【つねに、途中】福間健二 2factory87
黒くなるだけの島を盗む準備に飽きて、自分から転びに行く。ぼくの書き方。塩味だけの、蒸した豆類を食べる。「なぜよそ見をするの」。扱いにくいひとりの女性が生まれている。内乱の予感。みかんの災難。立ち上がったぼくは両端を結んだ一本の紐になれない。(つねに、途中1)#2factory57
2014-02-18 09:35:49「両端を結んだ」ではなく「両端を結べる」がよかったかと思いながら、煙の中からあらわれる毛糸の帽子とマフラー、そして何を見たのだろう。紐の次は、棒。棒の次は、それを打ち込む心臓がいる。ある地域の古い言い方では、胸のりんご。そして胸は息の家。(つねに、途中2)#2factory57
2014-02-19 09:08:04蕾をもつ枝々の効果で、だれかの、ある部位をますます好きになる光のなかに出る。ニュース、朝食、銀のケースから取り出した紙巻き煙草。まちがって出た器をしまう場所がわからない。「いいかげんおぼえろよ」と不意の、陰険な死者たち。ずっと見ていたね。(つねに、途中3)#2factory57
2014-02-20 08:41:45「陰険な」ではなく「おせっかいな」だったか。進化する香り、つまりはあかるい疲労を生産する少女とその足の、小川に接続する部分。低音の青に染まっている。大事なのは、この地上という中間。水を飲むこと。「ほっといて」と誘惑的にステップを踏む退化だ。(つねに、途中4)#2factory57
2014-02-21 08:48:24冬の日。ある地域では確かなことでも、ここでは方向を見失いながらよどんでいく主題。その底からきこえる死んだ声、どう音楽にするか。さあ、鼓動打つりんごとナイフの出番だ。交感状態の「読者」たちの歯と舌におこる炎が、必死の、退化を遂げているのだ。(つねに、途中5)#2factory57
2014-02-22 08:02:27幼い導火線ができている。読みまちがえた「死んだ声」の粒子がこぼれて。その場所。その状況。コントロールできない。「なんど言ったらわかるの」と踏み消す足とその暴走が、だ。一周遅れの少女機械よ、そっちへ行ってはいけない。つらい思い出がよみがえる。(つねに、途中6)#2factory57
2014-02-23 09:07:37たとえばモーツァルトが小鳥をばかにしすぎないように、小鳥がモーツァルトに腹を立てすぎないように、と二つのあいだで気を使って生きていた。去年の春。ガイ、シヌシカナイ。毎日そう言われて。色とかたちが変化して。自分だけの音楽、息の家に閉じ込めて。(つねに、途中7)#2factory57
2014-02-24 08:43:48ドレスの上から、肉ではなく、機能に食い入るように。見る人である「作者」から奪った紐をかけて。視線の色をわざと見まちがえる。青、赤、黄色。再発見、暴走、ステップ。島は暗い水に囲まれている。その枠の中にあってこんなに可愛いマシーン、動く欲望!(つねに、途中8)#2factory57
2014-02-25 08:13:40割引で買った。バイトしている店のふっくら大豆と干しイチジク。おいしかった。歯と舌のあいだを通過して、溶ける全体となる柔らかい半分と硬い半分。どの段階でも、反省はない。外に出ると大きくなって、石を投げられる。平気、痛いのは。じゃあまた明日ね。(つねに、途中9)#2factory57
2014-02-26 08:10:28「痛いのは」でも「汚れるのは」でもだ。耐えるのではなく転ぶ。得意なことがひとつもない日常生活のさまざまの線上に音たてて退化する影を組み合わせて自分を更新するのだ。ぼくの場合の、途中。きみに会うこと、ある。ほらっ、転ばなくても世界が溶けて。(つねに、途中10)#2factory57
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