ウォルフレン『日本/権力構造の謎』まとめ

カレル・ヴァン・ウォルフレン 『日本/権力構造の謎』まとめ
3
H.Takano @midwhite

過去四半世紀以上に渡り、無数の新聞記事、雑誌、学術論文は、日本が岐路に立っていると書き続けてきた。これらの報告が暗に示唆しているのは、日本は変わらなければならないという考えである。それも、日本人の日本人観や世界に対する態度の根本的な変化だ。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-18 19:48:41
H.Takano @midwhite

60年代には、日本の若者が影響力を発揮できる地位に達すれば、状況が変わると信じられていた。また労働者の要求は社会・政治構造に劇的な変化をもたらすはずだった。70年代には企業が海外に派遣した駐在員の帰国が日本を国際化すると考えられていた。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-18 19:53:02
H.Takano @midwhite

日本の権力構造を記述するためには、西欧の政治学の語彙をすっかり書き換えてしまいたい衝動に駆られる。まず国家という概念を検討しよう。最近は国家を政府や民族と区別しない傾向があるが、この差異を明確化することが、日本を考察する際に解明の鍵となる。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 12:51:35
H.Takano @midwhite

民族国家とは、共通言語を使用し、他とは異なる独自の文化を有すると定義される。この意味では、日本は明らかに1つの国である。国家とは、その国土の究極的な統治権を有し、権力の最高裁決者である。この時、日本の場合、どこに国家があると言えるのだろう。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 12:55:25
H.Takano @midwhite

公式には議会制民主主義国とされ、主権は国民にあり、立法権は公選された代議士が構成する国会両院にある。しかし、彼らが憲法の規定通り日本の最高裁決者であるとはとても考えられない。他にも権力の所在が想定と異なる国は多く、これはまだ驚くに値しない。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 13:00:09
H.Takano @midwhite

本来そこに権力があると想定されているはずの機関に、実際は権力が無いという国は数多く存在する。しかし、その場合には、実際の権力を握る別の機関か、一人の人物、或いは集団がいると考えて間違いない。ところが、日本には明確な権力集団がいないのだ。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 13:02:34
H.Takano @midwhite

国会両院の他に国家の中核として権力を持っているらしく見える組織は、官僚と大企業である。しかし、この両者にも究極的な権力は無い。ボスは沢山いるが、ボスの中のボスは存在せず、他を統率する支配力のあるボス集団があるわけでもない。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 13:05:29
H.Takano @midwhite

日本は欧米諸国の他では最も民主主義的な体裁が整っている。ところが自由選挙の結果が1955年以来、一党支配となって現れている。この政治家の集団は自由民主党と呼ばれているが、政治的徒党である派閥の連合体を1つの政党と呼ぶのは完全な誤称である。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 13:22:15
H.Takano @midwhite

この自民党には、政党にあるべき草の根レベルに達する組織もなく、党内の指導権の継承についても全体的に合意された規則も無い。さらに政党としての明確な基本的政治理念にも立脚してもおらず、党員数も150万であったり300万であったり極端に増減する。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 13:27:44
H.Takano @midwhite

自民党の権力の維持を可能にしたのは自党に有利な選挙区の改変や維持だった。彼らは自民党に必要な全投票数の48%を農村地域から得ており、基盤整備のために金をばらまき、それが無いと生きていけなくした上で、自民党に投票すべきと地方の有権者に訴える。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 13:41:34
H.Takano @midwhite

彼らの選挙運動に手を貸すのは農協や、夥しい数の建設会社、そしてその下請け企業である。さらに自民党の絶対多数は、農村地区の1票が都市部の3票に値するという不公平な票の重みの上に立つ代表制によって立場を保証されている。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 13:45:35
H.Takano @midwhite

自民党が政権担当能力を備える唯一の党であると容易に定着させられるのは、第二党である社会党のおかげだ。彼らの非武装中立の擁護と反米一辺倒の立場とイデオロギー的な味気ない教理論争は、一般の有権者をひきつけないための方策とすら思えるほどだ。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 14:40:19
H.Takano @midwhite

