ほら、見えています。こうして。大きな輝きがふたつ。蒼黒を纏いながらも白光を秘めた輝きがひとつ。絶対の黄金であるはずなのに黄金ならぬ輝きがひとつ。
2014-03-27 23:37:17到達されざる絶対不変。可能性として到達し得る、ひとのわざの窮極を導いたかたち。であればこそ砕かれるはずのない蒼黒の巨体はしかし、右腕を失っていた。半ば残骸と化した右腕は、今、海面へと落ちて巨大な水柱となる。
2014-03-27 23:45:03『なるほど。確かに』 巨神、偽神の内側に座して彼は言った。《万能(ウニヴェルサーレ)》と称された彼をして、ある種の感嘆を湛えた声だった。
2014-03-27 23:46:37雷電纏う鋼拳も、肩部から放たれる振動も、展開した頭部から押し寄せる黒の奔流も、伸ばした右手も左手も。「あれ」には届かない。ある程度の損害(ダメージ)を与えはしたろうが、仕組みが違う。原理が違う。
2014-03-27 23:49:23偽なるものではない。真に、確かに、「あれ」は外なるものだった。蒼黒の巨人の眼前に立つ──否、上空を覆い尽くすかの如く広がった、絶望の空。巨人の瞳を通じて映像情報を認識するだけで負荷があるのは、発狂する時空の影響か。
2014-03-27 23:51:20『……古き支配者よ。地球王たる貴方がこんなものを持ち出すとは。余程のお考えではあるのだろう。だが』男は告げる。吹き飛んだ巨人の右腕の「痛み」を我が身のものとして受け止めながら。『海を選んだのは失敗だ。ローゼンクロイツ!』
2014-03-27 23:55:36海が揺れた。何か、揺れ動き、蠢く巨いなるものの気配が在った。蒼黒の巨人よりも尚巨いなるそれは、夜空を埋め尽くす世界機械にも等しい圧力ではあった。が。
2014-03-27 23:56:54世界機械は、瞬間、拡大していた。拡大変容(パラディグム)。蒼黒の巨人の「奥の手」たる海より来たる何者かの圧力と、世界機械の圧力とが衝突し、そして──
2014-03-27 23:57:58【設定メモ】1909年4月、パリ大学の碩学マリ・キュリーは某財団の管理する万能王の遺産の一部を相続したと噂されているが、相続手続の翌日にとある少年と「初めて」出会い、「詐欺だわ」と叫んだという。
2014-03-28 19:44:46「そこ、大きな段差があるから。気を付けなさいな」 女が言った。黒と白の女だった。黒い瞳、黒い髪、黒いドレス、抜けるように白い肌。口元には淡い微笑み。
2014-03-28 22:46:06「忠告は有り難いが、子供へするように言うものではないよ」 少年が言った。利発と呼ぶには深淵に過ぎるほどの知性を瞳に湛えた少年だった。幼いながらに紳士的な気配を纏っているのは、服装が貴族の子女といった風情である故か。
2014-03-28 22:48:18「生意気な物言いをしないの。あなたは間違いなく、幼い子供であるのだから」 「記憶は継続しているはずだがね」 「それでも。あなた、生まれてまだ間もないのだから、ほら、あんよは上手。段差に気を付けて」 からかうように女の声が僅かに弾む。 少年は、やれやれ、と肩を竦めて。
2014-03-28 22:50:24「もう少し、優しく接して欲しいものだよ。愛しいリザ。私はこれでも大仕事をひとつ終えたばかりなんだ」 「手酷い負け方をしたように思うけれど」 「世界機械を相手にあそこまで出来たのだから上出来さ。それに、私はそもそも巨大異形戦闘(ギガンティックストーム)は得意ではないんだ」
2014-03-28 22:52:34