都市、回路、痕跡、幽霊

メモです
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helpline @helpline

青山七恵『かけら』(新潮社、2009)を読んだ。「かけら」「欅の部屋」「山猫」の三短編を収録。後半二篇は「ひとり日和」同様、東京で生活する若者たちの「空間」がテーマになっている。

2010-10-28 19:35:06
helpline @helpline

「欅の部屋」は、「若者の稀薄な人間関係を描く青春小説」だ。主人公の男の子は普通に恋愛経験もあり今は結婚を控えているが、唯一深く全人格的な関係を結べただろう元恋人を、別離から四年後の今も気になり続けているのだが、結局そのことが明確に自覚されることはない。

2010-10-28 19:48:26
helpline @helpline

読んでると、そんなに気になってるなら、ヨリを戻すかどうかはともかく、もう一度ちゃんと繋がりを結びなさいと思うのだけど、未だに同じアパートに住みながら互いに避け、向かい合うことを回避し続ける。それでいておそらくお互いに本当に自分をぶつけられるのはお互いだけだと思っているのだ。

2010-10-28 19:55:42
helpline @helpline

……という辺りの若者のコミュニケーションの距離感をよく掬い取っているのは青山七恵はさすがという感じ。「山猫」は夫婦といとこの女の子の視点がときどき唐突に切り替わり、多少ぎこちないのだけれども、三者三様の心理を掘り下げつつ、認識のズレを巧みに描いています。

2010-10-28 20:01:04
helpline @helpline

都市の空間がテーマの小説を読んでいると、いつもベンヤミンの「探偵小説の根源的な社会内容は、大都市の群衆のなかでは個人の痕跡が消えること」という文章が思い浮かぶのだけど、このテーゼってネットを空間に見立てた場合にはどうなるのだろうか。

2010-10-28 20:51:50
helpline @helpline

濱野智史が『アーキテクチャの生態系』で言っていた「同期」の問題ですね。ニコニコ動画は、必ずしも同じ時間に人が居合わせてるわけではないけれど、コメントが残ることによって「擬似同期」が発生し、祭りの空間が生まれると。

2010-10-28 20:54:15
helpline @helpline

ニコニコ動画のコメントはまさに「痕跡」なわけですよね。都市では痕跡は残らなくて個人の履歴は絶えず消去され上書きされるわけだけど、そうした流動性の高さによってこそ都市が都市として機能する。(ホラー映画が描くのは、「痕跡」としての幽霊ということだろうと思う)

2010-10-28 20:58:40
helpline @helpline

都市の空間とネットの空間、そして郊外の空間などについて、「痕跡」や「同期」の問題として対比しながら考えてみるのはおもしろいかなあ……。すでに誰かやってそうな気もしますけどね。

2010-10-28 21:02:35
@ttt_ceinture

@helpline 黒沢清の『回路』見たことある?

2010-10-28 21:07:24
@ttt_ceinture

@helpline あれは、幽霊と言っても個人の幽霊という感じではないので、ひたすらシミ=痕跡が感染的に拡大する映画だったね。すべてが痕跡になる。

2010-10-28 21:10:59
helpline @helpline

@ttt_ceinture 先程のツイートで念頭にあったのは「呪怨」でした。「回路」は、あの世が魂でいっぱいになって溢れてしまったので、人の魂は現実の世界で染みになるしかないんですよね。

2010-10-28 21:18:57
@ttt_ceinture

@helpline 『回路』の「あの世のキャパ限界につき、こっちに来ました」というのは正直どうなんだと思った。あの武田真治のキャラ自体不要なのではないかとw 呪怨は一戸建てが拠点となる一方で回路はいたるところが痕跡の場所になるのが面白い。

2010-10-28 21:22:39
Kim, Yi-Chul 🖖 @kimarx

One of my favorite funk tunes performed by Jazz musicians. David Sanborn "Snakes" http://www.youtube.com/watch?v=hK51KGfzMAk

2010-10-28 21:29:26
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永田希/n11個さん 3/20『再読だけが創造的な読書術である』刊行 @nnnnnnnnnnn

「まさに痕跡」というものはあるのでしょうか。RT @helpline ニコニコ動画のコメントはまさに「痕跡」なわけですよね。都市では痕跡は残らなくて個人の履歴は絶えず消去され上書きされるわけだけど、そうした流動性の高さによってこそ都市が都市として機能する。(ホラー映画が描く…

2010-10-28 21:34:54
helpline @helpline

@nnnnnnnnnnn なるほど、言われてみれば。デリダを読み直してきます(^^;

2010-10-28 21:36:33
@ttt_ceinture

@nnnnnnnnnnn デリダ的にはちげーよとなるよね

2010-10-28 21:39:30
永田希/n11個さん 3/20『再読だけが創造的な読書術である』刊行 @nnnnnnnnnnn

@helpline @ttt_ceinture でもベンヤミンならありなのかも…と思って脊髄反射post申し訳なくなりました。でもデリダ、◯◯はまさに痕跡そのものである、とかうっかり書いてたりしても不思議ではない気もします。

2010-10-28 21:41:58
永田希/n11個さん 3/20『再読だけが創造的な読書術である』刊行 @nnnnnnnnnnn

まさに◯◯、と、ただの◯◯性、との違いとかについては既に議論が尽くされているんだろうけど、誰がどう言ってどう決着ついたのかわからない。どっかで何度も読んだ気がしているがまるで思い出せない。

2010-10-28 21:44:49
@ttt_ceinture

@nnnnnnnnnnn いや、デリダの痕跡は、現在であったこともなく・現在であることもない過去のことだから(cf. 「差延」、『余白』)、かつて現前したもののログという意味合いには合致しない。ベンヤミンだとたしかにいけそうだけど。

2010-10-28 21:47:38
@ttt_ceinture

@helpline トム・ガニング「個人の身体を追跡する」(『アンチ・スペクタクル』所収)とかどうだろう

2010-10-28 21:55:19
Kim, Yi-Chul 🖖 @kimarx

This is just the heart beat of myself. JB - Give It Up Or Turnit A Loose (In The Jungle Groove Remix) http://bit.ly/cRjUO3

2010-10-28 21:57:26
永田希/n11個さん 3/20『再読だけが創造的な読書術である』刊行 @nnnnnnnnnnn

@ttt_ceinture デリダって自分で定義しておきながら、(誤訳によるものかも知れないけど)いい加減な具象化をしてしまう人という印象があるんですけど、そういう傾向ないですか。具体例あげられないんですが。

2010-10-28 21:59:18
@ttt_ceinture

@nnnnnnnnnnn いや、「まさに○○」みたいなのはデリダだとむしろ少なくない? 慎重すぎると揶揄されがちな側面。

2010-10-28 22:01:44
永田希/n11個さん 3/20『再読だけが創造的な読書術である』刊行 @nnnnnnnnnnn

@ttt_ceinture 『絵葉書I』を読んで、いわゆる中期デリダは意図的に慎重すぎる表現を自分でグズグズにしてたのかなという印象を持ったんです。今度から気をつけて読んでみますね。初期は確かに「まさに○○」は明らかに批判しそうですけど。

2010-10-28 22:04:53