自民党は政権党と呼ばれるが、これも誤りである。彼らの発案で法律が制定された例は少なく、国家の運営に相応しい権力の行使は観察されない。彼らの実力は、大きな私的特権と、支持者の要望を官僚に伝達する能力に集約される。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 23:41:21
H.Takano @midwhite

自民党の総裁でもある日本の首相は、非力な国会に君臨しているのだから強い権力を行使できるはずだが、実際には衆議院の解散権の他に具体的な権力を持っていない。行政権を有するはずの内閣についても、閣僚は象徴内で殆ど影響力を持っていない。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 23:45:31
H.Takano @midwhite

殆ど毎年のように内閣改造が行われるため、大臣には高級官僚を上回るほど詳細な情報を集める時間が無い。大臣が飽くまでも正式の規定通りに権力を行使することにこだわれば、侮りがたい官僚のサボタージュに出会うことは必定であろう。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 23:48:07
H.Takano @midwhite

では、日本の国家権力を握っているのは官僚なのだろうか。確かに官僚は、特に大蔵省、通産省、建設省、郵政省の官僚は、理論的に認められた以上の権力を行使している。しかし、官僚の中で実権を握っているのは誰かと問うと、また分からなくなってしまう。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 23:53:04
H.Takano @midwhite

各省庁の次官は、その省庁として反対の事案を決して譲らない。官僚間の強烈な対抗意識のせいで、政策決定における全般的な支配力を握る官僚は現れてこなかった。そのせいで国の統一政策の形成は妨げられる。全体として、官僚の権限はどこかで制限されている。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-19 23:56:40
H.Takano @midwhite

もう1つの主要な権力集団は、陰謀論者が好んで引き合いに出す財界である。しかし、確かに経済関係省庁の官僚や自民党が産業拡大を最大目標に掲げる限り、企業は政治的風土の中で優遇されてきたが、かと言って大企業の経営者が日本の陰の支配者にはならない。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 00:00:56
H.Takano @midwhite

周知の通り、経団連を筆頭とした経済界の連合団体は強大な力を持っている。しかし彼らが企業家を代表していると考えるのは誤りである。彼らは官僚と手を結び、保守合同を実現して自民党の発足に尽力し、また教育政策にも決定的な影響力を振るってきた。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 00:09:37
H.Takano @midwhite

80年代後半になると、経済界のトップには収まった長老格の財界人が、社会に何が必要かについて高説を披露し、世界における日本の任務や財界人の貢献できることなど、お決まりの陳腐な話を重ねるが、彼らはその説の通りに日本を舵取りする力は有していない。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 00:13:35
H.Takano @midwhite

個別の業界や個別の大企業は、自民党の選挙運動に要する多額の費用を肩代わりして、自民党議員の大半を動かせるだけの影響力を維持している。しかし、このような経済界の力にも限界がある。非公式に経済界を制御する官僚の統制力の方が遥かに強いからだ。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 00:18:46
H.Takano @midwhite

明治の志士は外交政策優先の立場を強いられていたため、他国との交渉に要する強力な国家統治の中枢機関を第一に考えていたが、戦後から70年代の半ばまでの日本は国際的に1つの政治単位としての行動を要求されなかったため、外交政策の必要性すら無かった。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 01:11:18
H.Takano @midwhite

官僚、自民党、産業界の他にも有力な半自治的組織がいくつかある。例えば報道機関だ。日本の新聞は、時事問題について互いに他社と殆ど同じ姿勢で報道する。また農協は農水省と一種の共生関係を維持し、自民党と協力して国内の米価を海外の5倍に保っている。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 01:18:58
H.Takano @midwhite

この他にも官僚の規制が及びにくい組織がいくつかある。暴力団は用心棒や強請を仕事に巨大な組織を運営しており、警察は犯罪を組織的な統制下に置くことで暴力団と非公式な共生関係を保っている。また検察当局も独自の判断で起訴と不起訴を随意に決定する。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 01:23:01
H.Takano @midwhite

以上のように、日本の権力は自律的かつ半ば相互依存的な多数の組織に分散されていて、主権者に責任を明確化することも無ければ、相互に究極的な支配関係も無い。どの組織も、国の政策の最終責任を引き受けたり、緊急の国家的問題を決定したりする力は無い。(ウォルフレン『日本/権力構造の謎』)

2014-03-20 01:27:28