【紫煙天龍】追悼、工藤俊作

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よっしゃ午後0時！！メシだメシ！！サクッとメシ食って喫煙所で他の連中と一服しようぜ！！

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ふぅ、今日の昼飯も美味かった…ん？あれは雷か？コソコソなにしてやがんだ？怪しいし面白そうだからちょっと追ってみるかね

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「電ー！ごめん、待った？」「雷遅いのです、お昼食べたらすぐって言ったはずなのです」「わかってるわよ、しれーかんと話してたら遅くなっちゃったの」「とにかく早く行くのです」なんなんだ？

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着いて来てみたら、ここは鎮守府の裏庭じゃねぇか。こんなとこに何が…ん？雷電姉妹がしゃがみこんで何かしてる？さては猫でも拾って来たのか？

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「おい！」「ひゃっ！？」「はわわわわっ！？」「フフフ、怖かったか？ともかくお前ら何してるんだ？こんなとこで…あん？」ボロっちい板が土を盛って立ててあった。『深海棲艦之墓』とか書いてある。「お前らこれはなんだ？」「えっと…」「天龍さん！電が話すのです！」

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なんとなくで最寄の喫煙所に移動した。相変わらず『電がイナズマメンソールを吸ってる』って絵は面白いぜ。「で、電。アレはどういうことだ？」「はい…実は、アレは電が秘書艦だった頃に司令官さんにお願いして作った物なのです。たまにお花やお菓子をお供えに行ってたのです」

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「まぁお前は普段が普段だからってのもあるから納得出来るが、なんで雷まで？」「私はね…」「おれが話そうか？」提督がヒョコッと首を突っ込んで来た。そういやあそこは執務室前の廊下の窓から見える場所だったか？

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「1942年、2月末から3月頭にかけてスラバヤ沖海戦が勃発。電は3月1日にエクセターの乗員376名を、雷は3月2日にエクセター・エンカウンター・ポープの乗員422名を救助している。特に雷の話は有名で、当時救助されたフォール郷という人物が自伝に当時のことを書いてる」

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「当時単艦行動中だった雷は漂流するイギリス兵を発見。艦長だった工藤俊作は危険な海域にも関わらず敵兵の救助を命令した。更にボロボロのイギリス兵の様子を伝えられると『一番砲だけ残し、総員敵溺者救助用意』と帝国海軍史上極めて異例の号令をかけた」

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「しかし相手は紳士の国イギリスの兵士だ。怪我人と将校・士官と優先順位を自分達で決めて絶対に日本兵の呼びかけに応じなかった。挙句怪我人達を救助した後も…自分達の船の沈没から20時間近く漂流してたんだ、自力で上がるどころかロープを掴んだ瞬間沈んでった兵士もいたそうだ」

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「勿論日本兵だって黙っちゃいないさ。目の前で沈んでいくイギリス兵の為に海に飛び込んで直接ロープを巻き付けてやった、それを見た工藤艦長も『使える物は片っ端から使え』と命令したそうだ。そっからは敵も味方も関係無し、海の男同士の生きるか死ぬかの救助活動が始まったってわけだ」

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「救助された生存者は重油なんかを日本兵に拭き取ってもらって、綺麗な服と食糧、真水まで与えられたそうだ。」「信じられねぇな、敵の為に貴重な真水まで…」「無論救助の為に船を動かす燃料も使った、資源確保が難しかった大日本帝国の船がだぜ？とんでもない事件だよ」

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「こっからが泣ける話だ。普通なら救助されたとは言え立場は捕虜、船の一番酷い倉庫にでもぶち込まれると思うところだが、士官達は前甲板への集合を命じられた。そこへ現れた艦長・工藤俊作はこう言った、流暢でしっかりした英語だったそうだ」「何て言ったんだ？」

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「You had fought bravely. Now you are the guests of the Imperial Japanese Navy.」

