チャイナ・シンドロームはありえない

映画のタイトルで有名になった「チャイナ・シンドローム」について、実際にはそんなことはありえないというFlying Zebra氏による解説です。 ただし、ジェーン・フォンダにジャック・レモン、マイケル・ダグラスといったスターが出演したこの映画は名作でした。
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Flying Zebra @f_zebra

昔、といっても1979年のことですが、アメリカでチャイナ・シンドロームという映画が作られました。原子力発電所のメルトダウンを扱った映画で、劇中ではアメリカ映画らしく破局的な大惨事は寸前で回避されます。

2014-03-22 22:46:54
Flying Zebra @f_zebra

タイトルの意味は、もし大事故が阻止できなければ、溶融した核燃料が地面を溶かしながら地球の裏側の中国(実際にはアメリカの裏側はインド洋のあたりですが)まで達したかもしれない、という一種のブラックジョークです。

2014-03-22 22:48:19
Flying Zebra @f_zebra

発電用原子炉の燃料にそんなエネルギーはありませんし、地面に穴を掘り続けても地球の裏側に出ることはできませんが、娯楽映画なのでそこは厳密なものではなく適当なイメージで名付けただけでしょう。ところが、この適当なタイトルはその後広く知られることになります

2014-03-22 22:51:27
Flying Zebra @f_zebra

映画が公開された直後、スリーマイルアイランド原子力発電所で本当にメルトダウン事故が起きたのです。当然ながらこの映画も大きな話題となり、混乱する報道の中でタイトルが一人歩きし、本当に核燃料がどこまでも溶け進んで行くようなことが起こりうるという誤解も生まれました。

2014-03-22 22:52:59
Flying Zebra @f_zebra

実際には、炉心から溶け落ちて形状が崩れ、不純物を含んでしまった溶融燃料は臨界を保つことはできず、原子核崩壊によって指数関数的に発熱量が小さくなってしまうため、原子炉容器からは溶け落ちても、原子炉格納容器を突き抜けてしまうことはまずありません。

2014-03-22 22:55:39
Flying Zebra @f_zebra

古い設計の原子炉など、格納容器の床厚が薄いものでは計算上は溶融燃料が格納容器底の鋼板に達する可能性が否定できないものがあり、アメリカではそうした原子炉は認可更新(40年→60年運転)の際に床厚を増す工事をしています。

2014-03-22 22:57:19
Flying Zebra @f_zebra

仮に古い原子炉で理想的(というのもおかしいですが)な条件が揃って溶融燃料が格納容器の底を抜けた場合も、その先には更に厚いベースマットコンクリートがあるため、溶融燃料が地盤まで達することはあり得ません。

2014-03-22 22:58:45
Flying Zebra @f_zebra

今頃そんな古い話を持ち出したのは、使用済燃料プールについての誤解に似たような構図があるように思ったからです。今現在福島第一4号機に大きな危険があると思っている人はそれほど多くないでしょうが、事故当時に大きなリスクがあった、と勘違いしている人は少なくなさそうです。

2014-03-22 23:00:32
Flying Zebra @f_zebra

使用済燃料プールのリスクについては既に散々語ってきましたし、Togetterのまとめもいくつも作って頂いているのでここでは繰り返しません。使用済燃料に一定のリスクがあるのは当然ですが、それが他に比較して大きなものではない、とういことはあまり理解されていないようです

2014-03-22 23:02:08
Flying Zebra @f_zebra

福島第一原子力発電所4号機に関しては使用済燃料プールは既に大部分片付いた問題ですが(そこすらも誤解している人もそれなりにおられるようですが)、ここで誤解を残したまま関心がフェードアウトしてしまうと、後々よろしくない影響を与えるのではと危惧しています

2014-03-22 23:04:09
Flying Zebra @f_zebra

「チャイナ・シンドローム」という言葉が中途半端に誤解を含んだまま残っていたために、福島の事故でも溶融核燃料が地下水脈に達して水蒸気爆発を起こす、といったあり得ないシナリオを真剣に心配した人が少なからずいたようです。そのような誤解は、誰にとってもためになりません

2014-03-22 23:05:37
Flying Zebra @f_zebra

原子炉の再稼働に現実味が出てきた今、原子炉を運転するリスク、冷温停止で維持するリスク、そして原子炉を動かさないことによるリスクについて、誤解や理解不足を残したまま推進だ反対だと感情的に対立するのは好ましくありませんちらの立場に立つにしろ、正確な理解は不可欠です。

2014-03-22 23:07:22