地獄鎮守府の日常#4~6
- YamanekoOuka
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#幕間
冒頭からメカバレシーンを入れてはいるものの生肉混じったためただのネクロニカ状態になったのがこの #地獄鎮守府の日常 でございます
2013-12-01 18:25:57#4
何年前の話だろう、よくわからない、だが、私はそこに居た、そこに居たと記憶している。 そこから日本に流れ着いた、私はそう記憶している。 どうやって?よくわからない、だがどうでもいい、そんなことはどうでもいい。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:02:41この国に武器をばら撒き、地獄にした元凶、もし噂に聞く虐殺を起こす文法があるとしたら、奴は生きる文法だろう。 何で人間が文法かと?おかしい?ならば文法という概念を考えよう、文章の構成だ、文章とは文字の集合だ、文字とは本質的には情報だ。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:04:25そして私はその地で殺戮を行う、誰かに頼まれ、誰かを殺す。 民兵達が目的地までの経路に屯する、2つの勢力の依頼、どちらを受けても孤独な任務だ、全て敵でしかない。 殺すか、隠れてやり過ごすかだ。 私はその時前者を選んだ。 殺したいからだ。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:06:55私は藪に隠れG3突撃銃を構え、アイアンサイトで頭部を狙い引き金を引く。 既に数百年前の設計という骨董品と化した銃から発せられる7.62mm弾が脳を抉る、それで一人死ぬ。 銃声が敵を死の恐怖に奮い立たせ、生き残りは私を探し始める。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:07:45場所を移し回り込み、敵を撃つ、気づかれる、撃つ、囲まれる、頭を撃つ、撃たれても薬のおかげで痛みはない、互いに死ぬまで撃ち続ける。 艦娘の戦いとなんら変わらない、旧世代の遺産に縋った戦い。 日本から離れた地の異質な戦場。 神の不在なる地獄はここにあった。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:08:49戦いが終わり薬を注射すれば傷は塞がる、そしてまた私は敵を殺す、誰だって殺す、少年兵だって殺す、冷淡に殺す。 殺すたびに私はここに居てもいいと報酬系が脳内物質を湧き上がらせる、だから殺す。 そして私は走り続ける、目的地に向かうため、獲物を殺すため。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:10:05障害の中には少女兵も居た、好みでないなら殺す、私は施設の制圧を行い、部屋の角で蹲っていた彼女に銃を向ける。 できればいい女でないことを望む、面倒な事は嫌いだ、いい女なら家庭が欲しくなる。 私が拳銃を握り締め、振り向けと言うと少女兵が振り向く。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:11:04「殺してよ」 振り向いた顔に、私の頭は凍りつく。 それは見知った顔だ。 一番会いたくない顔だ。 少女の顔は、雷の顔に非情によく似ていた。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:12:04次の瞬間、私の意識は執務室の天井と、少女の顔を映していた。 「大丈夫ですか?」 覗き込んでいる顔は雷でなく、電だった。 「ああ、昔を思い出しただけだよ、ありがとう」 私は彼女に答え、ソファーから起き上がる。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:13:39「あの、指令、その……」 「何だね」 もったいぶった電の態度、やさしい少女だが、どこか欺瞞めいたやさしさが私を苛立たせ、このような態度ですら神経を何時も刺激させる。 「あ、ごめんなさい。紅茶が無いみたいなのです、金剛さんが困ってました」 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:14:34「紅茶か、妖精が補給しなかったのかい?」 私は電に聞く、妖精とは鎮守府全体の補給や補修や増築を行う存在だ、一種の生物機械と呼ばれ、鎮守府そのものとも云われている。 適当な娯楽用の菓子等も妖精が作り、適当に区画内の食料庫に入れ、腐ったらまた妖精が撤去する。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:15:12「はい、だからどうしようかな、と、外で買うのも少し面倒ですし」 「じゃあ妖精に聞きに行こうか」 私は提案する、流石に鎮守府の中枢に行けば妖精とコミュニケーションを取る端末ぐらいあるだろう。 「出来るのですか?」 「出来なきゃコーヒーで我慢だよ」 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:16:07そうして私と電は鎮守府の中枢エリアに向かう、多層都市のコア部へだ。 延々と謎のシリンダーが動きエンジンの駆動音に満ちた空間を下り進む、空もなくどこに居るかもたまにわからなくなる。 「しかし、妖精というのは何なのだろうな?」 歩きながら私は電に問いかける。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:17:10「よくわらかないです、けど、雷さんの言う話……出鱈目まじりなのでしょうけど、面白いことを言ってましたね」 昔の夢にまで出た、あの深海棲艦のなり損ないの顔が浮かぶ。 おぞましく、ドス黒い天真爛漫な少女の顔が。 「どんな話かな?」 大体ろくでもない話だろう。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:18:46「えっと、何でも妖精さんって1つのシステムが全体を動かす生き物みたいなのです。だから個々に自我はなく、それでいてまるで完全な調和を実現している、らしいのです」 「つまりあれはあくまで手足って事で、自我は中枢にあり、か。用途が維持運営だけなら合理的か」 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:20:04規範に沿い動くだけなら、多様性は必要ない。 運用面で柔軟性が難ありだが、当時の技術者はシステムを更新すればいいと考えたのだろう。 「そうなのでしょうか?システムは判断するけど動くのは妖精さんなら、ひょっとしたら個々に自我はあるかもしれないと思うのですけど」 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:23:25「自我を主観、つまり今こうして見て聞いてるもの、と定義すればあるかもしれないね、主観はあくまで観測するだけ感情と隔絶されているわけだ。私はなぜ私なのかがわからない以上、どうともとれる」 電の知的な問いに、私も快く持論を述べる。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:24:51「そうですよね。意思決定が一つの機構としても、受容する器が別とすれば個々別に主観のある可能性もある」 「私がなぜ私なのか、というのは解明されてない以上はね。自我が消えたと思っても、本当は消えてる間主観が寝てるだけなんて事もあるかもしれない」 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:28:43昔趣味で読んだ記事の一つに、脳のある部位を潰せば自我が消えるとの説明と、それに対する学者の反論を思い出し、口にする。 そして、その言葉に電ははっと口を開け何かを思い出したような様子を見せる。 「どうしたのかい?」 私は電に問う。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:29:58「意思と連続性の話を昔、と言っても一週間ぐらい前に雷ちゃんに話した時、そこに深く詰め込んで議論したらすごい機嫌を悪くしたんです。あんな姿を見たのは初めてなのです」 「それは有意義なことを聞いた、今度彼女に出会ったらその話題を念入りに振って虐めるとしよう」 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:30:45「やめてください」 強く、電は言った。 「雷ちゃんは本当に弱い子なのです。賢く強く見えますけど、臆病で、虚栄貼りで、自分を否定されるのが嫌な弱い子なのです。そんな子を虐めて楽しいのですか?」 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:32:20きつい電の言葉、彼女は雷とは姉妹艦だ。だが、彼女は雷を家族でなく、他人、友人と見ている。 雷は素っ気無く扱うが、それでも電に対し多少はコミュニケートを取っているから、わかるものがあるのだろう。 彼女に深入りするのを拒む、臆病な私よりは。 #地獄鎮守府の日常
2013-12-15 22:33:06