【twitter小説】水中に沈む花#2【ファンタジー】

スキュラの住む観光都市を訪れた二人の観光客。彼らはこの街の名物を観光しに来ましたが、二人はそこでアクシデントに見舞われます。小説アカウント @decay_world で公開したファンタジー小説です。この話は#4まで続きます
ファンタジー 減衰世界 Twitter小説
rikumo 672view 1コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:20:13
     レッドはかなり焦りを感じてきた。手足が思うように動かない。もちろん着衣水泳という状況だったが、それにしても水が重い。スキュラの娘はもう眼前に近づいている。二人の周辺の水は鮮血のように赤くなっている。決して夕日の光のせいではない。 31
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:25:11
    「ぶはっ、お、お嬢さん! これに掴まれ!」  レッドはくわえていたロープを手に掴みスキュラの娘のほうに伸ばした。娘は何故か迷ったような表情を見せたが、ロープに手を伸ばしその先を掴んだ。 「いいぞ。フィル! 引いてくれ!」 32
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:28:56
     岸の上にいるフィルは思いっきりロープを引っ張る。ロープにつかまる二人はゆっくりと湖の中心を離れていく。その間にもレッドは呼吸が苦しかったが、中心を離れるにつれその阻害と水の重さは和らいでいった。 33
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:33:01
     それから先は何の障害もなく二人は岸辺に辿りつくことができた。水面と街の土台の間には段差が大きかったが、下に続く階段があったので二人は街へと戻ることができた。レッドは下からロープを束ねてフィルに放り投げる。 34
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:35:29
    「いや、何だったんだ……俺は泳ぎは得意なはずだったんだがな。お嬢さん、大丈夫かい?」  階段を上りながらレッドはスキュラの娘を見上げた。娘は大分若いスキュラだったが、スキュラという種族はかなり身体が大きいのだ。 35
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:43:43
    「ありがとう……ございます」  スキュラの娘はどこか悲しそうな声で返した。まるであのまま溺れていれば……そんな未練を感じさせた。運悪く生き残ってしまった……そんな感情。 「どうしたんだい、いったい……ここは普通に泳いではいけない所だろう」 36
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:46:58
     フィルは階段から上ってくる二人を見て、どこか不思議な違和感を覚えた。あんなに赤い水を泳いでいたのに、二人は普通の水にぬれているようにしか見えなかったのだ。もちろん、岸辺の近くの水は透明だったので洗い流された可能性もあるが。 37
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:50:05
     この湖は聖域でみだりに泳ぐなど考えられないことであったが、目撃者は娘とフィルとレッド、そして通りすがりの観光客しかいないようだった。幸運なことに、スキュラの官憲などに見つかることはなかった。見つかっていたら少々面倒なことになっていただろう。 38
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:55:00
     レッドはベンチに座り、スキュラの娘を手招いた。娘は近寄ると、レッドは急に手を繋いでくる。驚く娘だったが、レッドはポケットから空いている手でライターを取り出すとウィンクした。そしてライターを点火させる! 39
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-27 19:58:18
     次の瞬間、ずぶぬれだったレッドと娘の身体は一瞬にして乾いてしまった! 「便利だろう? 雨に濡れたときとか役立つんだ……さて、娘さん。何をしようとしていたのか聞かせてくれないか? 悩みなら相談に乗るよ」 40
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 16:32:05
    「わたしは……メギッサといいます」  その娘は理由を話し始めた。フィルとレッドはベンチに座りながら黙って聞いている。メギッサの話しによると、湖は確かに赤化しているというのだ。つまり、水中花の花は咲かない。ただしこれには解決策があった。 41
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 16:36:40
     赤化が始まった頃、不思議な囁きがスキュラの首長に聞こえ始めるというのだ。赤化を止めたければ……生贄を捧げろと。これに従わなかった年もある。その時は湖が真っ赤に染まり、水中花は咲かなかったというのだ。 42
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 16:39:49
    「今年もまた赤化が始まりました。自治体は……観光収入が欲しいから、生贄を捧げることにしたのです。その生贄は……わたしの姉です」  メギッサの姉は病弱で、いまも床に伏せっている。そのため生贄として選ばれてしまったというのだ。 43
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 16:42:44
     メギッサは姉を助けるため、自分が代わりに湖に飛び込めば……そう思って行動に移したらしい。ただ、死ぬときになってやはり苦しくなってしまったのだ。そこを助けられたという話だ。 44
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 16:45:56
    「本当は生贄なんてやりたくないんです。でも、誰も赤化の原因とか囁きの正体とかを突き止めることはできませんでした。グレイソフィア神の怒りだと……神聖な水中花を商売の道具にする我々への罰だとかいろいろ言われていますが……」 45
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 16:49:21
    「神の怒りねぇ……」  フィルは思案した。神々は、この濁積世の時代においてほとんどの力を失っている。その残された力を維持するため、信者に生贄を要求する神は珍しくなかった。ただ、今回の件についてはおかしい点がある。 46
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 16:56:26
     第一として、スキュラの神であるグレイソフィアが同族の生贄を欲することがあるだろうか。第二として、水中花を神聖なものとしているグレイソフィアが、その水中花を苦しめるような赤化現象を起こすだろうか。花を咲かせないというのは冒涜ではないだろうか。 47
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 17:01:30
    「ま、僕らにまかせてよ。こう見えて、いろんな事件を解決してきたのさ、僕らは。お嬢さん、美しい君が湖の藻くずに消えるなんて悲しすぎるよ」  レッドは甘い言葉でメギッサをなだめていたが、フィルは無視した。しかしフィルとしても、水中花を見てみたい話ではある。 48
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-28 17:07:45
    「フィルよう、そう心配するなって。俺にもちょっと気になることがあるんだよ」  そう言ってレッドは、自分のシャツの胸ポケットに手を入れたのだった。 49
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-29 16:46:22
     レッドは胸ポケットを探っていた。そして手を取り出し、指先を見る。 「見てみろ、フィル。さっき気づいたんだが……」  その指先には赤い砂粒のようなものがついている。それはよく見てみると……動いているのだ! 50
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-29 16:53:43
     フィルは腰のポシェットから小型ルーペを取り出し砂粒を確認する。それは小さいダニのような生物に見えた。潰れているものはいないのでかなり硬いのだろう。手足は短いが鰭のように発達している。 51
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-29 16:59:39
    「これがあの赤い水の正体さ。恐らく、湖の中心に近づくとこいつが一斉に群がって溺れてしまうんだ」  これは自然現象なのだろうか、それとも誰かがこの生き物を湖にばらまいているのだろうか。 52
  • 減衰世界 @decay_world 2013-10-29 17:03:14
    「この生物は昔からいるのかい?」 「いえ、初めて見ます……」  メギッサもルーペで注視してみるが心当たりはないという。奇妙なことに、この現象が発生するのは水中花が咲くときだけなのだ。 53

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