レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド ＃５

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド」#５

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

（これまでのあらすじ：ニンジャの暴威で裏社会を牛耳っていたヤクザ組織「ソウカイヤ」は壊滅。だが邪悪は滅びぬ。政財界や社会システムと癒着し、ネオサイタマを背後から操るニンジャ陰謀組織「アマクダリ・セクト」が台頭！共和国との開戦を経て、アマクダリの暗黒管理社会はさらに酷薄さを増す！）

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（無辜なる市民は、ニンジャ支配の恐るべき真実を知らぬ。市民のIRCを支えるサイバーサングラスに、狡猾なサブリミナル電波が流れていることを！治安維持警察ハイデッカーの隊員がクローンヤクザであり、理不尽な暴力を行使し始めた事を！そして彼らの背後に大いなる12人のニンジャがいる事を！）

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（暗黒メガコーポによる自由抑圧を糾弾し、非暴力による音楽と電波の解放を主張する革命レディオ局、キツネ・ムレ・チイサイ（KMC）は、サイバーサングラスの違法改造チップをリスナーに配布して抵抗。だがKMCが選択した帯域は、意図せずしてアマクダリのサブリミナル電波帯域と衝突していた）

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（アマクダリの支配システム内で大衆煽動を担っているネオサイタマTV（NSTV）は、ハイデッカーに協力を打診。KMCの装甲バンを襲撃させ、中心人物DJゼン・ストームこと、ヒナヤ・イケル・タニグチを拉致させた。これに抵抗した彼の息子ニスイは射殺され、ボディバッグで処理施設へ運ばれる）

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（NSTV社屋内拷問部屋に囚われたタニグチも、拷問の末にリンチ処刑されるはずだった。だがそこへ突如、二挺拳銃とカタナで武装したニンジャ「デリヴァラー」が乱入！警備や部長を無慈悲に殺害し、タニグチを救出する！彼こそは、ニンジャソウル憑依者として死の淵から蘇ったニスイであった……！）

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数年前のジェネレータ爆発事故で無人地帯と化した、タノシイ・ストリート。その中心に立つ、複合パチンコカラオケ高層住宅ソウゴウ・シセツ。KMCの第三アジトが存在する廃墟建造物だ。　1

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十三階の窓から跳躍したニスイは、朽ちた電飾カンバンを蹴り渡る。『中古釣り具』『お急ぎOK』『テリヤキ増す』……そのネオン光は枯れ果てている。重金属酸性雨を鋭いテイルスピンで振り払うと、彼はサイバーレインコートを纏い、廃墟ストリートを疾駆した。激しい焦燥感に突き動かされるまま。　2

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敵は強大で情け容赦無し。暗黒メガコーポと公権力が癒着している。逮捕などという生温い手段は使うまい。皆殺しに来るだろう。「武器が足りない」いまやニスイの表情はアサシンの冷酷さ。感情の存在を他者に感じさせぬ機械。だが無垢なる少年めいて、その瞳は不自然なほど澄んでいる。「守らねば」　3

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アジトでの光景がニューロンに追憶再生される。ニスイは、死の香りが染み付いたニンジャ装束を通して、KMCの面々を見た。痛めつけられた彼らを。父の有様を。…何故、和やかに笑っている暇がある。彼らはあの脆弱な武器で、乏しいカラテで、敵に対抗する気なのか。遣り場の無い怒りが芽生えた。　4

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無論、KMCクルーは徹底抗戦の覚悟を固めており、チェリーなど元湾岸警備隊の人間もいる。もし、平穏無事な日々を生きるサラリマンが同じ光景を見たならば、ゲリラ革命旗を掲げたアジトで牙を研ぐ、いっぱしの武装勢力に見えたかもしれない。だが、おお、ナムサン。ニンジャの目からは違うのだ。　5

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ニスイの目からは彼らが、乱獲行為によって絶滅危機に瀕しながらも、愛らしい顔で無邪気に岩の上で戯れ遊ぶ、哀れな小動物の群れめいて見えただろう。ニスイはKMCに敬意を抱いており、それが彼の魂を繋ぎとめている。だがそれゆえ、彼らを傷つける敵が許せなかった。己の傷など問題ではなかった。6

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ニンジャ脚力は速い。ニスイは第三アジトから既に遠く離れ、繁華街を抜けて、湾岸地区にさしかかろうとしていた。KMCの潜伏場所が悟られぬよう、離れる必要があった。武器と情報を調達するためだ。「これでいい」ニスイは、倉庫地区に建造されたハイデッカーの小規模な駐屯施設に狙いを定めた。　7