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「併せて『英国海軍は尊敬してるがイギリスが日本に戦争しかけたのは愚かだと思ってる』とも言ったらしいがな。」「いや待て、英語はどういう意味だよ？」「ああすまん。『貴官らは勇敢に戦われた。現在、貴官らは大日本帝国海軍の名誉あるゲストである』」ってとこかな？」

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「なんでまたその工藤って艦長はそこまでの待遇を敵軍兵士に？」「単純な話さ、『武士道』って奴だよ。太平洋戦争開戦直後、やはり沈没した英国の戦艦が味方の駆逐艦に乗員を救助されているが、日本の航空隊が空に居たにも関わらず攻撃しなかった。むしろ『頑張れよ』と応援さえしていたそうだ」

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「戦争ってのは大体国と国の意見の食い違いの喧嘩だ、民族紛争はそうでも無いかもしれんがな。大本営命令が無い限り、沈没した船の乗員にしろ捕虜にしろ、虐殺なんてことは無かったってわけだ。日本海軍の武士道、それに従っただけの話さ。」「武士道か…」

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「その後救助されたイギリス兵はオランダの病院船に引き渡されて、捕虜収容所に連れてかれた。そこでもただ束縛されるとかいうことは無かったらしいが、ここからはそこまで重要でも無い。重要なのは、戦場のど真ん中でこの救助が行われたことだ。」

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「戦場のど真ん中、いつ潜水艦の魚雷を受けたり飛行機の機銃を受けてもおかしくない、運が悪ければどっかに生き残りの船が居て砲弾を浴びせる準備をしてるかもしれない。増援やSOSを受信した敵国の艦隊が現れるかもしれない、そんな中船を止めて400人救助なんて狂気の沙汰だ。」

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「しかし、工藤俊作と雷の乗員はそれをやってのけた、それどころかおれ達今を生きる日本人に大和魂と武士道を教えてくれた。こうなったら電はともかく雷の頼みを無視は出来ねぇよなぁ。」「なんだ、あの墓モドキは雷の頼みだったのか？」「電の提案だったんだが、雷がやたら食い下がったんだ」

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「おれ自身工藤艦長の話を読んだ時は涙が出たね、こんな素晴らしい軍人が居たにも関わらず、義務教育で『日本は悪いことしてきた』なんてホラ話を吹き込まれて生きてきたんだからな。おれが今の仕事に誇りを持って臨めるのは工藤艦長のおかげみたいなもんだ」提督がたばこをもみ消す

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「あの深海棲艦の墓は、工藤艦長への尊敬の念の表れとして、おれが全面的に許可した物だ。その内工藤艦長の銅像も作りたいんだけど、この辺は大本営が五月蠅そうだからな、でも肖像画の一枚くらいはすぐ用意できるかもしれん。ともかく雷と電はそれまであそこで我慢しててくれ、な？」

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「私は別に、銅像でも肖像画でも、艦長への尊敬の念がこもってるならなんでもいいわよ？」「電はあのままでもいいのです、電にとってアレは沈んだ深海棲艦さん達の慰霊碑なのです」「その慰霊碑、戦争が終わったらもっと立派にしてやるからな」提督が電の頭をくしゃりと撫でる、あ、不味い展開だ

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「あっ！しれーかん！私にもしてよー！」「聞き捨てならないな、司令官。響にもお願い出来るかい？」「ちょっと司令官！私の妹達にセクハラ？」響と暁はどっから現れたんだよ…「だーうるせぇなぁもう！お前ら落ち着け！今日はおれがたばこ奢ってやる！！JPSな、JPS！」

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あーあ、酒保に連れてかれちまった。ああなるとたばこ1個づつなんかじゃ済まないぞ…あっ、長いこと付き合ってくれてありがとうな？工藤俊作艦長のことが知りたい人はここを読んでみてくれ http://t.co/CnPZwURJCp 長々とお付き合いありがとうな