ゴールドラッシュ・オブ・ザ・デッド #03
「さあ、大人しく銃をこっちへ寄越しな、女ガンマン! じゃなきゃあ、ツレの頭が吹っ飛ぶぜ! 言っとくがアタシは本気だ! このケヴィン・シンカーはいつでも本気のことしか言わねえ女だ、心に刻みな!」 現状、ウィルは強盗団の女頭領から銃を突きつけられ、人質になっている。 2
2014-03-28 17:34:57強盗団の布陣は馬車が二台。それから馬に乗った強盗たちが十数人。全員でソフィアを囲んでいる。ウィルと女頭領は馬車に積まれた木箱の上だ。 「ねえ、女頭領の人。ちゃんと話し合おう。開拓者同士は相互理解すべきだと思うんだ」 「ああん?」 3
2014-03-28 17:35:27ウィルがそう言うと、女頭領が何言ってんだとばかりに睨んできた。 仔牛皮のチョッキにバンダナ巻き、性格はキツそうだが笑えば美人だと思う。 4
2014-03-28 17:35:48「テメエ、あれか? 丸腰で降参すりゃ恩情貰えると思ってるクチか? そりゃあずいぶんお花畑な頭だな。戦う度胸もねえチキンは震えてろ、タマ無し野郎!」 「むう……」 5
2014-03-28 17:36:05強盗団がやってきた直後、ウィルは話し合いの場を持とうとした。ソフィアと強盗団は同じ開拓者だ。だから腹を割って話せば分かり合えると思ったのだ。 6
2014-03-28 17:36:21ゆえにウィルはその先駆けとなるべく、颯爽とシャツのボタンを外し――かけたところで、ソフィアに銃把でどつかれて気絶した。で、なんやかんやで人質にされて今に至る。 7
2014-03-28 17:36:30と、強盗たちに囲まれたソフィアが言った。 「そこの変態が人質として機能すると思ってるなら、あなたの目は節穴です。強盗なんてやってないで、すぐにお医者さんに掛かることをオススメしますよ、女頭領さん」 8
2014-03-28 17:36:52女頭領が「へえ、そうかい」と口の端をつり上げる。無骨な軍用銃がウィルの頬をぐりぐりと押す。スタールの36口径。合衆国軍からの流出品だろう。 9
2014-03-28 17:37:05「なあ、女ガンマン。それならこのタマ無し野郎をアタシ諸共撃ち殺しちまえば早えんじゃねえか? なんでそうしない? 正直、アタシはちょっぴり驚いているんだ。てっきり山のような追手がくるモンだと思ってたからな」 10
2014-03-28 17:37:22「それがまさかたったの二人で、しかもノンキにたき火なんかしてるたぁ恐れ入った。だからアタシはこう思ってる。ひょっとしてコイツら、部隊から離れてしっぽりシケ込む算段だったんじゃねえのかな、って」 11
2014-03-28 17:37:30「つまりは変態彼氏とお医者さんプレイってわけだ! 大当たりなら悪かった! 邪魔して本当にソーリーだったぜ!」 ギャハハハ! と強盗たちが盛大に笑い出す。 12
2014-03-28 17:37:45ビキッとソフィアの額に青筋が浮かんだ。途端、にっこり微笑んだかと思うと――コルトSAAが火を噴いた! 「「おうわっ!?」」 ウィルと女頭領の顔面スレスレを銃弾が駆け抜けた。 「ほ、本当に撃ちやがった! 正気かテメエ!?」 13
2014-03-28 17:38:08「いやぁ、もうメンドいから一緒に始末しちゃおうかな、って」 「どうしたんだ、ソフィア!? 悩み事があるなら相談に乗るぞ!?」 「あ、決めた。今、決めた。やっぱりこの場で全員始末しちゃいましょう♪」 14
2014-03-28 17:38:46「ちょ、完全にキてる奴の目だ! テメエら、やっちまえ! 鉛弾ぶち込んでやれ!」 強盗たちが一斉に狙いを定めた。ぎょっとしてウィルは叫ぶ。 「危ない! 逃げるんだ、ソフィア!」 15
2014-03-28 17:39:07夜気を震わせ、連続する発砲音。飛来する銃弾。しかし、あわやというその瞬間、誰もがソフィアの姿を見失った。 え、とみなが目を瞬いた。その瞬間、あらぬ方向から閃くマズルフラッシュ! 「ハーイ、こっちです! ほらほら、ボケっとしてるとあの世逝きですよ!」 16
2014-03-28 17:39:47一瞬にして、何人もの強盗の手から銃が吹き飛んだ。 「遅い遅い遅い! 構えもデタラメ、狙いも適当! そんなんじゃお昼寝中の水牛だって撃ち抜けませんよーっ!」 「は、早え!? ぐわっ!?」 「なんてすばっしこい奴だ、ぎゃっ!?」 17
2014-03-28 17:40:14次々に銃が弾け飛んでいく。舞うように駆けるソフィアを誰も止められない。 「何やってんだ、馬鹿共! アイツの銃はリボルバーだ! 弾が切れたところを狙え!」 「まー、あたしと撃ち合いする相手はみんなそう言いますね。でも――あらよっと!」 18
2014-03-28 17:40:35弾薬帯に手を突っ込み、ソフィアは素早く指を弾いた。宙に放られたのは六発の銃弾。 雨のような銃撃を避けながらバク宙。まるで曲芸のようにリロードが完了し、タタタターンッ! と快音が響いた。強盗たちがさらに悲鳴を上げる。 19
2014-03-28 17:41:01そうしてわずか数分にも満たない間に、すべての強盗たちが無力化されてしまった。 苦悶の声を上げる強盗たちの真ん中で、桜色の唇がフッと銃口の煙を吹く。 「ギリッギリの恩情で命までは取らないであげました。次は手加減してあげませんよ?」 20
2014-03-28 17:41:21「な、なんてことだ、二十人いたアタシの部下が全滅だと……っ!」 「すごいぞ、ソフィア! 君は一体何者なんだ……っ!?」 その称賛にソフィアは小さく肩を竦め、「さあて」と女頭領を鋭く睨む。 21
2014-03-28 17:41:38「では最後通牒をしてあげましょう。あなたたちが盗んだその木箱、今すぐあたしに返しなさい。その中身――黄金の銃弾は、強盗団程度に扱えるモノではありません」 22
2014-03-28 17:41:58どうやら事の始まりとなった強奪品――『黄金の銃弾(イクスブレッド)』とやらは足元の木箱にあるらしい。女頭領が歯噛みしながら銃を構える。 23
2014-03-28 17:42:19「くっ……確かにテメエは強え。アタシらじゃ黄金の銃弾を扱いきれないってのも本当だ。でもだからって、アタシは諦めるわけにはいかねえんだ! アタシと決闘しろ、女ガンマン! アタシが勝ったらテメエにゃ言うこと聞いてもらう!」 24
2014-03-28 17:42:31