「たり」とか「けり」とか

過去や完了を表す助動詞について
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ほほの @nofofo

前回の考察で、日本語の古文について少し話題にしましたが、その流れで、もう少し古文について書いてみます。とくに、過去や完了を表す助動詞の挙動について考えてみたいと思います。

2014-03-27 21:08:55
ほほの @nofofo

私は、現代語はかろうじて使えるぐらいのレベル、古典語は皆目わからないレベルです。そんな奴が古典語について書くなんてたわけたことではありますが、あわれな虫けらの鳴き声だと思って許してください。

2014-03-27 21:26:07
ほほの @nofofo

目次は次のとおりです。

2014-03-27 21:26:21
ほほの @nofofo

[1]「き」 [2]「たり」 [3]「をり」 [4]「けり」 [5]「ける」 [6]「てた」 [7]「てん」 [8]「たりき」 [9]「ぞ」 [10]「たる」 [11]「たぁ」 [12]「。」

2014-03-27 21:26:37
ほほの @nofofo

参考文献は次のとおりです。

2014-03-27 21:26:56
ほほの @nofofo

*1 北原保雄(1981)『日本語助動詞の研究』大修館書店. *2 柳田征司(1985)『室町時代の国語』東京堂出版. *3 小田勝(2007)『古代日本語文法』おうふう.

2014-03-27 21:27:20
ほほの @nofofo

*4 工藤真由美・八亀裕美(2008)『複数の日本語』講談社選書メチエ. *5 鈴木泰(2012)『語形対照 古典日本語の時間表現』笠間書院.

2014-03-27 21:27:38
ほほの @nofofo

*6 井島正博(2001)「古典語過去助動詞の研究史概観」武蔵大学人文学会雑誌 第32巻 第2-3号. http://t.co/maXAPyOhma

2014-03-27 21:27:51
ほほの @nofofo

*7 大野秋田(2011)「助動詞「し」の完了の用法」週刊俳句 2011-11-06. http://t.co/hMOashPADy

2014-03-27 21:28:06
ほほの @nofofo

*8 武藤禎夫・岡雅彦 編(1975-76)『噺本大系』第5~8巻 東京堂出版. *9 武藤禎夫 校注(1987)『元禄期軽口本集─近世笑話集 上』岩波文庫. *10 中野三敏・神保五彌・前田愛 校注(2000)『新編日本古典文学全集80』小学館.

2014-03-27 21:28:36
_/・△ @kkomi_bot

おまえみたいなもんは虫かごで十分じゃ

2013-11-30 23:09:48
ほほの @nofofo

和歌や俳句の世界では、古典語を使う人がけっこう多いようです。そのときに、本来は「過去」を表す助動詞である「き」やその連体形「し」を、「完了」の用法で使う人が多く、それに対する批判もたびたび行われているようです。

2014-03-28 20:03:03
ほほの @nofofo

ただ、その批判に対する批判もあって、この問題については、大野秋田氏の論説[*7]が参考になります。

2014-03-28 20:03:26
ほほの @nofofo

いずれにしても、「過去」は文字どおり過去のことを表す用法ですが、「完了」の方は少しわかりにくい概念です。「完了」とは、動作が完結したことや、完結した動作の影響がその後も続いていることを表す用法、といった説明がされることが多いようです。

2014-03-28 20:05:14
ほほの @nofofo

文法用語を使えば、「過去」はテンスの一種、「完了」はアスペクトの一種ということになると思いますが、この話はまた後ですることにします。

2014-03-28 20:05:30
ほほの @nofofo

どちらにしても、現代語では「過去」も「完了」も区別せずに「た」で表すので気になりませんが、中古語、つまり平安時代頃の言語では、それらを区別していたようです。

2014-03-28 20:06:06
ほほの @nofofo

中古語の「き」は、とくに現在とは切り離された過去を表すので、現在に近い過去、たとえば発話当日の出来事を表すのには使われなかった、ともいわれています[*3]。

2014-03-28 20:06:33
ほほの @nofofo

ですから、たとえば目の前にクララが立っているのを見たとき、現代語だと「クララが立った」といえますが、中古語で「クララ立ちき」とはいえないことになります。

2014-03-28 20:06:54
ほほの @nofofo

ではどういえばいいのかはわかりませんが、「クララ立ちたり」とか「クララが立ちたる」とか「クララの立ちたるかな」とかいった表現になるのではないでしょうか。「き」が「過去」を表すのに対し「たり」は「完了」を表すからです。

2014-03-28 20:07:11
ほほの @nofofo

ただし、前掲の記事[*7]によれば、そういった「過去」と「完了」を区別するのは、あくまでも中古語の場合だそうです。中世以後、とくに近世以後の言語ではそれらを混同することが常態化して、もはや誤用とはいえなくなってしまったということです。

2014-03-28 20:07:29
ほほの @nofofo

ある時代に誤用だったものが、次の時代に正用になるのはよくあることですが、この場合おもしろいのは、「き」にしても「し」にしても、近世、つまり室町時代とか江戸時代の前期にはすでに、話しことば(口語)としては使われなくなっていたということです。

2014-03-28 20:07:47
ほほの @nofofo

つまり、その頃はもう「た」が使われていて、「き」や「し」は書きことば(文語)でしか使われなくなっているのに、その文語の語法が変化したということです。文語は口語に比べて変化しにくいものですが、何百年も立てばそれさえ変わってしまうというわけです。

2014-03-28 20:08:13
ほほの @nofofo

ちなみに「文語」ということばは「古典語」と同じ意味で使われることもあると思いますが、ここでは「書きことば」と同じ意味で使うことにします。

2014-03-28 20:08:33
ほほの @nofofo

いずれにしても、助動詞の「き」や「し」を完了の用法で使うのは誤りだ、とはいいきれないようです。少なくとも、中古以外の時代の文法を視野に入れた場合はそのようです。

2014-03-28 20:08:53
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