:39
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

これまでのあらすじ:状況は動いた。ヨロシサン製薬は撤退を決定し、ゴリモト・チバは野望を見据える。走れ、ゴリラスレイヤー!走れ!

2014-02-21 18:58:40
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

『ポーン、コノサキ、ミギホウコウデス』バイオバナナ製造機の破壊と、ナビゲーションの通信復活は同時であった。この後は、上へと進む他あるまい。ゴリラスレイヤーは直ちにpingを確認。応答有り。タッチパネルから『デンワ』を選択する。 33

2014-02-21 18:59:38
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

『ゴリラスレイヤー=サン、聞こえる!?』アンシーとの通信は直ぐに繋がった。「聞こえている。状況は把握出来ているか?」『よかった。ピラーの中はリアルタイムでモニタ出来てる。色々と報告することがあるわ』「頼む」 34

2014-02-21 19:00:36
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

『まず、シテンノの位置が一人分しか……』「既に3人倒した」『そ、そう。それから、ニンジャの反応も』「殺した。ヨロシサンは撤退した様だ」『…………ならいいわ。あと、バイオバナナがピラー最上階に運ばれてる』 35

2014-02-21 19:01:15
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「バイオバナナ……完成していたか」確か、ヨロシサンの男がそのような事を言っていた。『ピラーの最上階にはゴリモト・チバとダークゴリラも居るみたい』「ここから、登るにはどうすれば良い?」今こそ、セクトを潰す好機だ。 36

2014-02-21 19:02:55
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

『50階までは、地下から直通の高速リフトがある。コントロールも握った。でも、そこから先、80階までが……地下の電源が潰れたみたいで動いてない』ナムサン!配電盤がゴリラ・ゴリラとの戦闘の余波で破損していたのだ!!「階段は無いか?」 37

2014-02-21 19:03:43
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

『途中でゴリラが集まってくる。取り囲まれてジ・エンドよ』ピラーの中には、まだ百近いゴリラが残っているという。「何か手は?」『後は、ピラーの外壁でも這うしか無いわね』アンシーは冗談めかして言った。「……私はゴリラだ、やってみる価値はある」 38

2014-02-21 19:04:55
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

『ちょっと、正気!?』アンシーの驚く声。幾らゴリラと言えど、高層ビルを登る事が可能なのか。これは特撮映画ではなく、ゴリラスレイヤーはノーマルサイズのゴリラなのだ。「無論だ」だがゴリラスレイヤーは即答した。 39

2014-02-21 19:06:14
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

『……わかった。なら、せめてエレベーターシャフトを使って。今ナビをセットするから』「済まない」『安心して。とっくに私の常識は宇宙の彼方よ』ナビに経路が表示された。高速リフト搭乗。50階層を突破し、乗り換え。エレベーターシャフトを登り、80階へ。 40

2014-02-21 19:07:02
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

経路を確認後、高速リフトへと搭乗したゴリラスレイヤーは上を見上げた。見えるのは、上へ伸びる深い穴。それは苦労の無い穴ではない。ジゴクへと続く穴だ。「動かしてくれ」『OK』ゴリラスレイヤーは上方へと高速落下を開始した。 41

2014-02-21 19:08:56