#変態不知火さん 提督と加賀の過去編

高峯みやび提督(@sukamelancholy)による、 #変態不知火さん の番外編、提督と加賀の過去編をまとめました♪ まとめ一覧→http://togetter.com/li/624713
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高峯みやび @sukamelancholy

阿賀野「提督さんと昔お付き合いしてたってほんと?」 加賀「そうよ」 不知火「……」 阿賀野「阿賀野、その時お昼寝しちゃってたから聞いてないの。だから、教えて?」 加賀「私が転校してきて、彼が告白してきて、付き合ったわ」 阿賀野「簡潔すぎるってば」 #変態不知火さん

2014-02-16 01:19:48
高峯みやび @sukamelancholy

阿賀野「もっと、詳しく知りたいの」 加賀「……そう。彼はここに居ないけれど、過去の話だから、いいわね」 不知火「……」 加賀「……わかったわ。順を追って、話すわ」 ――提督と加賀の過去編 #変態不知火さん

2014-02-16 01:21:24
高峯みやび @sukamelancholy

私が目覚めた時、培養液の中に居たわ。幅は一メートルくらいの筒状に培養液を沢山。それが私にとっての子宮で、羊水だった。何も着用していない私を、一人の科学者が見ていた。私も、彼女を見ていた。そうして、時間が過ぎると彼女は紙に何かを書いて、見せたわ。「おはよう」と。 #変態不知火さん

2014-02-16 01:24:27
高峯みやび @sukamelancholy

その後、培養液が抜かれてバスタオルに包まれた。彼女は私に付着した培養液を拭き取りながら、話しかけたわ。「おめでとう、貴女は七三九三一人目の加賀よ」と。そんな事を言われても、私に理解出来なかった。身体は高校生くらいだけれど、知能は生まれたばかりの赤子と同様だから。 #変態不知火さん

2014-02-16 01:29:06
高峯みやび @sukamelancholy

軽い服装に着替えて、今度はヘルメットを着けられたわ。私はただされるがまま。彼女はぼやいたわ。「〝加賀〟は大人しくて助かる」と。でも私は大人しかったのではなく、怯えていた。目に見える全てがわからないから。……驚いたかしら。私にも怯えの感情はあるのよ。 #変態不知火さん

2014-02-16 01:31:44
高峯みやび @sukamelancholy

そこからは……知っているわね。急速な教育が始まったわ。一般常識、軍事関係、歴史、深海棲艦、艦娘。そして……正規空母加賀の戦術について。ずっと着けたまま過ごしたわ。口元にあるチューブで食事を取りながら。それもヘルメットの教育で覚えたもの。 #変態不知火さん

2014-02-16 01:34:42
高峯みやび @sukamelancholy

そしてヘルメットが外された頃には、私という人格が作られていた。身体に合った知識や常識を身に着けて。「お疲れ様。では質問。貴女は誰?」「……私は航空母艦、加賀」「次の質問。貴女の使命は?」「私の使命は、深海棲艦をこの世から滅ぼす事」「上出来」 #変態不知火さん

2014-02-16 01:37:18
高峯みやび @sukamelancholy

「それでは、加賀としての自覚が芽生えた記念に、貴女へプレゼント」そうして彼女は初めて私へ送った言葉のように、紙に大きく書いたものを見せた。「……加代子?」「そう、貴女は正規空母加賀。その本名は加代子」「……そう」 #変態不知火さん

2014-02-16 01:40:03
高峯みやび @sukamelancholy

「それじゃあ、一通りの教育も終わったし名前もつけた。晴れて貴女は立派な艦娘の一員よ。後は」「普通の学生として過ごし、教養を身に着ける」「物わかりが良くて助かるわ。貴女が過ごすのはN県のT市。そこで高校生として転校してもらうわ。里親さんも居る」「そう」 #変態不知火さん

2014-02-16 01:43:59
高峯みやび @sukamelancholy

それからは目隠しをされて私はそのN県T市へ向かったわ。一応機密だから、と彼女は言っていたわね。きっともう二度と会えないとはわかっていたけれど、別段彼女に対する感情は湧かなかったわ。ただ、私に名前を与えただけの女というだけ。 #変態不知火さん

2014-02-16 01:45:44
高峯みやび @sukamelancholy

その後、里親となる人たちと会って、私は「飯塚加代子」になった。一週間、私は二人に街を案内してもらってから、学校へ転入する事になった。 そこで、私は彼と会ったの。 #変態不知火さん

2014-02-16 01:47:33
高峯みやび @sukamelancholy

彼と学校で出会ったと言ったわね。それは本当は転入してから一年後の事。彼は後輩だったの。私は部活にも入らずに只日々を過ごすだけだった。友人は、それなりには居たわ。私と同じ艦娘のクローンが何人か居たから。赤城さんと、長門さん。それと、蒼龍。 #変態不知火さん

