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成田良悟@色々執筆中 @ryohgo_narita
エイプリルフール。四月の愚者。卯月愚者。ウヅキグシャ。疼き草。
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「エイプリルフールというイベントは、僕の村とは無縁の存在だ。四月一日、その日は村人の誰もが家の外に出る事を禁じられているからだ。それどころか、家族と話す事も許されない。嘘をつくにも、相手がいない。寂しくなんかないと自分を騙すので精一杯だ」 #疼き草
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「この村には昔から『疼き草』という言い伝えがある。室町時代に仲間を裏切って惨殺した男が、怨念に取り憑かれて地面に魂を縫い付けられたという伝説だ」 #疼き草
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「正直、子供心にも馬鹿馬鹿しいと思っていた。第一、魂が地面に縫い付けられたらどうなると言うのだ。元々人間は大地に根を下ろして生きている存在だ。迷信以前に、何が怖いのかも良く解らなかった。だから、中学生になった4月1日、友達と示し合わせてこっそり家を抜け出す事にした」 #疼き草
成田良悟@色々執筆中 @ryohgo_narita
「まだ夜が明ける前だ。食事も取ってはいけないしきたりなので、本当に親とも顔を合わせる事はない。また夜中にこっそり戻れば、家族は僕が家を空けていた事にも気付かないだろう」 #疼き草
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「3人の仲間達が、村唯一の信号機がある交差点で僕の事を待っていた。まだ夜明け前だけど、人がいないというだけで、不思議といつもと違った空気が感じられる。まるで、別の村に迷い込んだかのようにも思えた」 #疼き草
成田良悟@色々執筆中 @ryohgo_narita
「三人の仲間のうちの1人、Bが、家から持ってきたチェーンソーを振り回しながら僕(Aとしておく)に言った『マジで洒落にならねえっすよAの兄貴、4月1日に外に出た奴は、疼き草に呪われるって話ですぜ』。僕は言った。『草に呪われるってなんだよ。足でもかぶれるのか?』」 #疼き草
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「すると、クラスのマドンナであるC子が、眼鏡をかけ直しながら言った『ы仝蹈〒◆鷃F、羈アF£…y喇Ч…』と。そこで僕は気が付いた。確かに彼女の言う通り、本当にいつもと街の景色が違う気がする……」 #疼き草
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「何が違うのか、最初は気付かなかった。すると、テレビのアハ体験の正解率100%を誇るDが、手に持った手動の挽肉ミンチマシーン機で大量の消しゴムをゴリゴリと潰しながら言った。『おい……昨日まで……こんなに草生えてたか?』」 #疼き草
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「言われて見て気が付いた。確かに田舎の村ではあるが、ここまで草は生えていなかった気がする。ただ、そこまで異常なことかと言われると自信を持っては頷けなかった。普段は、早起きの人が草をこまめに刈っているだけかもしれない」 #疼き草
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「僕は『なんだよ、お前らそれでも鏖會の一員かよ、いいから最初の予定通り、神社までいって肝試ししようぜ』とみんなにはっぱをかけた』 #疼き草
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『鏖會(みなごろしかい)というのは、上級生のイジメッ子からC子を助ける為に結成した仲間達の総称だ。今では総勢2300人いるが、未だにイジメッ子グループは殲滅できていない。だが、心は折れていない筈だ。ここで迷信に怯えているようでは、いじめっ子達には勝てないだろう。永遠に」 #疼き草
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「僕が率先して歩き始めると、足元で何か音がした。グギャ、グギャ、と、何かのうめき声にも聞こえる。冷や汗を掻きながら下をみると、靴の下にあったのはただの草だった。単に、踏みつけた草が潰れるだけの音だったのだ。『なんだ、脅かしやがって』と僕は言ったが、同時に気が付いた」 #疼き草
