EUとアメリカの支援条件、特にIMF体制から見るウクライナ問題

【執筆者に関する注意事項】 日頃から日本、アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、ロシアの報道を比較して追っています。 本件についてはEUの意図に疑念を持ち、支援条件に至っては、ロシアに比べ、EUとアメリカの条件が非常に厳しいと見ています。 中でもEUとアメリカが提示したIMFによる長期支援に疑問を抱いているため、その点を中心に述べています。 続きを読む
68

IMFから借金したらどうなるのか

Jun / Джюн @hitononaka

1) IMF(国際通貨基金)の主な仕事は、簡単に言えば「出資国からお金を集めて資金とし、借金できない状態の国に融資する」こと。 どんな国でも、普通は国民から集めた税金を国家予算として道路や電気、水道などのインフラ整備費や、公務員の給料に充てています。続

2014-02-22 19:37:01
Jun / Джюн @hitononaka

2) 国のお金が足りない時は国債を発行、国内外の銀行や投資家から借金をして国家予算を補います。 もし、経済危機や税収不足で財政が悪化したら、当然誰も貸してくれなくなります。20万円の給料で生活費に40万円使い、不足分を借金で補っている人がいたら……そんな人には貸せませんよね。続

2014-02-22 19:37:39
Jun / Джюн @hitononaka

3) そんな国の「最後の駆け込み寺」がIMF。 融資を受ける時「IMFプログラムに基づき財政再建を行う」という契約をします。その後、国内にIMFの事務所が設置され、定期的にプログラム実施状況を調査されます。行われていれば財政支援が継続、行われていなければ支援が打ち切られます。続

2014-02-22 19:38:05
Jun / Джюн @hitononaka

(※日本がなぜ国債で借金をし続けられるかは、本題から逸れるため、ここでは割愛します)

2014-02-22 19:38:17
Jun / Джюн @hitononaka

4) 1つ目の問題は、この「IMFプログラム」なのです。これまで支援を受けた国を見ると、この貸付条件は主に次の5点に絞られます。続

2014-02-22 19:38:40
Jun / Джюн @hitononaka

5) 1.公務員の給料、人員の大幅削減、公的機関の民営化 人員削減による大量の失業者発生が、社会に大きなインパクトを与えます。 また、給料削減により公共サービスの質が低下、他国のように「自力で稼ぐ手段」として賄賂を要求される状況になります。続

2014-02-22 19:39:06
Jun / Джюн @hitononaka

6) 2.外国資本の投資自由化、輸入規制の撤廃など金融構造の改革 外国資本が国内産業や金融商品を安く買い叩き、投資により発言権を増大させます。 結果、国内資本の大半が外国資本に握られ、万一外国資本が撤退しようものなら、経済危機が再発しかねない状況になります。続

2014-02-22 19:39:58
Jun / Джюн @hitononaka

7) 3.歳出削減による公的機関・公的サービス・社会保障の規模縮小 財政赤字削減のため、年金や失業手当、生活補助などの社会保障費が削減されます。 結果、低所得層の生活が著しく困窮する事になります。続

2014-02-22 19:40:36
Jun / Джюн @hitononaka

8) 4.歳入確保のための増税、運賃やインフラなど公的サービスの値上げ 一方で教育費や医療費、電気・水道・ガスなどの公共料金が増大します。 これにより中間所得層も大きな経済的圧迫を受けます。続

2014-02-22 19:40:53
Jun / Джюн @hitononaka

9) 5.各種労働規制の自由化、職種の資格緩和や非正規労働・解雇条件の緩和 従来厳格な資格や免許が必要だった職種の規制緩和が進みます。結果、サービスや質の低下を招くでしょう。 また、解雇条件の緩和や非正規労働契約の拡大が発生し、いわゆる「正社員」の数が著しく減少します。続

2014-02-22 19:41:13
Jun / Джюн @hitononaka

10) いかがでしょうか? 一度IMFプログラムを実施したが最後、このようなネガティブな状況に陥るのです。 ここから以前の状況に戻った国はありません。 実際、97年にIMFの支援を受けた韓国ではますます格差が拡大しました。続

2014-02-22 19:41:47

各国の具体例

具体例を見てみましょう。
(※各例の経済破綻の原因は、本題から逸れるため、ここでは割愛します)

【1997年 韓国破綻時の場合】

1.財政再建
2.金融機関のリストラと構造改革
3.通商障壁の自由化
4.外国資本投資の自由化
5.企業ガバナンスの透明化

一例として、韓国大手銀行の外資投資比率を見てみましょう。
韓国の場合、大手銀行の株式の外資保有比率が、1997年には0.1~41%だったのが、2005年には70%から最大100%になっています。
これは韓国国内全資本の60%~80%が直接的・間接的に外国資本に握られているに等しい状況です。
外国資本の投資が全面解禁→資金豊富な外資が買いあさる→外資に国内経済を握られる……この状況で、外資が一斉撤退するとどうなるか。
現にゴールドマンサックスやリーマンブラザーズなどは、2012年から13年にかけて大規模な資産売却を行っています。
そして現在の韓国経済の困窮は、みなさんニュースでご存じの通りですね。

