古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #16

更新十六回目のまとめです。 古鷹に会うという青葉の後押しをする艦娘たち。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

古鷹に会って、お礼を言いなさい。それがあんたに出来る私たちに対する償いよ。 そう叢雲たちに言われた青葉が、顔を赤くさせたり青くさせたりしている。見ている分にはとても面白いけれど、善は急げだ。ほら早速古鷹ねーさんのところに行くわよと手を引っ張ると、青葉が往生際悪く抵抗した。

2014-04-03 23:00:26
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「いや、待ってください衣笠!青葉、演習に出るところだったんですよ!まずはちゃんと任務をこなしてからですね……」 そう言いながら青葉が執務室の扉を開ける。それが古鷹ねーさんに会いに行くのを先延ばしにしたい口実なのは見え見えだ。なによ、本当は古鷹ねーさんに会えるのが嬉しいくせに。

2014-04-03 23:06:03
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

執務室では雷ちゃんと吹雪、初雪、叢雲が何事か話していた。私たちに気付いた吹雪がこちらをちらっと見て笑った。そのまま入れ替わりに執務室を出ていく。近海の警備任務にでも向かうのだろう。 「あら、青葉何してるの。さっさと古鷹のところ行きなさいよ」 あ、やっぱり雷ちゃんにも伝わってる。

2014-04-03 23:11:50
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉がしどろもどろになりながら言う。 「やっ、その、青葉演習に行くところだったじゃないですか!先に任務を終わらせてからの方がいいかと思いまして……」 雷ちゃんがにやっと笑った。 「なんだ、そんなこと。心配しなくていいわ。午後の演習はもう全部終わったから」 「ええっ!?」

2014-04-03 23:17:07
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんの声を聞いて、執務机の上の書類とにらめっこしていた暁ちゃんが目を上げた。 「えっ、違うわよいかずもがっ」 見ると、響ちゃんが手で暁ちゃんの口を押さえている。暁ちゃんに向かって電ちゃんが口の前で人差し指を立てる。どうやら第六駆逐隊の面々も何をすべきか心得てくれているようだ。

2014-04-03 23:22:22
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本当は午後の演習はまだ終わっていないのだろう。けれど、青葉に逃げ道を作らないために嘘をついてくれている。随分浮き足立っていると見えて、青葉はそんなことにも気づかない。 「えーとでも!南方海域前面の攻略には重巡が必須じゃないですか!青葉が休んでいる訳には!」 「あら、知らないの?」

2014-04-03 23:28:07
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南方海域前面は攻略したわよ、と雷ちゃんが言った。 「えっ、いつ!?」 「ついさっきよ。出撃してた加古が帰ってきてたでしょ?海域の最深部で加古が敵の司令艦隊の旗艦に夜戦で連撃当てて沈めてくれてね。MVPにもなったわ」 そんな様子、さっき会った加古はおくびにも出さなかった。

2014-04-03 23:35:39
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雷ちゃんが続ける。 「『よくやったわ!褒賞に何か欲しいものある?』って聞いたら『しぬほどねたい』って言われたから、重巡はしばらくお休みしてていいわ。どのみち次の珊瑚諸島沖は空母と雷巡を中心に攻略するつもりだし」 グッジョブ、加古。これで青葉と古鷹ねーさんがすれ違うこともないわ。

2014-04-03 23:43:21
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

いよいよ逃げ場のなくなった青葉が呆然と立ち尽くしている。その青葉に、雷ちゃんが言った。 「青葉」 「はいっ!?」 「古鷹に会って、お礼を言うのよね?」 「ええ、その……まあ……」 「それなら、早くした方がいいと思うわよ?」 雷ちゃんが悪戯っぽく笑った。

2014-04-03 23:49:18
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「さ、行きましょ青葉」 青葉の手を取り、引きずるようにして執務室を出る。暁ちゃん以外の第六駆逐隊の面々が手を振ってくれていた。暁ちゃんはどーいうことよ!と雷ちゃんに食ってかかっていた。

2014-04-03 23:52:50
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「あの、衣笠ちょっと待ってください!青葉、心の準備がですね……」 「なにが心の準備よ。ただ会って『ありがとう』って言うだけよ。何を準備することがあるの」 しどろもどろになっていた青葉が顔を俯ける。 「だって……古鷹さん、怒ってますよ……逃げ回ってたくせに今更何だって……」

2014-04-03 23:57:49
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私は後ろ手に青葉を引っ張っていた手を離し、青葉に向き直った。青葉の顎を両手で持ち上げ、目と目をしっかり合わせて言う。 「古鷹ねーさんは、そんなことするひとじゃない。あんた、そんなことも忘れちゃったの?」 「でも……」 「万一怒ってたとしても大丈夫よ。私も一緒に謝ってあげるから」

