ケンペイ天狗「クローン・トループス・アンド・ウナギ」
-
- いいね！0
ANA
@ANIGR
雄大な川、広がる平原、ネオヨコスカには無いシンピテキが残るこの地は、有史以来常に人と自然の境界線としてあり続けてきた。この境界を超えた西には寒冷な気候を嘲笑うかのように広大な密林が広がっている。群馬県だ。シャーマン達の聖地として世界遺産にも登録されている。 ２ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:33:46
ANA
@ANIGR
時には政治犯達の隠れ家として、時には群馬県へ入るシャーマン達の宿坊として。このトチギ・ノースラントで人々は寄り添うように生き、漁撈と農業で生計を立てている。過度な中央集権化により政府から見捨てられインフラの殆どが滅びたマッポーの世においても変わらない。３ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:36:10
ANA
@ANIGR
旧世界の偉大な軍人であり哲学者、ヤマモト・ゴジュロクはこのトチギの土地を愛し、特産であるサーモントラウト―――かつてはニジマスと呼ばれていたが、この魚をサーモン扱いしたいスシ・チェーンの強烈なロビイングによりその名称は滅びた―――を好み、詩にも読んだという。 ４ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:38:53
ANA
@ANIGR
しかしトチギ・ノースラントにはもう一つ特産品が存在する。そう、地理に詳しい読者諸氏ならご存知かもしれない。口にするのもおぞましきウナギの密猟である……！ ５ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:42:01
ANA
@ANIGR
トチギ・ノースラントを流れる大河、キヌ・リバー。その中流を、五台のジェットスキーが起こす波が切り裂く。「雷神愚」という威圧ミンチョ文言が刻まれたスキーを操るのはいずれも屈強なコーカソイドの男。全員がヤリやソードオフショットガンで武装したヤクザクランである！ ７ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:45:50
ANA
@ANIGR
しかし彼らが戦うのは敵対ヤクザクランでも鎮守府の艦娘でもない。「シマッテコーゼ！」「ヒャッハー！」彼らはウナギが水面から黒く巨大な姿を見せるたびに彼らは禍々しいチャントを上げると手に持ったヤリやショットガンで攻撃を加える。その度に夥しい血飛沫が美しい川を汚す。 ８ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:48:10
ANA
@ANIGR
そう、彼らはウナギ密猟専門のヤクザクラン「ライジング・ヤクザクラン」！ご存知の通りウナギは知能の高い動物として世界的に狩猟が禁止されている。しかし実際のところは美味なオーガニック食品であり、かつ様々な薬品の原料にもなるとしてこのような密猟が横行しているのだ！ ９ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:49:42
ANA
@ANIGR
密猟クランにとってキヌ・リバーは最高の狩り場だった。トチギは地方ゆえ艦娘の巡回が少ない。しかも通常１０～１５メートルの大きさのウナギが、キヌ・リバーでは２０メートルに達することもあるのだ。「バモォーッ！」三本のヤリを突き立てられ、ウナギが苦しげに呻く！ １０ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:52:43
ANA
@ANIGR
「シマッテコーゼ！」トドメの際が一番アブナイだ。今一度構成員に喝を入れるとリーダーのサムは巨大な鎌首をもたげるウナギを見てほくそ笑んだ。かつてない大物だ、３０メートルはある。取引値８千万クレジット？いや１億クレジットを越えるかもしれない。オキナワにバカンスだ！１１ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:54:55
ANA
@ANIGR
しかしその時である！「「「「イキューッ！」」」」突如聞きなれぬシャウトと共に横から殺到した砲撃がウナギの腹に次々と風穴を上げたのだ！「バモォーッ！」ハチノスめいた身体になったウナギは苦悶の叫びを上げる。「「「「イキューッ！」」」」再び砲撃！「バモォーッ！」１２ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:57:28
ANA
@ANIGR
「バモオオォォォォォ……」メタルラッパめいた断末魔と共に糸の切れたジョルリめいてウナギの巨体が水面に倒れこみ、巨大な水柱を立てる。「ブッダシット！」ウナギの横取りを企む別の密猟クランか？サムはジャケットで水飛沫がショットガンにかかるのを防ぎながら振り返った。 １３ #ケンペイ天狗
2014-03-08 14:59:55
