編集可能

屋代聡さんyashirosatoruの【専門バカは本当にいるか?-SOMETHING/EVERYTHING】

僕は、「教養」とは知識の多寡ではなく、この「全てについて何かを学び、何かについて全てを学ぶ」姿勢そのものを指すのだと思います。 そして現代の教育にこそ、この言葉が、不可欠だと考えています
コラム yashirosatoru 教養 専門知識 スペシャリスト 専門バカ ゼネラリスト 屋代聡
26
屋代 聡 @yashirosatoru

真理はあなたがたを自由にする。好きなもの:文学、哲学、歴史学/雪かき仕事/批判的精神/私は誰でしょう。敢えてお教え申しません。お教えせずとも、あなたは、いつか私を見掛ける。(太宰治「待つ」)

屋代 聡 @yashirosatoru
【専門バカは本当にいるか?-SOMETHING/EVERYTHING】
屋代 聡 @yashirosatoru
徹夜で仕事した後、今朝がた、ある方から、歴史修正主義とホロコーストにまつわる説明をしてくれというメンションが来ました。一から説明するのは面倒なので、どんな本を読んでいるのですかと尋ねると、何も読まれていないようでした。
屋代 聡 @yashirosatoru
「私の説明はいい。あなたは歴史学の大学教員だ。プロなんだろ?さぁ説明して。できないなら、あなたは専門バカだ!」 こんな返答が返ってきて、それでもちゃんと応対して参考文献まで示してあげたのですけど、こんなに優しい研究者は、おそらく日本で僕1人ですよ…。
屋代 聡 @yashirosatoru
でもこういう、ちょっと残念な方との会話のなかでも、研究者というのは、すぐに思考がフル回転してしまうので、困ったものです(え、僕だけ?)
屋代 聡 @yashirosatoru
ここで「専門バカ」という言葉が出てきていますね。これって、“自分の専門のことしかわからない”識者のことを揶揄しているのでしょう? やはり僕は、「わかってないのかなぁ」と思ってしまうのです。ちょっとまわりくどいけど、歴史学を例に説明しますね。
屋代 聡 @yashirosatoru
例えば、歴史学の教員になるには、大抵、大学院文学研究科に進学するのですけど、この時点で、専門書がすらっと読めるくらいの「歴史」の知識が必要なのです。大学院によっては日本史、東洋史、西洋史、地理学、考古学のうちの2つの専門基礎知識が求められます。
屋代 聡 @yashirosatoru
それに外国語の試験が必須です。たいてい西洋史の先生が作問するから、西洋史に関する専門知識を必要とする問題が出るんですよ(涙)。英文のレベルはそうですね…僕の受けたのは、英検準1級~1級のあいだくらいだと思います。
屋代 聡 @yashirosatoru
これが院試の1次試験です。げ、まだあんのかよ・・・でしょ? あるんですよ笑。 これを突破した人だけで2次試験なのですけど、ここで問われるのはいっそうの専門知識と研究遂行能力(語学)、そして「センス」です。
屋代 聡 @yashirosatoru
専門分野に関していっそう難易度の高い出題がなされます。「いわゆる飛鳥京における発掘成果の射程」「陵墓と記憶」「90年代の言語論的転回」「ターナーによるフロンティア学説とその超克」なんて感じの出題が、いきなりボーンと出る。古代~現代で何が出るか、その日までわからない。(泣)
屋代 聡 @yashirosatoru
第2外国語ないし史料読解の試験は、資史料をその場で読むわけです。何が出題されるかわからない。わからない言葉が出てきても、何だろなぁ、前後からしてこれかな~あれかなぁ~、時代背景からして、この言葉が指すのはあの人かなぁなどと考える。(試験場で、ですよ。汗)
屋代 聡 @yashirosatoru
もうぐったりじゃないですか?でも、これに卒業論文の口頭試問があるんですね(涙)。 受験生の研究史整理、構想、分析、序論と結論の整合性、今後の研究の可能性が判断される。受験勉強の知識なんかでは、全然足らないのです。ここで”知識はあるがセンスはない”とされたら、ハイそれまで。
屋代 聡 @yashirosatoru
かく言う僕も、めっちゃ勉強しました(笑)。4年次は年間350日は大学に行きました。日曜日も。昼・夕食は毎日、学食。 これで通ると、やっと修士1年です。いやぁ、先は長いな笑。 (正直、今、院試うけたらペーパーテストで落とされるかもしれん)
屋代 聡 @yashirosatoru
大学院の5年の研究がどんなものかは省きますが、ここでは「歴史学」について学ぶことになります。修行です。 古代~20世紀までの様々な研究発表を聴き、議論し、自らも発表する。 専門分野が違っても、質問と批判ができなくちゃいけない。 そして山ほど本と史料を読み、切磋琢磨。
屋代 聡 @yashirosatoru
さてその後、大学教員になるには何が要るかといえば、それはまず「研究業績」なのです。どんなに勉強していても、研究業績が数篇なければ、非常勤講師にさえなれないのです。
屋代 聡 @yashirosatoru
では研究業績とは何かというと、国内外を問わず「学術雑誌」に投稿し、掲載が認められるということです。 歴史学の場合、学術雑誌にはランクがあります。①全国学会が出している査読つき学術雑誌②大学の学部が出している雑誌③紀要、です。
屋代 聡 @yashirosatoru
①は思いつくまま『史学雑誌』『史林』『日本史研究』『東洋史研究』『西洋史学』『歴史学研究』『歴史評論』『社会経済史学』など。これらへの掲載をまず目指します。②は大学が出していますが査読のレヴェルに差がありますので、ピンきりです。③は投稿すれば、まず載ります(ただし大学関係者のみ)
屋代 聡 @yashirosatoru
就職するには、①②が複数必要です。最近は、これに加えて博士論文を書いていることが求められます。僕ももちろんそうしましたが、博論の本文字数の下限は、日本語なら16万字(原稿用紙にして400枚)ほどだと思います。 なおたいてい博論は、①②が複数ないと提出資格がありません。
屋代 聡 @yashirosatoru
こうした同業者の厳しいチェックと指導教員の指導を経て、運が良ければ大学に採用されてゆくわけです。あくまでこれは歴史学の場合ですが。 さてここまで書いてくると、大学教員=専門バカはあり得るのでしょうか。
屋代 聡 @yashirosatoru
歴史学でいえば、自分の専門および専門外の「歴史」の基礎知識、隣接諸領域の知識、「歴史学」の知識、語学力ないし古文書読解力または遺物に関する調査法、これに基づく研究史の整理と新たな構想…
屋代 聡 @yashirosatoru
他の研究者の査読に耐えうる表現力、他の研究者が続きを読みたくなる射程を持った研究テーマを選ぶセンスなどを兼ね備えていなければ、論文は掲載されないし、歴史学の大学教員には、いつまでもなれないのです。
屋代 聡 @yashirosatoru
専門バカに見えるセンセイも、実はこれくらい有しているのです。お分かりのように無知・無学ではありえません。「専門」のことしか知らないように見えても、“1つの専門を極めるため”に、実は他領域の玄人の本くらいは熟読しているものなのです。
屋代 聡 @yashirosatoru
1つの専門を極めた人は偉大です。なぜなら偉大なスペシャリストは、必然的にジェネラリストだからです。
屋代 聡 @yashirosatoru
専門バカはいません。 きっとこの国には、ジェネラリストであることを示すのを躊躇っている、シャイなスペシャリストが多いだけです。笑
残りを読む(5)

