ザ・ビートルズ"A Hard Day's Night" (映画）新装版

【更新履歴】
■新［14.06.07 ツイート追加］
［14.04.22 23:53 ツイート追加］
［14.04.07 00:25 ツイート追加］
［14.03.21 21:30 ツイート追加・一部修正］
［14.03.18 00:10 加筆・訂正］
［14.03.16 14：05 改稿］
［14.03.16 01：50 補足・訂正］（謝辞：マルニッチ氏）
［14.03.16 00：25 加筆］

【本作製品化についてのバックグラウンド】

映画"A Hard Day's Night"の版権は、79年に映画会社ユナイテッッド・アーティスツが本作のプロデューサーであったウォルター・シェンスンに売却した。それ以来、本作品は、グループ自身（アップル・コア）が権利を所有しない唯一のビートルズ映画となった。過去には（80年代前半から90年代後半）この映画のソフト化の際にアップルも協力したこともあったが、ミラマックスが発売権を獲得してからは無関与の状態が続いていた。（ミラマックスは2002年に新リストア版を劇場公開するとともにDVDでリリースした。）

本作の音声（楽曲）は、オリジナルはモノラルであり、過去のリリースでステレオ音声が使用された際には、その時の製作・販売会社が、ステレオ音源の権利を持つEMI（当時）にライセンス料を払って音声を差し替えたと考えられる（推定）。（映画のオリジナル・サウンドトラックであるモノ音声はシェンスンに使用権があり、EMI等の許諾は不要であった。）

82年にユニヴァーサルがアメリカで本作をリバイバル上映した際には音楽がステレオ・ミックスに差し替えられた。その後84年にMPIがホーム・ビデオ／LD化した際には元のモノラル・サウンドトラックが使用された（フォーマットによっては擬似ステレオ化したものもある模様）。現時点では、このMPI版が純粋なモノ音源が使用された唯一の製品となっている。しかし残念ながら音質はあまり芳しいものではなかった。
87年にはクライテリオンが販売権を得、一般消費者向けビデオ／LDとしては初めてステレオ音源が使用された。その後再びMPIが発売元となると同社もステレオ音声を使用し、95年にビデオ／LDとして、そして97年には初めてDVDとしてリリースがなされた。
また、MPIが95年に発売した本映画のドキュメンタリー作品"The Making of A Hard Day's Night"では、初めてEMIのマルチトラック・テープの使用許可が出た。映像と共にリストアを担当したロン・ファーマネクがリミックスを行った音源が収録された。この作品では"And I Love Her"が元の映画と同様にポールの歌をシングル・トラックにした新たなステレオ・リミックスが作られるなど、過去の音源・映像の復刻で定評の
あるファーマネクのこだわりが光っていた。しかし大半の楽曲が断片的であったりコメントのBGMとして使われており、せっかくのリミックスが不完全な形でしか聞けなかったのは残念であった。
このように、この時期にはアップルとEMIも本作の製品化に協力し、曲のステレオ・ミックスや大元のマルチトラックまで使用を許可していた。
（当時、MPIは"Help!"、"Magical Mystery Tour"、"The First US Visit"などの映像ソフト化でアップル・EMIとは密接な協力関係を築いていた。）

その後、映画の販売権がミラマックスに移動するとステレオ音源は使用されなくなり、モノ・サウンドトラックから擬似ステレオ化・擬似サラウンド化した音声が使われるようになった。ミラマックスがEMIやアップルとステレオ音源の使用について交渉を行ったのかどうかはリサーチできておらず不明である。

2009年になると同社はカナダでのみ初めて本作をブルーレイとして発売した。当然これにもアップルやEMIは全く関知しておらず、あまり宣伝もされなかったため、一部のファンに認知されるに留まった。2012年に"Yellow Submarine"がアップル／EMIによって再発された際には、ビートルズ初のブルーレイ化とも喧伝されたが、それは正確ではない。ビートルズの公式映像作品が初めてブルーレイのフォーマットで発売された
のはミラマックスによる"A Hard Day's Night"である。

何年か前に映画の版権は故シェンスンの遺族が売却した（ブルース・カーシュ氏が購入したと言われる）。アップルが現在の権利者とどのような交渉・契約をしたのかはまだ調査できていないが、その結果、今回初めてアップル自体が主体的に関ったリイシューが実現しようとしている。（注：今回のリイシューへのアップルの関与の状況は筆者の考えていたのとは異なっている可能性あり。）

アップルが加わったことでユニヴァーサル（現在の音源保有者）が所有する楽曲のマルチトラック・テープが再び利用可能となった。ビートルズの他の映画はマルチトラックからのステレオ・ミックスやサラウンド・ミックスが作成され、オリジナル・フィルムがクリーンアップした状態でリリースされている（ただし"Let It Be"については現時点で未発表）。しかしビートルズ史そしてロック史においても極めて重要である本作の楽曲が、ようやくマルチトラックからリミックスされて初めて映画本編に使用されることになる。これは画期的なことである。映像についても、オリジナル・ネガティブからのリマスターが行われており、当映画の決定版がついに登場するものと期待される。

（以上、筆者の調査と推定による。製品については米国市場での状況。誤りご指摘や追加情報を乞う。）

◆音声を担当しているジャイルズ・マーティンがこの映画のリストアに関わっていることをほのめかす。

◆非公式なリリース情報、そしてアメリカの映画祭での上映が告知される。

◆英国のNMEが新版公開・発売を報道

クライテリオンが商品詳細を発表（3月17日）。以下が概要。既報と違って発売日が6月24日（おそらく北米）となっている。

フィルム：4Kディジタル・リストア（リチャード・レスター監督が承認）
音声：5.1サラウンド、モノラル（アンコンプレスド）、DTS-HD（ブルーレイのみ）
アスペクト比：1.66:1→ 1.75:1 に表示が修正
発売日：6月24日
オーディオ・コメンタリー：様々な出演者（ブルーレイのみ）
エッセイ：ハワード・ハプトン
カバー・デザイン：ロドリゴ・コーラル

ボーナス映像：
■In Their Own Voices（新）
64年のビートルズのインタビュー。舞台裏映像・写真を収録

■You Can’t Do That: The Making of “A Hard Day’s Night”
95年発売のドキュメンタリー

■Things They Said Today
02年発表のドキュメンタリー。レスター、ジョージ・マーティン、アラン・オーウェン（脚本）、ギルバート・テイラー（撮影監督）他が出演。

■レスターの初期監督作品について（新）
レスターへの新たなインタビュー。（ブルーレイのみ）

■Running Jumping and Standing Still (1959)
レスター監督の初期短編映画。（ブルーレイのみ）

■Anatomy of a Style（新）
レスター監督の編集作業について。（ブルーレイのみ）

■マーク・ルーイスンへのインタビュー（新）
（ブルーレイのみ）

■アウトテイク映像
（ブルーレイのみ）
※3/24時点でクライテリオンの商品情報から削除された

■トレイラー映像

リスト価格＊：ブルーレイ・DVDコンボ $39.95、DVD $19.95
＊小売販売価格はここから値引きされるのが通例

情報：http://www.criterion.com/films/28547-a-hard-day-s-night

◆アップルとユニヴァーサルの関与について