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「ここはアスファルトの上だ。なのに、草が潰れる音がするとはどういう事だろう。まさか、アスファルトの割れ目から草が生えているとでも言うのだろうか? それとも、単に千切れて風に飛ばされた草がアスファルトに運ばれただけなのだろうか。 僕は靴を上げて確認する事にした」 #疼き草
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「しかし、足を上げた後の地面に草はなかった。おかしい、今しがたまで、靴底から草がはみ出していた筈なのに。首を傾げていると、Bがラジオペンチで丁寧に綿棒の先を握り潰しつつ、震える声で言った。『Aの兄貴、そッ……それ……足の裏……』」 #疼き草
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『見ると、僕の足の裏……靴底から、大量の草が生えているではないか。まるでたわしのように密集したその細い草は、ゴムの靴底に根を下ろし、太陽を拒絶するかのように、大地に向かってその葉先を蠢かせていた』 #疼き草
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カタカタと震えながら吐き出された息で眼鏡を曇らせつつ、C子が叫んだ『ツ醋ム。ェ。。ニィ、イ、ハ、ッ、チ、罍ェ……!』 と。彼女の言う通りだ。このまま神社に進むのは不味い。僕達はとりあえず明かりを目指して、近所のコンビニに駆け込む事にした。当然ながら、僕は靴を脱ぎ捨てた」 #疼き草
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「しかし、そこで僕達は絶望する事となった。コンビニに明かりがついていなかったのだ。いくら村のしきたりとはいえ、コンビニまで閉店するなどという事がありえるのだろうか? すると、消しゴムのミンチに自分の髪の毛を混ぜながら走っていたCが異変に気付き、叫ぶ」 #疼き草
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「『草だ! 明かりが付いてないんじゃない! 草が生えてる……直接生えてるんだ……! ああ……!』 そして、僕もハッキリとそれを見た。コンビニと窓という窓、看板や除虫灯に至るまで――明かりを放つもの全てに草が根を下ろしているではないか」 #疼き草
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「そういえば……先ほどの交差点……村唯一の信号機は……果たして何色に点滅していたのだろうか? もしかしたら、信号機のランプも既に草に覆われていたのではないだろうか? そういえば僕の靴は、夜間の安全対策として、歩行で発電し靴が光るタイプのものだった」 #疼き草
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「僕は怖くなって、コンビニから逃げながら叫んだ。『おい、なんだよ! こんなの聞いてねえよ……! この村の伝説ってなんなんんだよ!』」 #疼き草
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「するとC子が必死に走りながら、それでも丁寧に語ってくれた。『、ウ、ホツシ、ヌテ邏ヨ、「タレ、テ、ソソヘ、マ。「エ网ャーュ、ォ、テ、ソテ邏ヨ、「ト爨�ネ、ヒ、オ、イ、ソトヌヘカニウ、キ、ニウウイシ、ヒヘ釥ネ、キ、ニサヲ、キ、ソ、ホ。ェ』」 #疼き草
成田良悟@色々執筆中 @ryohgo_narita
「『そんな…提灯で誘導されて崖下に落とされた奴の怨念で、この村そのものが呪われて光を全部封じられたっていうのかよ……』 とばっちりにもほどがある。なんで、ただここに棲んでいるだけでそんな呪いに巻き込まれなければならないのだ」 #疼き草
成田良悟@色々執筆中 @ryohgo_narita
「Bがパニックを起こしてチェーンソーのエンジンをかけ、『こんな草、全部ぶったぎってやりますよ!!』と叫んだ。そして、ガードレールの反射板に生えていた草目がけてチェーンソーを振り下ろす。ガードレールと擦れて火花が散り、一瞬周囲が眩くなった」 #疼き草
成田良悟@色々執筆中 @ryohgo_narita
「次の瞬間、グギャ、グギャ、グギャ、と、先刻の靴裏の草と同じ音が響き、チェーンソーのエンジン音が停止した。Bが叫ぶ『あああ……チェーンソーにも草が生えてきちまったぁあぁ』 何と言うことだ、今の火花でチェーンソーも『明かりを出すもの』と認識されたのだ」 #疼き草
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