【twitter小説】失くした右腕#4【ファンタジー】

高名な画家が亡くなり亡霊として復活! 霊障案件の解決に向けてレックウィルは彼の右腕を探すことになります。助手のミレイリルは初仕事で奮闘しますが……さて。小説アカウント @decay_world で連載したファンタジー小説です。この話はこれで終わりです
減衰世界 ファンタジー Twitter小説
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  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:13:48
     ミレイリルは画伯の右腕の気配を探した。と言っても、彼女に霊感があるわけではない。しかしただの人間に右腕は乗り移らないだろう。画伯が認めた人物とは一体……。そのとき逃げるひとをかき分けてこちらに向かってくる少女がミレイリルの目にとまった。 92
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:17:52
    「どうしたの、何が起こってるの……?」  少女は喪服がわりの学生服を着ていた。ミレイリルは彼女に危ないから近寄ってはいけないと言う。だが少女は通ろうとする。ここは自分の家だと、私はクレイシルム画伯の孫娘だと言うのだ! 93
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:22:56
    「あなたが画伯のお孫さん……会いたかったけど、いま大変なの……」  そこでミレイリルは閃いた。あることに気付いたのだ。彼女の腕を引っ張り、アトリエへと急ぐ。 「あなたは誰なんです? アトリエに何の用が……」 94
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:27:45
    「わたしはミレイリル。霊障コンサルタントよ。あなたもしかして……おじいさんの絵の続きを描いていない?」 「えっ、どうして分かるんです!?」  ミレイリルはウィンクをして笑顔を見せた。 95
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:34:35
    「だってあなた、指に絵の具がついてるんですもの。それによく考えたら、あの画伯の遺品に手をつけるなんてできるの、身内のひとしかいないじゃない!」 「えっ……なんでばれてるの!? こっそりやってたのに……」  ミレイリルはフフッと笑う。 96
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:41:22
    「もう絵は完成するんでしょ、いえ、もう完成してるのかも。分からないけど、あなたに最後の仕上げをやってほしいの。そうすれば、きっと右腕は……画伯の右腕は未練を断ち切って画伯の元へ戻るはず! お願い!」 97
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:44:12
     孫娘は無言で頷いた。事情が分からないが、自分のすべきことを理解したらしい。さっそくアトリエに入った彼女は、学生服も着替えぬまま絵筆と絵の具、そしてパレットを手に取った。絵の具を油で溶き、色を作る。 98
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:48:07
    「もうほとんど完成なの。あとはこの人物の目に瞳を入れるだけ。おじいちゃんと同じ手順……何故だか知らないけど、おじいちゃんの力を手に入れた、そんな気がするの」  碧の絵の具はきらきらと輝き、絵筆の先で光っていた。孫娘はゆっくりと瞳を描く。 99
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:50:30
    「よし、完成!」  その瞬間、絵から緑色の光が溢れだした! それはしゃらしゃらと音を立てながら、孫娘の右腕に絡みついていく! 孫娘は驚きの声を上げた。右腕が脱皮するように光の皮を脱ぎ、絵と同化した。 100
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-21 16:54:07
     そして絵は緑の光を放ちながら宙に浮かんだ。そして、そのまま光の粒を噴き上げながら窓を突き破って外に飛んでいった。行先はもう分かっていた。 「追いかけよう!」  ミレイリルと孫娘は駆けだした。絵は……右腕は全ての目的を達成したのだ! 101
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 16:24:57
     クレイシルムは腕集めの力を辛うじて抑えていた。腕集めは身体のメンテナンスが行われていないという状況を、他の死体との合体という方法で解決しようとしている。無論、そんな突貫工事が上手く行くわけでもなく腕集めの力は衰えるばかりだ。 102
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 16:29:03
     しかし、それでもかなりの上級のゾンビであった腕集めは、一般人の死霊であるクレイシルムをほとんど圧倒していた。クレイシルムの力が生み出した白い靄は腕集めを取り囲んで拘束していたが、腕集めはそれでもゆっくりと足を進める。 103
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 16:32:38
     もう、もたない。これ以上接近されたらこの拘束が解ける……クレイシルムは焦っていた。だが、そこに緑の燐光が降り注いだ。上を見上げると、緑の光の塊がゆっくりと頭上を旋回している。腕集めもそれに気付き、天を仰いだ。 104
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 16:43:01
    「なんだこれは、じじい、何の魔法だ!?」  腕集めはうろたえる。が、すぐに彼はその光の正体に気付く。腕だ。クレイシルムの腕がそこにあるのだ。腕集めは必死になってその光の塊を捕まえようとした。だが、うまくジャンプできない。 105
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 16:58:18
     白い靄の拘束は、いつしか緑の光の渦になっていた。腕、腕を寄こせとうわごとのように腕集めは繰り返した。だが、その姿も声も緑の渦が塗りつぶしていく。クレイシルムは光に抱かれ、自らの右腕が戻ったことを実感した。 106
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 17:09:32
     緑の光の渦は、やがて不思議なイメージを形作っていった。ミレイリルと孫娘もようやくその場に到着する。そこには……絵で描かれていたそのままの情景が広がっていたのだ。しかも、ただ再現しただけではない。 107
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 17:17:05
     絵で描かれていたのは室内の薄暗い部屋にいる人形と少女の姿だった。だが、眼前に広がっているのは光の中で人形と遊んでいる少女の姿だった。その落ちついた色調は極彩色の鮮やかな光に変わっている。それはクレイシルムの画風とは違うものだった。 108
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 17:25:10
     クレイシルムは右腕を撫で、そして孫娘を見た。 「これがお前の描きたい絵なんだね……ふふ、私がお前にプレゼントするはずの絵だったが、こんな形でお前からプレゼントされるとはね」 109
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-22 17:31:08
     腕集めはもう光の渦にかき消されていなくなってしまった。やがて緑の粒子は光を失い、あせた色の蝶になって空の向こうへ飛び去ってしまった。後には……クレイシルムとミレイリル、そして孫娘が、緑の絵の具まみれで残されていたのだった。 110
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-23 15:49:21
    ――失くした右腕 エピローグ
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-23 15:53:08
    「はは、これがお前の色か……素晴らしいな」  絵の具まみれでクレイシルムは孫娘に微笑んだ。もう彼の姿は薄くなり、空気と同化しつつある。そう、彼の未練は解決したのだ。あとはもう浄化されるのみだ。 「おじいちゃん……」 111
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-23 15:56:26
     孫娘は必死になってかける言葉を探そうとしていたが、言葉に詰まってなかなか言い出せない。やっと彼女は言葉を絞り出す。 「おじいちゃん、おじいちゃんの腕だったんだね。凄い力が湧いて来たよ。何でも描ける、そんな気がしたの」 112
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-23 16:00:24
    「お前は最初から何でも描けるさ。いつも描いていただろう? じいちゃんは見ていたぞ」  そう言ってクレイシルムは孫娘の頭をなでる。その手はもう実体がほとんどなく、指先は髪に沈んだ。 「右腕は、ただ勇気をくれただけさ」 113

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