モーサイダー!~Motorcycle Diary~One Year Before IV~

@mor_cy_darにて投稿している連作バイク小説・モーサイダー!~Motorcycle Diary~One Year Before IV~のまとめです。テキスト版はこちら(http://t.co/S8D2Jfru1a)からどうぞ
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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

モーサイダー!~Motorcycle Diary~One Year Before IV~ #mor_cy_dar

2014-03-30 21:14:21
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 それから十日ほどの後━━ 「相変わらずヘタクソすぎますわ」 「うるさいな」  VT250スパーダを前に、そしてXR650Rを後ろにして、二人のライダーが川野駐車場まで戻ってくると、たちまち険悪な睨み合いが発生した。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:14:55
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 平日とはいえ、すでに春休みである。  暦通りの仕事ではない者も含めて、そこそこに賑やかな川野駐車場で、これでもかというほどに対照的な志智(しち)と亞璃須(ありす)は、注目を集めずにいられない。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:15:21
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 片やスタンダードきわまりない250ccネイキッドを駆る長身の少年。そして、片や見上げるばかりのビッグオフに乗る金髪の美少女である。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:15:31
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 髪をみれば金と黒。上背をみれば短と長。またがるマシンの排気量なら大と小であり、せいぜい共通しているのは、どちらのマシンも色鮮やかなホンダレッドをまとっていることくらいだった。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:15:38
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「昨日も言いましたけど、志智はブレーキが甘すぎです。そのくせ突っ込むから、あんなふうに進入で挙動が乱れるんです」 「奥深くできっちりブレーキした方が、うまく曲がれるって言ったのはお前じゃないか」 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:15:51
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「志智のはブレーキじゃなくて、むりやりスピードを殺そうとしているだけですわ。  もっとサスペンションの動きを意識してください」 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:16:02
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そんなこと言われてもな……」  バネの動きを示しているつもりなのか、両手のひらを上下に動かしてみせる亞璃須に、志智は憮然として眉をひそめる。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:16:07
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「じゃ、次はわたくしが前を走りますわ」 「ああ、わかった」 「言っておきますけど、ブレーキタイミングを間違えて後ろから突っ込まないでくださいね」 「そんなミスするかよ」 「どうだか分かったものではありませんわ」 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:16:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 罵り合いに限りなく近い会話は、エンジンを切ることも忘れて交わされている。  そして、川野駐車場を飛び出して、数分が経ったかと思うと、今度は順序を逆に━━つまり、XR650Rが前、スパーダを後ろにして戻ってくるのだ。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:17:24
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 続いて展開されるのは、こんな会話である。 「どーですか、わたくしの芸術的な走りは!!」 「……あっという間に離されて、よく見えなかった」 「はあ? これだから志智は。負け惜しみですの?」 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:17:39
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「最初のコーナーではちゃんと見えていたでしょう? ああやってブレーキはかけるんです。これでもオンロードのやり方にあわせてあげてるんですよ?」 「まあ……最初のところくらいは……」 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:17:55
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「じゃ、次は実践してもらいますから。  目の前で見たばかりですし、簡単ですわよね? もしできなかったら、よっぽどのお馬鹿さんですわよね?」 「……くそっ。今度は俺が突き放してやるからな」 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:18:02
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 かくして、再び志智のスパーダと亞璃須のXR650Rは、前後をいれかえて走り出す━━そして、またダメ出しが始まる。このループだった。  二人が周回しているのは、大多磨周遊道路の中でも川野駐車場とふるさと村信号の間である。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:18:11
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 片道でおよそ3km弱。往復してもせいぜい6kmに満たない距離だが、適度にストレートとコーナーが入り交じり、高低差も比較的すくない。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:18:22
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 いわゆる峠の走り屋たちにとっては、もっとも好まれる区間でもあり、実にアベレージスピード100km超で駆け抜ける者もいるという、高速ワインディングに限りなく近い中速区間である。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:18:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(それにしても……こいつ、うまいな)  前を睨めば小さな少女の背中。だが、彼女がまたがる鉄馬はその体格に不釣り合いなほど巨大である。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:18:40
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 バリバリという雷鳴のような音が跳ね上がるたび、XR650Rは信じられないようなダッシュを見せる。到底、VT250スパーダでついていける加速ではない。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:18:43
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(これでも加減してるっていうのが……くそっ)  はじめは最初のコーナーへ入る以前に、圧倒的な差がついてしまっていたのだ。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:18:54
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 だが、それではレッスンの意味がないと悟ったのか、亞璃須は香蘭橋を渡るまでハーフスロットルを維持するようになった。  それでも志智のスパーダは追いつくどころか、背中に食いつくのが精一杯である。ただのストレートであるというのに、だ。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:19:00
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(大型ってやっぱり速いんだな……)  エンジンの排気量差というものを、ここまで実感させられたのは志智にとって初めての経験だった。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:19:08
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「フロントをぐっと沈めて……一気にバイクを傾けて……加速……か」  前方を走るXR650Rの挙動を見つめながら、なるべくそれをトレースしようと心がける。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:19:25
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 ライディングテクニックが他のスポーツにおける技術と一線を画しているのは、手取り足取り教わるものではないという点だ。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:19:42
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 そもそも、それが不可能なのである。たとえGPライダーの駆るレーシングマシンのタンデムシートへまたがったとしても、その時点でモーターサイクルの特性は二人乗りのそれへと変化してしまう。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:19:50
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 ほんの数キロの重量でも明確な変化となって現れるというのに、マシンの後端、しかも高い位置に何十キロもの人間が乗った状態で、参考になるはずがない。 #mor_cy_dar

2014-03-30 21:20:04
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