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廃マグロ倉庫を改装されたその建物は、かつてヤクザキッチンと呼ばれる非合法施設の一個だった。今はオナタカミ・トルーパーズの合法駐屯施設である。彼らの役目は、毎日ここを通るアマクダリの麻薬輸送船を通過させ守ることだ。ニスイはそのような闇世界の事情など知らぬ。最も効率的ゆえに選んだ。8

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これは戦闘能力のテストも兼ねている。ニスイは両手に拳銃を装備。左、ヤナマンチ社製マシンピストル。右、タツジン・オミチ工業社製40口径オートマ。建物正面には威圧的な装甲車二台。歩哨四人。デリヴァラーは道路に着地。右の銃で二連射。BLAMBLAM！「「アバーッ！」」歩哨二人排除。　9

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「「ザッケンナコラー市民！」」敵の反撃。デリヴァラーは銃撃を回避。空中に脱ぎ捨てたサイバーレインコートが蜂の巣。敵の反応は遅い。まだこちらに銃口を向けられていない。……違う、ニンジャの速度が速すぎるのだ。「「「ナンオラー！」」」装甲車から追加のトルーパーズが降車。六人。　10

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「イヤーッ！」三連続側転を決めたデリヴァラーは、左の銃を横薙ぎに掃射。BRATATATA！奇襲を受けた形になる敵六人は、反射的に遮蔽を取る。左のトリガを引き続けたまま悠然と歩き、右の40口径で狙いをつける。BLAM！「アバーッ！」BLAM！「グワーッ！」狩り殺す。正確に。　11

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「「「スッゾコラー市民！」」」敵はマシンピストルの脅威度が低いと判断。体正面の防弾板を頼りに突撃してくる。歩哨の生き残りも反撃に転じる。一斉射撃が来る。緩急を付けて回避。「イヤーッ！」デリヴァラーは徒歩から突如ニンジャ脚力で駆けた。撃ち尽くした左拳銃を捨てる。42口径を抜く。12

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BRATATATATATATA！敵の一斉掃射が背後のドラム缶を破壊。だがもうそこにアサシンは居ない。斜め方向へのパルクールから、歩哨二人の脳天めがけ射撃。BLAMBLAMN！「「グワーッ！」」左がやや急所を逸れる。42は重い。BLAMN！「アバーッ！」着地時にクーデ・グラ。　13

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BLAM！同時に右側面へノールック射撃。「グワーッ！」敵の肩に。「「「ダッテメッコラー市民！」」」敵の一斉射撃再度。「イヤーッ！」デリヴァラーは連続バック転で紙一重回避。「良くない」彼は反省した。父がいれば銃弾を受け致命傷だ。運良く回避できても彼の肉体への負担が大きすぎる。　14

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ニスイは、父を背負って戦う事を想定していた。タニグチのサイバネ四肢は大量生産品で代替できぬ職人の特注品で、脚部のスペアは無い。ひとたび潜伏先で戦闘が始まったならば、父にとって最も安全な場所は己の背となるだろう。何故なら、己はニンジャだからだ。彼は何の疑念も無くそう考えた。　15

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「イヤーッ！」敵三人の背後に着地。カラテを叩き込む。「グワーッ！」一人が装甲車に頭部を衝突させ、前後不覚。致命傷ではない。少年時代の違法電脳手術と訓練の後遺症で、ニスイの身長は成人男性平均に劣る。「イヤーッ！」ならば全力の回し蹴り。「アバーッ！」殺害。だが父への負担が大きい。16

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着地の隙も長い。「アッコラー市民！」生き残りが至近距離射撃を狙う。BBLAMN！「アバーッ！」二挺拳銃で機先を制し、殺害。ニンジャの速度は圧倒的だ。しかし無敵ではない。やはり白兵戦闘用の武器も必要だ。殺傷力の高いカタナが。澄んだ目で死に損ないを射殺しながら、彼は思案した。　17

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「ニンジャ……アイエエエ……！」装甲車座席から震え声。ニスイはそれを見た。服装はオナタカミ・トルーパーズと同じだが体格が違う。声も違う。腰に帯剣。クローンめいた連中の隊長格か。それは震える手をハンドヘルドUNIXに伸ばす。BLAMN！「アバーッ！」ニスイは額を撃ち抜き殺害。　18

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ガラス窓にゴアを撒き散らし、隊長はうつぶせに倒れた。デリヴァラーは手早く所持品を剥ぎ取る。ハンドヘルドUNIX。38口径銃は特徴無し。刀剣はオナタカミ社製プラズマ・カタナ。試す価値あり。銀色の紋章バッジ。ハイデッカーのものではない。何処かで見た。部長のタイピンか。保管する。　19