茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1193回「文化から、文明へ」

脳科学者・茂木健一郎さんの3月13日の連続ツイート。 本日は、最近少し考えたこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイートをお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、最近少し考えたこと。

2014-03-13 06:49:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(1)アカデミー賞の時も書いたが、私は、以前、アメリカのハリウッド作品があまり好きではなかった。ところが、このところ、飛行機の中などで熱心に見ている。その分、学生時代には熱心に見ていた、ヨーロッパ系の、単館ロードショウっぽい作品を、本当に見なくなってしまった。

2014-03-13 06:50:53
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(2)これはどういうことなんだろうと考えていて、最近思い当たったことがある。私が学生の時に熱心に見ていたのは、例えばタルコフスキーで、当時、彼はまだ生きていて、新作がリリースされていたのだから、今考えると驚きだ。『サクリファイス』なんか、そのロードショーを鮮明に覚えている。

2014-03-13 06:51:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(3)タルコフスキーにせよ、エリセにせよ、ヴィスコンティにせよ、当時夢中になって見ていた映画作品に共通だったのは、豊かで奥深い「文化」の香りだった。ここに、文化とは、その土地、言語、あるいは人に固有の事情と言ってよいだろう。タルコフスキー映画には、彼独特の感性、

2014-03-13 06:54:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(4)世界観、ものの味方などがある。メタファーとして鏡の使い方、水、空中浮遊、音の響き、時間の流れ。そんなリズムに引き込まれた。『ストーカー』では、異常な事態はほのめかしとしてしか起こらないし、『惑星ソラリス』では無重力の時間が至福の記憶として残る。しかし、そんな文化が

2014-03-13 06:56:17
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(5)もはや映画鑑賞者に関連性(relevance)を持たない時代に突入してしまったのだと、私は感じる。最近のハリウッド作品に感じるのは、固有の文化ではなく、むしろ「文明」(civilization)の力。エンドクレジットを見ていると、気が遠くなるほど多くの人が関わっている

2014-03-13 06:57:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(6)CGや、Postproductionや、carpenterや、modelingや、本当に沢山の人たちが映画作りに関わり、いわば物量作戦で、一つの世界観を創り出す。働いている力学は、基本的に、googleや、twitterや、facebookの持つエネルギーと同じである。

2014-03-13 06:59:24
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(7)Toy StoryやMonsters INCは良い映画だったが、そこで働いているのは、基本的に「文明」の力だったような気がする。アメリカ固有の「文化」は、むしろ、地球時代に大きなマーケットを得る上では邪魔にすらなる場合も出てきているように思う。

2014-03-13 07:01:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(8)映画において、「文化」から「文明」へのシフトが起こっている。今回のアカデミー賞で、宮崎駿さんの『風立ちぬ』は受賞ならず、『アンナと雪の女王』が受賞した。前者は個人の風合いが届く文化だが、後者は大量の人員を動員して技術のかたまりの文明である。

2014-03-13 07:03:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

ぶぶ(9)もちろん、文明を起動するには「種」としての「文化」が必要なわけで、文化が全くなくなるというわけではない。宮崎駿さんの天才的職人魂がキモのスタジオジブリ作品は、アメリカ発のコンピュータアニメ映画を前にすると、大切な何かを未来に伝えるタイムカプセルのように思えてくる。

2014-03-13 07:05:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート1193回「文化から、文明へ」でした。

2014-03-13 07:05:56