2014-04-04 00:03:39
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私の言葉に青葉がおずおずと頷いたその時。 「あっ、いたぁ!探しちゃったよ!」 振り返ると、鬼怒がこちらに向かって駆けてくるところだった。青葉の前で急停止し、その手を握る。 「青葉、古鷹に会うんだって!?偉いよ、頑張ってね!」 「な、何で鬼怒さんが知ってるんですか!?」

2014-04-04 00:10:28
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「え?何でって、鎮守府のみんな知ってるよ?」 「そ、そんな……」 青葉が力なく言う。私はああ、と合点がいった。さっき執務室にいた吹雪たちは、遠征に行ったのではなく鎮守府中にこのうわさを広めに出ていったのだ。おそらく雷ちゃんに頼まれて。 「川内とかも青葉探してたよ?心配してたから」

2014-04-04 00:16:29
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青葉がくるりと身体を返して走り出した。 「ちょっと青葉、どこ行くの!?」 「部屋に退避です!なんでこんな大事になってるんですかああ!」 鬼怒に手を振って、私もその後を追う。もともと古鷹型の部屋を訪ねようと戻ってきてたのだからいいけれど、と思いつつ走ると、前方の廊下に人影が見えた。

2014-04-04 00:24:03
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青葉も同じ人影を見て、ぎくりと足を止める。追いついた私に、青葉のつぶやきが聞こえた。 「……古鷹さん」 古鷹ねーさんが、私たちの部屋の前の廊下にたたずみ、青葉を見つめていた。その口が、ゆっくりと開かれる。 「……青葉」 青葉と古鷹ねーさんが、そのまま言葉もなく見つめ合う。

2014-04-04 00:30:42
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

おずおずと、古鷹ねーさんが口を開いた。 「あの、青葉……」 青葉がびくりと体を震わせる。胸の前でぎゅっと両手を握り、目を伏せた。私はその肩に両手を乗せ、青葉を支える。青葉の様子に言い淀んでいた古鷹ねーさんが再び口を開こうとする。その時。 「おお、青葉!?古鷹と仲直りしたのか!?」

2014-04-04 00:38:32
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉が跳ね上がった。見ると、古鷹ねーさんの背後から天龍が駆けてくる。その後ろから龍田さんも。その姿を認めた青葉は、止める暇もなく自分の部屋に駆けこんでドアを閉じてしまった。思わず天を仰ぐ。近寄った天龍が言った。 「あ、あれ?もしかして、俺なんか邪魔したか?」 あー、うん、まあ。

2014-04-04 00:43:32
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「もお~、だから天龍ちゃん待ってって言ったのに~」 「わりい、古鷹……」 龍田さんに言われて天龍がしょぼくれた。古鷹ねーさんはううん、気にしないでと笑っている。その眼が私の方を向く。 「衣笠が青葉を連れてきてくれたんだよね?ありがとう、久しぶりでなんだか嬉しくなっちゃった」

2014-04-04 00:49:46
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「待ってよ、古鷹ねーさん。ちらっと顔を合わせただけで満足しないで。青葉には、古鷹ねーさんに言わなきゃいけないことがあるんだから」 そう言うと、古鷹ねーさんはきょとんとして首をかしげた。ああもう、このひとは。そう思いながら青葉の逃げ込んだ部屋のドアノブをひねると、鍵がかかっていた。

2014-04-04 00:54:53
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「青葉―?何鍵掛けてんのよ。ここ開けなさい!」 ドアを叩きながら部屋の中に向かって声をかける。けれど、中からはうんともすんとも聞こえてこない。うーんと頭を悩ませていると、古鷹ねーさんに肩を叩かれた。 「衣笠、もういいよ。青葉にも事情があるんでしょう?私、青葉と会えただけで……」

2014-04-04 01:00:37
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「待ってって言ったでしょ、古鷹ねーさん。青葉は意気地がないだけよ」 でも、と言いたげな顔で古鷹ねーさんが口をつぐむ。 「じゃあよ、他のやつらも集めてきてここで宴会やってたら出てくるんじゃねえか?川内とか鬼怒とか夕張とか呼んでくるぜ」 天岩戸じゃないんだから。

2014-04-04 01:08:27
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

再び古鷹ねーさんが私に言う。 「ねえ、衣笠。青葉と会うのはまた今度でいいよ。私、加古を探さなくちゃだし。加古、出撃からは帰ってきてるはずなんだけど、部屋にいないの」 あれ、そう言えば加古はどこにいたんだっけ?と思いを巡らせた瞬間、かちりと音がして、部屋のドアが開いた。

2014-04-04 01:12:21