市川 大河氏『ごちそうさん』クライマックス第廿弐週感想纏め

【い草の味】 (いくさのあじ)  昭和廿年参月拾参日から八月拾五日正午過ぎまでの物語。
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市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん ふ久と桜子の送別会の鶏鍋。「おおきになぁ」生きるためにそこまで育てて来ていた鶏の命を食らう。その因果をそれぞれの思いで受け入れるめ以子達。家族一人一人の絆が引きちぎられていく中。人が減っていく中での「残されしめ以子」

2014-03-03 12:47:15
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 鶏鍋の切なさとふ久の出産の尊さ。家族のびぞうぉ祈るしかないめ以子が、ロング、サイドバストショットで写される。ついにめ以子の口をついて出る「泰介が、同化兵隊にいかんですみますように!」祈るめ以子。愛国忠臣のめ以子はここにはもういない。用意された食卓には誰もこない。

2014-03-03 12:51:32
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 鶏鍋を放り出して、産気づいたふ久の騒動。希子は空襲に関しての警告放送を行うが、その文字列に壮大な疑問を抱く。悠太郎の血筋からくる注意力が、大阪空襲を予見させる。め以子は息子に説く「以心伝心の人はおらんのか」それはエスパーではない。長い長い年月が生み出した絆の力だ。

2014-03-03 12:54:32
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 女性達が見守る中、ふ久の出産が近づいてくる。「にぎやかだったですよねぇあの頃は」この一言に対する宮崎美子の間の取り方が絶妙過ぎるからこそ、空襲警報のタイミングが「自然過ぎない」演出。希子の予感は当たった。「こんといてよ……」め以子の願いを他所に「戦争」は命を焼く。

2014-03-03 12:57:24
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 静の「うちはどうせ老い先短いさかい」の哀しい決意と共に、生れ落ちるふ久の子ども。父親は未だ戦地の中で、命の奪い合いをする中にある。悠太郎も活男も、その命は知れない。そんな戦火の中で、今生れた新しい命は、母乳に「ごちそうさん」を感じ、街は火に巻き込まれていく。

2014-03-03 12:59:47
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん ふ久も希子も駆り出される「大事な一夜」それをせめて、笑顔で明るく過ごそうとする一同だったが、大阪空襲の大きな影が襲い来ようと忍び寄る。出産間近のふ久は一人で必死に戦おうとしている。「人を殺そうとする戦争」に対する最高のレジスタンスこそが「愛しあい、子を産む」なのだ

2014-03-03 16:14:19
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 今までオレンジのライトか寒色の陽光に照らされ続けていた作品世界が、紅蓮の炎に包まれていく。め以子の幼少の頃のエピソードや、悠太郎のトラウマ等、この物語の背景では常に「炎」が、登場人物のターニングポイントを担っていた。「地下鉄や……」め以子が「生きよう」とする

2014-03-04 12:47:42
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 空襲の中で「生き延びる為」に、悠太郎の担当した地下鉄へ逃げ込むめ以子。悠太郎が「残していったもの」それこそが、愛した人を守り抜く為の知恵と努力であったのだ。人は人を愛した時に、その愛の力の強さに自分自身が立ちすくんでしまう事もあるが、勇気を持って顔を上げればいい。

2014-03-04 12:51:08
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 国家は国民の為に、憲法を尊重し、そして守らなければいけない。め以子の「大事な物」を守ったのは、国家でも愛国者でもなく、め以子自身を愛し、愛され、抱きしめ続けた「縁で引き寄せあった関係」であった。大阪空襲の一晩は明ける。オレンジの「幸せ」と青白い「現実」との対比。

2014-03-04 12:54:49
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 戦争は、国策は、め以子をずっと見守り続けてきた「祖母の糠床」をも破壊してみせた。これ以上何の人身御供を求めてか。これ以上のどれだけの滅私奉公を求めてか、国家の狂気と意地だけの戦争は続く。馬介の中で「オレンジのセカイ」を取り戻す一同。決断を求められるめ以子。

2014-03-04 12:57:30
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん め以子の行方の問題。め以子は拘る。自分の半生に、自身の生き方に。「どれだけ幸せの為の条件」を、国家・戦争に奪われ殺されても、「そこ」で「ごちそうさんが交わされるセカイ」を求めながら。活男や悠太郎、諸岡、自分の父母との「縁」が、まだきっと自分を活かしてくれるのだと。

2014-03-04 13:00:12
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 森下佳子女史の作劇の核の一つに「遺伝子への傾倒」が挙げられる。それは『白夜行(06年)』ラストに顕著だったが、本作でもめ以子と悠太郎の子、ふ久、活男、泰介は、登場人物を「キャラ」としか考えない戯作者からは生み出せない「生々しい遺伝子の受け継ぎ方」を見せている。