コメント

北岡修二:S.KITAOKA @regedry33 2014年3月17日
「再びナショナリズムを問題とすべき時節が到来したが、それは不幸にも日本の人文・社会科学の弱体ぶりをまたしても曝け出す時節となったように思われる」(橋川文三『昭和ナショナリズムの諸相』ー筒井清忠の解説)。大切なことは昭和のナショナリズムは橋川にとって単なる批判対象ではなくて<おのれ自身の問題>であったということ。そしてその自省的・自己批判的探求の成果が『日本浪漫派批判序説』となるが、私はこの「右にも左にも強い」歴史家の著書に深い感銘を受けた。
北岡修二:S.KITAOKA @regedry33 2014年3月17日
「右にも左にも強い」橋川は文学にも宗教にも強く、政治・経済の又然りである。そこで次に考えたことは、こうしたユニバーサルな思考はどうすれば獲得できるのか?ということであった。「狂信的右翼病患者」は昭和10年の「天皇機関説問題」で顕在化するが、いま再びこれが大きな社会問題・国際問題化する中、橋川歴史学の方法論に注目したい。
北岡修二:S.KITAOKA @regedry33 2014年3月18日
『日本浪漫派批判序説』の第7章「美意識と政治」を改めて読む。安倍総理はなぜ「美しい日本」と言うのか?その理由は過去の戦争の過酷な現実やそれを生み出した政治を<伝統>や<美意識>にすり替え、論理的な批判の及ばぬ情動の世界へ移し変えるためである。永遠の昨日の美しい思い出、それがネトウヨ的心性の出所では?
黄昏の森@オーカス @akatuki_no_mori 2015年1月14日
「匿名」の屋代聡がどんなに学者気取ろうとそれを証明するものが一切無い以上、自称学者(匿名)から出ることかなわず
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする