【twitter小説】失くした右腕#2【ファンタジー】

高名な画家が亡くなり亡霊として復活! 霊障案件の解決に向けてレックウィルは彼の右腕を探すことになります。助手のミレイリルは初仕事で奮闘しますが……さて。小説アカウント @decay_world で連載したファンタジー小説です。この話は#4までつづきます
Twitter小説 ファンタジー 減衰世界
rikumo 642view 1コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-15 16:13:26
     緊急電信は音声こそ送れないが、カチカチという信号音を発する。レックウィルはその信号の意味をすぐさま察知した。 「ミレイリル、この事件はしばらく君に任せる。重大な事件が……また起きたらしい」  そう言ってレックウィルはすぐさまその部屋を後にした。 34
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-15 16:18:53
    「レックウィル先生の助手と聞きました。あの先生の助手なのだからさぞ有能な……いや無粋ですな、はは」  ミレイリルは喜ぶ半面かなり不安になった。彼女は最近起きたある事件からレックウィルの助手になった。 35
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-15 16:22:39
     しかし、半ば強制的に助手になっただけで、ミレイリルに霊障を浄化する技術があるわけでもない。ミレイリルはレックウィルより年上だったが、今まで家事手伝い程度のことしかやってきてはいなかった。 36
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-15 16:27:37
    「はは、がんばります」  そう言ってミレイリルはぎこちない笑みを浮かべた。さて、彼女は考えた。自分はレックウィルのために何ができるか。孫娘さんはまだしばらく用事で帰ってこないらしい。彼女はとりあえず情報を集めることにした。 37
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-15 16:34:10
     情報。情報ならば、レックウィルに少しでも貢献できるだろう。しかし情報を集めるにも技術は必要だ。ミレイリルには技術はないが、根気はあった。何気ないことから、なんでもいい。関係ない情報かどうかは先生が判断してくれる。彼女はそう思った。 38
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-15 16:40:09
     些細なことでもいい、クレイシルムの人間関係や、絵についての悩みや、家族について。家主は快く質問に応じてくれた。しかしクレイシルムは恨まれたり呪われたりするようなトラブルがあったわけでもなく、絵の制作も順調だった。 39
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-15 16:46:30
     孫娘も絵の世界に興味を持ち、幼いながらも才能を開花させているらしかった。恵まれた人生だ。何が彼の右腕を奪ったのだろうか。しかしどんな些細なことでもミレイリルはメモしていった。自分は何も分からないが、先生ならば何か分かるかもしれない。 40
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-15 16:56:06
     ミレイリルは自分の買ったばかりの手帳を塗りつぶすように、こと細かく情報を書き連ねていった。 41
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 15:49:24
     レックウィルは街を機動スクーターで急いでいた。すでに日は傾き沈もうとしている。大地に幾つもあいた坑道から蝙蝠が飛びだし、夕空を舞っていた。先程の電信は以前のクライアントからだ。レックウィルの最近受け持った事件で、未解決のものがあったのだ。 42
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 15:52:48
     ひとりのゾンビが死霊術師の手によって作られ、それが暴走しているという話だった。そのゾンビには便宜上『腕集め』という名前が付けられていた。彼は見境なく生きている人間を襲い、腕を千切って殺すのだ。 43
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 15:55:38
     そのゾンビが、素材として認めた腕は、そのゾンビの身体に融合され新たな腕となる。こぶのように膨らんだ彼の背中からは、奪った腕が幾つも生えていた。非常に危険な死霊だ。街の警備隊や傭兵が何人も殺されている。交渉は不可能だろう。 44
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 15:59:04
     レックウィルは彼と何度か交戦したが、レックウィルはそのたび命からがら逃げるしかなかった。この依頼は非常に危険だ。レックウィルの手に負えないときは冒険者のチームが派遣されることになるだろう。目撃されたのは、この街外れの廃工場だ。 45
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 16:01:27
     スクーターを廃工場前に停めて、金網のフェンスを飛び越えた。レックウィルは戦闘が出来るくらいの身のこなしはできる。だが、今回は相手が悪い。慎重に廃工場の中を進む。工場の中は闇に包まれていた。しかし光源を使用したら相手に丸見えになるだろう。 46
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 16:04:52
     左手につけた指輪を撫でる。すると、その青い濁った指輪は水色の光を放ちレックウィルを一瞬燐光で包んだ。この指輪には暗視をもたらす力がある。レックウィルは魔法が使えなかったが、こういった便利な道具は幾つも所持していた。 47
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 16:07:21
     暗視の力によって、工場の内部が明らかになった。幾つもの機械や重機が錆びたまま放置されている。床は土がつもり……赤く点々と血痕が残っていた。すでに犠牲者が出ているらしい。周りを注意しながら血痕を辿る。 48
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 16:10:01
     血痕は大きな機械の後ろに続いていた。レックウィルは腰に下げた杖を抜いた。魔法用の杖ではないが、この杖自体魔法の力を持ちかなりの戦闘能力を持つ。注意深く機械の裏に回ろうとする……その時! 49
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 16:12:35
     後ろからの気配を察知しレックウィルは杖で防御する! 強力な一撃が彼を襲った……だが、レックウィルは運よく受け切れたようだ。逆に廻り込まれていたらしい。そう、腕集めが後ろにいたのだ。禿げた頭に血ぬられた口。背中には増えたばかりの新しい腕があった。 50
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 16:15:45
    「執念深い奴め……今度は逃げられないよう確実に殺してやるから安心しな」  腕集めが低く沈むような声でレックウィルに告げる。無数の腕がゆらゆらと揺れて、攻撃の機会を探っていた。戦士の腕から魔法使いの腕まで様々だ。 51
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-16 16:19:45
    「お前に聞きたいことがある」  レックウィルは杖を構えながら腕集めを問い詰めた。 「クレイシルム画伯の腕を奪ったのはお前か? 技術は腕に宿る……絵でも描きたくなったか? 腕集め!」 52
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-17 16:19:38
     クレイシルム家の家主からあらかた情報を聞きだしたミレイリルは、とりあえず事務所に帰ることにする。金属パイプと薄い金属板でできたスクーターに乗り、ミレイリルは夕暮れの街を帰路についた。葬式の列はもう撤収し、辺りはもうほとんどひとがいない。 53
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-17 16:26:08
     ミレイリルはどこかワクワクとしていた。自分の働きがレックウィルを助ける空想をしては、ニヤニヤと頬を緩ませる。そうだ、自分は彼のためになれる。その日がきっと来る。いつまでもお荷物でいられない。小屋で座って彼に連絡するだけの自分とはさよならだ。 54
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-17 16:30:57
     事務所に着くころには辺りはすっかり暗くなっていた。崖から落ちないように気をつけて駐車する。一応落ちないようフェンスがあるが、錆びているし心もとない。まだレックウィルは帰ってきていないようだった。小屋に入り、裸電球に明かりを灯した。 55
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-17 16:35:16
     そして朝読んでいた本の続きを読むことにする。情報の整理は、レックウィルが帰って来てからだ。読んでいたのは、死霊の発生について書かれている本だ。未練や執念を持った意思が、どのようにして空気中の魔力に反応し、魔法構造を取るのか……。 56

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