2014-03-04 19:31:40
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 諸岡家との対面。め以子が画面右側にいるのは、ふ久の子がこの画像構成の主人公であるから。ふ久はめ以子のもとを巣立っていく。静も桜子の元へ。西門家の焼け跡にはもう瓦礫しか残っていない。戦果はめ以子から何もかも奪っていったが「縁」はめ以子と和枝をもう一度結びつける。

2014-03-05 12:48:08
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 和枝のもとへ向かう泰介とめ以子。和枝の元に泰介が届けたのは消し炭になってしまった「土地の権利者と印鑑」悠太郎譲りのロジカル人間の泰介の弁舌が窮地を救う。和枝が、め以子が守ってきた「家」は何もかもを失い、しかし二人は和枝のもとでまた向き合う。そこは果たして楽園なのか

2014-03-05 12:51:57
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 和枝の「家」にも漂う不穏な雰囲気。和枝の「いけず」が滑稽にみえるのは、きっとめ以子も和枝も成長したからであろう。ここから新生活をスタートするのではない。全ての「家族の繋がり」を元に戻すためのテイクバック。活男や諸岡、悠太郎やふ久や静。全ての「今まで」のために。

2014-03-05 12:55:23
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 「アノ人と私は、死ぬまでいけずをせなあかんと約束しあったんや」和枝の意地、和枝の優しさ。戦時下とは思えないのどかな風景が、め以子と泰介の青空下での食事が描かれる「ずるずるばりばりは『家族の音』」村社会での、自らの立ち位置を知る泰介。鬼嫁の背景で和枝が負ってきた苦難

2014-03-05 12:59:07
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 「いけずしあう約束」それは和枝にとってもめ以子にとっても「自分がなぜ、かような生き方を選んだのか」へのエクスキューズ。そこにあるのは近親憎悪。しかしそれを愛し合う余裕はなく、けれど潰しあう体力もない。戦争という「状況」は、二人の人生にも化学反応を与える。

2014-03-05 13:01:30
チロ @chi_ro504

「いびられても、泣かされても、私は好きですって。まるで仏さんやなあ。気持ちええやろ」とめ以子ちゃんに言った和枝さんが、今は小作人から「奥様こそ仏さんみたいやあ」と思われてるのがいい。 #ごちそうさん

2014-03-05 18:33:40
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 陽光が右サイドから強く和枝に差し込む中、和枝をおぶることになるめ以子。凸凹コンビのいけずの張り合い。ここには戦火の煩わしさはどこにもない。どこかの流れで「食べること」で癒されていくのだろうが、その展開が許される空気が、ぽっかり空いた抜け穴のようにここでは流れている

2014-03-06 12:47:30
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 疲れ果ててる女性同士の、意地の張り合いがコミカルに(カメラアングルで俯瞰にしたり)描き続けられる。食糧難の時代、戦火を逃れた農家や田んぼ持ち一家は、とても優位な状況だったという。奈良で最大の青物市場を営んでいた僕の亡母の実家も、食料には不自由していなかったと聞く。

2014-03-06 12:51:10
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 家族が「それでも」離れていく時間が流れている。「母と一緒にご飯を食べてください」と懇願する泰介に「女は一人でご飯を食べられるようにならんと」和枝が答える真理。どちらも全ては一期一会の心に従った、人の生き様の向こう側を示し照らす。去りゆく泰介。残されるめ以子。

2014-03-06 12:54:43
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん クレーンカメラワークを駆使して、め以子の心理描写とカットバックしながら「赤紙が泰介に届けられる」演出の細やかさ。諸岡、活男、悠太郎、そして泰介。皆それぞれに、日々を笑顔に行きたいと願っただけの人生が、命もろとも国家に握り潰されていく。国が人を殺していく。柿の葉寿司

2014-03-06 12:57:51
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 「あと5日や、頭上げてなはれ」和枝の目が本当に「優しい目」であったこのシーンこそが、脚本だけでも演出だけでも、演技プランだけでも描けない『ごちそうさん』のピークと言い切っても良いのだろう。め以子は全てを失うかもしれない。過去の全てを思い出にしてでも「ごちそうさん」

2014-03-06 13:01:31
市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 「赤いラブレター マダムから届いた 若い男に次々に出すのさ 危ない危ないラブレター 俺を悩ます! 奴はいつでも火遊びが好きで ミサイルに手をかける!」 ARB / 赤いラブレター 石橋凌 - YouTube http://t.co/FUhdTdYvBw

2014-03-06 13:41:54
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市川大賀 @ArbUrtla

#ごちそうさん 並んで柿の葉寿司を作るめ以子と和枝。シリーズ前半と今回での二人の雰囲気の差は、俳優同志が気が合った、登場人物同士の関係性に、物語構造の中で変化があった。そしてまた並行する形で森下佳子が参考にすべき作品が #あまちゃん になっていたということもあるのだろう。

2014-03-07 12:47:28