山本七平botまとめ/【ショフティムと多数決原理①】セム族はいっさいを一に還元する/ショフティムの絶対裁定

山本七平著『比較文化論の試み』/5ショフティムと多数決原理/55頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【ショフティムと多数決原理/セム族はいっさいを一に還元する】ここで、今度はショフティムの話になります。 この言葉(複数形なのですが)は日本語・中国語訳の『旧約聖書』では「士師」と訳されています。 英訳は審判です。<『比較文化論の試み』

2014-02-25 22:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

②いま日本でもカリスマ的指導者などという言葉が使われていますが、元来、このショフティムに付せられた性格です。 カリスマはカリゾマイから来た言葉で、恩恵といった意味ですが、神の恩恵で特別な能力を付与された裁定を下す者の意味です。

2014-02-25 22:39:20
山本七平bot @yamamoto7hei

③したがってユダヤ教のある伝統では、後には、王もこれに入れますし、王が即位のとき、頭に聖油がそそがれるのは、この裁定の能力が付与されたという、伝統的儀式的表現でもあるわけです。 ただ、こういった裁定者は絶対君主ではありません。

2014-02-25 23:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

④絶対者は歴史を支配する神ですから、この支配者の「歴史」が定めた律法、いわば先祖の律法に基づいて裁定を下す者となるわけです。 歴史はこの場合回帰せず、一直線に、その始原から未来へと進むわけです。

2014-02-25 23:39:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤セム族というのは、元来、俗に一(いち)の民族と言いまして、何でも一に還元しないと気が済まない。 で、一人の神、一つの宇宙、一人の予言者、一つの聖典ということになります。 これは、イスラム教だとマホメットとコーランとなるわけです。

2014-02-26 00:09:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥また、ショフティムというのは、前述のようにこれに基づいた裁定を下すものですから、裁定者と私は訳しているんです。 こういう一つの、一本のルートが、上から下まで続いているんです。

2014-02-26 00:39:14
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦これは、上記の歴史的由来を見れば、当然の結果と思います。 日本はそういう社会ではないですね。 その点では、どちらに近いかといわれれば、むしろ、インドに近いと思われます。 またその一つのこととは、いわば時間的にも一つすなわち一回きりで、何事も絶対に再現しないんです。

2014-02-26 01:09:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧ですから、マホメットの再来という考えに出てこないのです。 ほかの点でもそういうことは一切出てこない。 歴史に何か一つのことが起こったら、一回きりで回帰しないんです。

2014-02-26 01:39:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨時間というのは、天地創造から往来まで、まっすぐに一方向に進んでいまして、インド人のように、輪廻転生といった回帰という考え方は、あらゆる面で一切ないわけです。

2014-02-26 02:08:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪【ショフティムの絶対裁定】いつだったか、週刊朝日の『アラビア湾の八人の王様』というのを読んでいたんですけど、こういう単一の世界観が今でも強く残っているのは、あの辺りじゃないかと思うんです。

2014-02-26 02:39:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫だから、王様が夫婦げんかの裁定をしたからといっても、別にこれは民主的じゃないんです。 それが彼らの社会では、もう昔からそうなんです。 イスラエルと違った点に触れますと、ユダヤ人も昔はそうだったんですが、イスラエルの場合は女性が裁定をやっている場合があるんです。

2014-02-26 03:08:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬なぜこの差が出てきたのか、 理由はちょっと分からないのですが、デボラなどという『旧約聖書』に登場する女性は、イスラエル史に出てくる女性裁定者の一人でして、だれの訴えも裁く。 戦争があると、その女性が総司令官になって全軍を率いていく。

2014-02-26 03:39:13
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭イスラエルのメイア首相が、首相を辞める直前ですけど、ニクソンがいったときに、ものすごく皮肉な歓迎の辞を述べたらしいんで、外国の新聞に、やっぱりデボラが今でも生きていると、皮肉を書いていました。 不思議に女性の指導者がいるんですね。 他にも随分いるんです。

2014-02-26 04:08:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮『旧約聖書』に出てくる女性というのは、われわれから見ますと、みんな相当に猛者なんで、こういう国に生まれないでよかったと私などは思っているんですが、不思議に西方セム族では、女性の権限が昔から強いんです。 東方と西方のこの差がどこから出たのか前述のように分からないんですが。

2014-02-26 04:39:28
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯しかし、そういう差がありましても、女性であれ男性であれ裁定者が一民族のすべての裁定を下し、――もっとも、古代の律法に従って裁定を下すんですけど――その場合、その裁定には絶対だれでも服従しなくてはいけないという、非常に明確な一つの宗教法があります。

2014-02-26 05:08:57