ANA
@ANIGR
「……！」サムが、いやライジング・ヤクザクランの全員が息を飲む。「ア、アイエエ……」クランの一人は静かに失禁した。砲撃の主……川の岸壁で１２サンチ砲を構える四人組はまるで四つ子！同じ体格を同じ黒い水兵服で包み、同じ軍靴を履いているのだ！まるでクローン……。 １４ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:01:35
ANA
@ANIGR
しかし驚くべきはそこではない、彼らの頭部である！人間の頭部があるべきはずのそこには、代わりに深海棲艦、駆逐イ級のそれが載っていたのだ！「「「「イキュー……」」」」「ア、アイエエエ！ナンデ？深海棲艦ナンデ！？」クランの一人が深海リアリティショックを起こし失禁！ １５ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:03:57
ANA
@ANIGR
「ブッダファック……クローンイ級……」サムは呆然と呟いた。ブッダも恐れぬ所業、深海棲艦の細胞をクローン複製した人工艦娘。実験の情報は裏社会に流れていたがもう実用化されていたとは！「ザッケンナコラー……ウナギ横取りする気かッテオラー……」サムは言葉を絞り出す。 １６ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:06:38
ANA
@ANIGR
「オット！オットットット！実験に一般人が紛れ込んでいましたか！」その時、剣呑な雰囲気に割り込むように細身のメガネサラリマンがクローンイ級の後ろから現れ、サム達を見つけると模範的営業スマイルを浮かべてオジギをした。「ドーモ、ライブ・トモダチ化学のマキシマです」 １７ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:09:40
ANA
@ANIGR
「オットット！申し訳ありませんねサム＝サン、我々はウナギよりも良い商売をすることにしましてね。凄いでしょうクローンイ級は！戦闘力は艦娘ほどではありませんが、命令に忠実ですし数が作れて実際安い。これからの我が社の主力商品になる！ナイスビズ！」マキシマは笑った。 １８ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:13:04
ANA
@ANIGR
「ドーモ」サムは剣呑な表情でオジギを返しつつも安堵した。ライブトモダチ化学、薬品や生物化学兵器を扱う暗黒メガコーポ。しかしライジング・ヤクザクランにとっては付き合いの長いウナギの卸先の一つだ。悪いようにはならないはｚ「イキューッ！」BLAM!「アバッ」 １９ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:15:50
ANA
@ANIGR
「……ワッザ？」オジギをしたサムが頭を上げた瞬間目にしたものは砲撃で頭を砕かれ崩れ落ちるクラン構成員。「……ワッザ？アンソニ＝サン？」撃たれたのだ、クローンイ級の１２サンチ単装砲に。 ２０ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:17:58
ANA
@ANIGR
「ザッケ……！」サムは怒りを爆発させるべくマキシマの方を振り返り、それ以上声が出せなかった。４人のクローンイ級の青く光る無機質な目がサム達を射抜くように見据えていたのだ。「アイエエエー！？……アバッ」恐怖に逃げ出そうとしたクランの一人が砲撃を受け頭を砕かれる。２１ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:19:54
ANA
@ANIGR
「つきましては丁度ヤクザクランとの戦闘データが欲しかったところなんですよ」「ザッ、ザッケンナコラー！」BLAMN!笑顔を崩さないマキシマに対しサムがショットガンを発射！しかしマキシマは避けようともしない！一瞬後クローンイ級が庇いインターラプト！「オット！」 ２２ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:22:10
ANA
@ANIGR
「イキュー……」全身に散弾を受けたクローンイ級は濡れたイヌめいて身を震わせめり込んだ弾を落とす。しかしその体は全くと言って良い程ダメージを受けていない。「ブッダファック……」サムは絶望した。艦娘と同等の装甲なのだ、人間用の武器では相手にならぬ！ ２３ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:24:16
ANA
@ANIGR
「人工艦娘なんて……海軍が、黙っちゃいない……！」半ば白目を向きながら言ったサムのうわ言をマキシマは嘲笑った。「オットット！なら次は艦娘相手の実験もしたいところですね」クローンイ級達がサムに対して砲口を向ける。そしてマキシマの合図と共にサムの意識は消滅した。 ２４ #ケンペイ天狗
2014-03-08 15:26:36