旧日本軍「慰安所」制度に関して刊行されている資料集
大学非常勤講師(哲学)。著書に『海を渡る「慰安婦」問題』(共著、岩波書店)、『憎悪の広告』(共著、合同出版)、『まぼろしの「日本的家族」』(共著、青弓社)、『右傾化・女性蔑視・差別の日本の「おじさん」政治』(共著、くんぷる)など。 threads.net/@nogawamotokazu
先日、南京事件についての基礎的な資料集のリストをツイートしましたが、今回は旧日本軍「慰安所」制度に関して刊行されている資料集をご紹介します。まずは龍溪書舎出版から刊行された『政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成』全五巻。これはいまはオンラインで閲覧できます。
2014-02-23 12:18:34- 編集復刻 (財)女性のためのアジア平和国民基金編
政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成 全5巻、龍溪書舎出版
①警察庁公表関係資料、外務省公表関係資料 http://www.awf.or.jp/pdf/0051_1.pdf
②防衛庁公表関係資料 http://www.awf.or.jp/pdf/0051_2.pdf
③防衛庁公表関係資料 http://www.awf.or.jp/pdf/0051_3.pdf
④国立公文館所蔵資料、大英帝国戦争博物館所蔵資料、厚生省公表関係資料
http://www.awf.or.jp/pdf/0051_4.pdf
⑤米国国立公文書館所蔵資料、国立国会図書館所蔵資料
●各巻資料の概要
http://www.awf.or.jp/pdf/0051_5.pdf
この『政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成』は元資料をそのまま複製したもので翻刻されていませんので、より読みやすいものとしては ・吉見義明編、『従軍慰安婦資料集』、大月書店、1992年 があります。
2014-02-23 12:24:40それから戦犯裁判資料を刊行したものが3つ。 ・吉見義明監修、内海愛子・宇田川幸大・高橋茂人・土野瑞穂編、『東京裁判―性暴力関係資料』、現代史料出版、2011年 ・戦地性暴力を調査する会編、『資料集 日本軍にみる性管理と性暴力―フィリピン一九四一―一九四五年』、梨の木舎、2008年
2014-02-23 12:25:36・梶村太一郎・村岡崇光・糟谷廣一郎、『「慰安婦」強制連行』、金曜日、2008年 これはオランダによる戦犯裁判の資料を、英語からの重訳ではなくオランダ語から翻訳したものです。
2014-02-23 12:26:16それから、「史料集」というかたちでまとめられたものではありませんが、従軍将兵が書いた回想記などから「慰安所」や戦時性暴力(連合国によるものも含め)に関する記述を調査した結果が公表されています。
2014-02-23 12:29:54その結果(の一部)が紹介されているのが ・『季刊 戦争責任』(日本の戦争責任資料センター)、第3、5、7、9、66-68、70-71、77、80号 の各号です。
2014-02-23 12:33:28- 季刊 戦争責任研究 日本の戦争責任資料センターホームページ
- 第3号(94年春季号) 【特集=侵略戦争にみる捕虜虐待・虐殺/突きつけられた「従軍慰安婦」問題】
- 第5号(94年秋季号) 【特集=毒ガス・細菌戦の新資料/戦争体験記にみる「従軍慰安婦」】
- 第7号(95年春季号) 【特集=外国にみる戦後処理問題/日本の朝鮮植民地支配】
- 第9号(95年秋季号) 【特集=日本軍の捕虜政策/中国侵略と戦後補償】
- 第66号(2009年冬季- 号) 2009年12月 【特集=韓国併合100年 植民地支配を問い直す】
- 第67号(2010年春季号) 2010年3月 【特集=なぜ今、韓国併合が問題になるのか】
- 第68号(2010年夏季号) 2010年6月 【特集=歴史の事実と認識をめぐるたたかい】
- 第70号(2010年冬季号) 2010年12月 【特集=戦争責任問題の解決を“抑止”しているものは何か】
- 第71号(2011年春季号)2011年3月 【特集=現在の紛争と性暴力/小特集 「慰安婦」問題関係資料】
- 第77号(2012年秋季号) 2012年9月 【特集=戦争とメディア】
- 第80号(2013年夏季号) 2013年6月 【特集=在日と戦後処理②】
もちろん、このようなかたちで刊行されている資料だけではありません。その他の資料の一部はアジア歴史資料センターのサイトで閲覧することができます。 http://t.co/d33fCpu2g4 ここで閲覧できる資料でもっとも重要なものは、レファレンスコードC01001469500
2014-02-23 12:39:42件名は「野戦酒保規程中改正の件」です。京都大学の永井和教授によって明らかにされたもので、日中戦争勃発から間もない37年9月の段階で、陸軍が「慰安所」を設置できるような規定を定めていたことを意味しています。これにより「業者がやったこと」説は棺桶の蓋の釘を打たれたということに。
2014-02-23 12:41:35また、去年発掘されたばかりの新資料がレファレンスコードC13010769700、「営外施設規定」です。前出の永井教授によれば従来も慰安所の「利用規程」は多数知られていたものの、「設置権限」を規定した軍規則の資料としてはおそらく始めて、という貴重な資料です。
2014-02-23 12:45:29