参考:
Wikipedia - IMFによる韓国救済
http://ja.wikipedia.org/wiki/IMFによる韓国救済

信金中央金庫 信金中金月報 第5巻 第12号 2006年10月
エマージング諸国への外国銀行進出と地場銀行の効率性へ与える影響-韓国の銀行システムに関する実証分析を中心に-
http://www.scbri.jp/PDFgeppou/2006/2006-10.pdf

中央日報 - Bye Korea…外国人が韓国不動産市場から撤退 (2013年01月23日09時35分)
http://japanese.joins.com/article/168/167168.html?servcode=300&sectcode=300

【2010年 ギリシャ経済危機の場合】

1.政府支出の削減
2.課税対象の拡大
3.経済開放
4.2014年までに財政赤字が対国内総生産(GDP)で3%を下回ること

これに対し、ギリシャ政府が発表した追加の財政再建策は以下の通りです。
現在もこれらのプログラムが進められている……はずです(汗

1.公共部門の縮小  
公務員給与の20%削減、更に約3万人の公務員は給与が60%にカットされ、1年以内に新たな公務員職を探すことが求められます。

2.年金改革 
毎月の給付額が1200ユーロを超える受給者の年金を20%カット。55歳前に退職した受給者の年金は最大40%カット。
財務省はこれにより平均で4%の年金給付削減につながると試算していますが、前回の緊縮財政措置で給付額は既に10%削減されています。 

3.増税 
2012年失効する不動産増税を少なくとも2014年まで継続し、年間の非課税対象額を1万2000ユーロからさらに引き下げ、5000ユーロに。
電気料金と一緒に徴収される不動産税により、2014~14年に国内総生産(GDP)の1.1%に相当する税収を見込んでいます。
さらに、付加価値税(日本の消費税に該当)を19%から23%へ引き上げ。自動車、タバコ、アルコールへの課税強化。

3.民営化・構造改革 
公的機関の民営化により9月末までに17億ユーロの調達。 

4.一部の職種を開放 
タクシー運転手や薬剤師など免許取得が難しいとされる一部職種をより多くの人に開放。

参考:
ロイター - 情報BOX:EU/IMF支援条件達成に向けたギリシャの取り組み (2011年 09月 28日)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23383720110928?sp=true

【ネバダ・レポートによる、日本破綻時のIMF貸付条件】

2002年の衆院予算委員会で、民主党の五十嵐文彦議員が「これは、アメリカのIMFに近い筋の専門家がまとめているもの」として取り上げたましたが、実際は民間企業が有料で定期発行していた「ネバダ・エコノミック・レポート」が原典のようです。
IMFの意向については「05年にIMF幹部と協議した際、ネバダ・レポートのような認識を彼らが持っていることは確認できた」とのことなので、万一日本が破綻したらこのような措置が執られる可能性は否定できません。

1.公務員総数、給料は30%以上カット、及びボーナスは例外なくすべてカット
公務員の給料が安い国では、士気の低下から窓口処理は勿論のこと賄賂の要求が横行します。
日本の公務員が公的書類の手数料を額面通り請求するのは、彼らの給料が高いからです。つまり賄賂を要求する必要が無い。
ロシアでは大学が無償で発行する在学証明書ですら、相手が弱々しい女子大生と見るや1000ルーブル程度の賄賂を要求します(2013年実話)。

2.公務員の退職金は一切認めない

3.年金は一律30%カット
「貯金があるから」と思った方、最後まで読み進めてください。

4.国債の利払いは5年から10年間停止

5.消費税を20%に引き上げ

6.(所得税の)課税最低限を引き下げ、年収100万円以上から徴税

7.資産税を導入し、不動産に対しては公示価格の5%を課税。債券、社債については5~15%の課税

8.預金については一律ペイオフ(払戻保証)を実施し、第二段階として預金を30%~40%カット
国民の預金を財産税として徴収するための預金保護。これでは年金削減に加え、自前の老後資金すら削られてしまいます

参考:
2002年(平成14年)2月14日 第154回予算委員会議事録
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001815420020214010.htm

J-CASTニュース - ナゾの「ネバダ・レポート」の正体 「IMF絡み」日本の財政破綻見越す?(2010年07月15日19時38分)
http://news.livedoor.com/article/detail/4888286/

IMFの議決のしくみ

Jun / Джюн @hitononaka

11) もう1つ、大きな問題点があります。 冒頭でIMFの仕事は「出資国からお金を集めて資金とし、借金できない状態の国に融資する」と述べました。続

2014-02-22 19:42:23
Jun / Джюн @hitononaka

12) IMFでは、何かを決める時の議決権は出資額に応じて比例配分されています。つまり、たくさん出資した国が、より大きな議決権を持つのです。 しかも議案の可決には、議決権比率で85%の承認が必要です。 ここで質問です。最大の出資国とその国はどこでしょう。続

2014-02-22 19:42:57
Jun / Джюн @hitononaka

13) 実はアメリカが17.6%の出資をし、議決権も当然アメリカが17.67%保持。 つまり全ての議決は85%の承認が必要なので、アメリカが反対するだけで、全て否決されます。 アメリカは国連の分担金は滞納し続けてるのに、IMFの出資金はきちんと払っているのです。続

2014-02-22 19:43:36

参考:
Wikipedia - 国際通貨基金
http://ja.wikipedia.org/wiki/国際通貨基金

ロイター - IMFの議決権改革 
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201401/2014012400739