子供に教えたい学びについて

学ぶことや教えることについて、つれづれ語ります。
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結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

初めて学ぶときには数学を「単元」ごとに学ぶのは良いと思うのですが、本来ならば数学のいろんな分野が相互に密接につながっているということをもっと全面に出した方が楽しいと思うのです。「数学ガール」シリーズではいつもそうしています。単元の壁をらくらく飛び越えて、つながることを楽しむ。

2014-02-21 15:22:46
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

典型的なものが、行列・複素数・複素平面・三角関数・ベクトルですよね。互いが互いに関連して、テトラちゃん的には「いろんな言葉が使える」ようになり、「僕」的には「同じ形の数式が登場」するし、ユーリ的には「こっちで成り立てば、あっちで成り立つし!」という具合。

2014-02-21 15:24:53
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

単元ごとに学ぶのはいいけれど、ずっと分断したままなのは非常によくないと思います。ばらばらに、項目ごと覚えれば数学は完璧!なのは正しくない。それぞれを学ぶと、互いに関連し合って、相補的に深く学べる、という方が正しい。行列を学べば、幾何も複素数も三角関数もより深く理解できる。

2014-02-21 15:27:08
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

複数の分野を学んでいくうちに、相互乗り入れというか、多くの分野がつながっていき、片方の世界の問題を別の世界の問題で解くというようなことが可能になる。そのようなクロスオーバーな喜びというのが大事だと思う。

2014-02-21 15:28:51
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

最先端の数学でもきっとそうだ、と直観的に思います。数論を幾何で幾何を数論で。トポロジーの問題を物理学の方法で(ポアンカレ問題)。そのような人間の知恵がクロスオーバーする場面がたくさんある。

2014-02-21 15:31:30
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

厳密な定式化はクロスオーバーを容易にする。それはちょうどインタフェースを揃えることで別モジュールから呼び出せるというIT技術に似ている。

2014-02-21 15:31:39
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

大人が大人の発想で子供の学ぶ範囲を矮小化するのは良くない。もちろん基礎的な部分は丁寧にやるとして、大胆に難しい話、高度な話、リアルワールドの問題を子供に見せることは決して悪くないと思う。「実際の世界ではこんなことをやっている」という場面をチラ見してもらうのはいいことだ。

2014-02-21 15:33:13
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

それは、子供を「信頼」することでもある。子供のすべてをコントロールして学ばせることが大事なのではない。子供を自分の手の内で遊ばせるのを第一にしてはいけない。そうではない。子供は意外に懐が深い。細かい内容はさておき、大きな流れをつかむのもうまいのだ。

2014-02-21 15:35:00
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

細かい知識を子供に伝えることも大事だが、もっと鳥瞰的な視点で話すことも大事だと思っている。結城はそう思っている。

2014-02-21 15:35:51
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

子供に対して知識を伝えつつも、「知識がすべてではない」と伝えたり、「私はあなたを大切に思っている」と伝えたり、「あなたはこの世をきっと渡っていくことができる」と伝えたり、「人間の力には限りがあるけれど、大丈夫。神さまがついている」と伝えたりしたい。

2014-02-21 15:37:39
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

私は大事なことを子供に伝えたい。「私はあなたを愛している」「あなたは大丈夫。やっていける」「細かいことでおたおたしなくてもいい。じっくりやりなさい」「世の中には悪いものがたくさんあるから、それに染まらないように」「しかし、だからといって自分を孤高の存在だとは思うな」

2014-02-21 15:39:41
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

たとえば、三角関数の加法定理を暗記することそのものは人生に大きな影響はない。でも、三角関数の加法定理のようなものが提示されたときに、「これって何だろう」という好奇心や、解きほぐす力や、理解する能力や、さらにそれを人に説明できる力は身につけて欲しいと思う。

2014-02-21 15:41:49
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

加法定理を見たときに、単純に「やらなければいけないことだからやる」「おぼえることだからおぼえる」だけですませるとしたら、それは少し悲しいことだと思う。勉強するのが悪いわけじゃなく、覚えるのが悪いわけじゃないけれど。

2014-02-21 15:43:10
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

単元の話でいうと、単元にわけたほうが教えるのも学ぶのも「楽」なのは確かである。そこでのテーマを教え、そこでのテーマを学べばいいから。他の単元を忘れて。でも、ほんとうに学ぶ心を持つならば、「いま聞いた話は、こないだ習ったアレとはどういう関係なのかな」と思うはず。

2014-02-21 15:45:00
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

人間の心はルーズリーフではない。都合のいいページだけを覚え、都合の悪いページを抜くわけにはいかない。過去の自分の記憶や経験と照らし合わせて学ぶのが普通である。だから、いま学んだことを以前学んだことに関連づけたり、いま学んだことはこれから学ぶこととどういう関係があるのか知りたい。

2014-02-21 15:46:34
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

テトラちゃんはそのあたりに敏感で、学んでいることの「地図」をいつも求める。学んだたくさんのことが相互にどう関連付くのかが気になるタイプ。それは重要なこと。真名分本人がまじめに学んでいたら、そのように心が動くのが自然。だから、せめて、教える側は、その気持ちをつぶさないようにしたい。

2014-02-21 15:48:06
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

単元と単元の関係や、複数の学んだもの同士の関連を考えようとしている生徒に「そんなのを考えるな」とはいわないでほしい。複数分野をまたがるガイドは難しいものだから、適切なガイドをせよとはいえないけれど、せめて、学習者をつぶさないようにしたと思う。

2014-02-21 15:49:30
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

そのためには「教える人」の自制が必要になりそうだ。教える人が、「えらそうに教えること」で自分の心の平安を保つようではいけない。それは生徒の学びを食い物にしてしまう。《教師は水のように》ありたい。教師のドヤ顔は年に三回でいい。

2014-02-21 15:51:25
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

もっともいい教師は、生徒に忘れられる教師かもしれない。生徒がまるで自分ですべて発見したように感じるとき、それは最高の教師に学んでいる証拠かもしれない。知識を身につけ、自信を身につけ、もっと学ぼうと思う。そのような思いを生徒に自然に抱かせる教師は最高の教師だ。

2014-02-21 15:52:54
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

なかなかその境地にはなれそうもないし、実際の「生徒に授業で教える先生」ではないけれど、結城は、自分の書く本を通して、そのような教師になりたいと願う。

2014-02-21 15:54:08
結城浩 / Hiroshi Yuki @hyuki

生徒に力をつけ、励ましを与え、(教師に向かうのではなく)未来に向かっていこうという希望を与える教師に。

2014-02-21 15:55:20