2014-02-16 12:42:08
高峯みやび @sukamelancholy

艦娘であることは学校全体が知っていたわ。これまでも何度か艦娘が転入したのね。教師からすれば、同じ顔をした違う名前の生徒が入ってくるのは、奇妙な感覚かもしれないわね。 それで……そう、夏休みに入る前、終業式の後、私は彼に呼び出された。 #変態不知火さん

2014-02-16 12:47:57
高峯みやび @sukamelancholy

彼、私が艦娘のクローンという事を知らなかった。他の生徒と変わらない先輩として接された。妙な気持ちになったわ。里親にも教師にもよそよそしい扱いだったのに、普通の人間として扱われるその感覚が。 そして私は自分が作り物の存在である事を言わなかった。 #変態不知火さん

2014-02-16 12:53:24
高峯みやび @sukamelancholy

何故か、ですって? ……そうね。高校を卒業すれば私は艦娘として海を走る兵器になる。その前に……少し人間の真似事をしようと思ったの。どうせ、高校を卒業すればもう二度と会う事はないからと思って。まさか、着任先の提督が彼だったなんて思いもしなかったわ。 #変態不知火さん

2014-02-16 12:59:16
高峯みやび @sukamelancholy

彼はしどろもどろになりながらも、私にいつ惚れたのかを語った。全く記憶にない、些末な瞬間だった。私とすれ違っただけで目を奪われたそうよ。一目惚れと言っていたわね。それを聞いた私は、彼の言っている事を一つも理解出来なかったわ。 #変態不知火さん

2014-02-16 13:02:08
高峯みやび @sukamelancholy

「い、飯塚、先輩」「加代子でいいわ」「……か、か、加代子、先輩。あの、その、ぼ、ぼくと、その、えと……良かったら、僕と、つ、付き合って……くださいっ!」「……」「……」「付き合う?」「……はい」「それは、何に付き合えばいいのかしら」「……え?」 #変態不知火さん

2014-02-16 13:04:00
高峯みやび @sukamelancholy

「……えっと、その」「貴方は私に何を求めているの」「な、何を!?」「そう」「……それは、えっと……えっと……あの、その」「……」「男女の、恋愛……です」「そう」 理解出来なかったわ。けれど、必死な彼は本気で、私と共に過ごしたいというのはわかった。 #変態不知火さん

2014-02-16 13:07:38
高峯みやび @sukamelancholy

「わかったわ」「……え?」「私と付き合いがしたいのね」「そ、そう、そうです」「わかったわ」「……い、いいんですか、やった、やったぁ!」「……」 彼はとても舞い上がっていたわ。私と行動を共にすることがとても嬉しくて喜んでいた。二年後にはもう会えないのに。 #変態不知火さん

2014-02-16 13:11:36
高峯みやび @sukamelancholy

告白された後、彼と一緒に下校したわ。彼は舞い上がっているのか、しきりに私に話しかけては好きな食べ物、好きな娯楽、好きなテレビ番組を聞いてきた。 ……私は何も趣味を持っていなかったから、ないと答えるしかなかったわ。 #変態不知火さん

2014-02-17 02:22:44
高峯みやび @sukamelancholy

そもそも私は艦娘のクローンで、近い未来、正規空母加賀として戦わなければならない。だから、趣味は不要と判断していたの。 あとは……そうね。内陸だから平和かもしれないけれど、本当は何も変わっていない。沿岸部は常に危険に晒されている。それが頭から離れなかったの。 #変態不知火さん

2014-02-17 02:26:54
高峯みやび @sukamelancholy

飯塚加代子として生活していても本質は艦娘。戦いの為に生み出された紛い物。 一年人間の真似事をして出した結論は、時間の無駄だという事。クローンでも人間の生活を知って欲しいのか、それとも守るべき物を直接見せたいという魂胆なのか。 私は、全てが無駄だと思っていたわ。 #変態不知火さん

2014-02-17 02:29:34
高峯みやび @sukamelancholy

彼の質問に全て何もないと答えると、彼は押し黙ってしまったわ。私の中身が虚無しかない事に気付いたのね。 けれど、彼は笑った。 「加代子先輩、これから俺と思い出を作りましょう」「思い出?」「友達とじゃ出来ない……その、男女の思い出……みたいな。何言ってるんだろ俺」 #変態不知火さん

2014-02-17 02:32:46
高峯みやび @sukamelancholy

照れ隠しに頬を掻いた彼を、私はどうして照れているのかを聞いたわ。勿論、意地悪とかではなくて、本当に何故なのかわからなかったから。 「ど、どうしてって……その……つまりは……」「……」 そして半ばやけになって彼は私の手を握った。 #変態不知火さん

2014-02-17 02:35:11
高峯みやび @sukamelancholy

「……」「……」「……?」「えっと……」「私と手を繋ぐ事が、思い出になるのかしら」「そ、そうです。こ、こうやって恋人同士で手を繋いで、下校して……なんか、漫画みたいで……」「漫画は読んだ事がないの。ごめんなさいね」「……あ、そう……ですよね。あはは……」 #変態不知火さん

2014-02-17 02:36:50
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