『雪女』出雲弁訳

タイトルのまんまで、小泉八雲 ラフカディオ・ハーンさんの『雪女』"Yuki-Onna"を出雲弁に訳したもんです。ヘルン先生に日本の怪談を話したセツさんは、こぎゃん口調だったかもっせんなー、と思いつつ、訳してみました。
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出雲弁 @izumo_ben

せんどから、ちょっこし時間があーたびに、小泉八雲の『雪女』を出雲弁に訳してみちょーました。まあ読んでごしなはい。 #雪女

2014-04-05 09:48:41
出雲弁 @izumo_ben

1)武蔵の国のなんだかてて言い村で、茂作と美濃吉ててきこりが住んじょったと。茂作はおじじ、美濃吉は18の若けもんで茂作の見習いをしちょったげな。 #雪女

2014-04-05 09:50:33
出雲弁 @izumo_ben

2)毎日、二人は、村から5マイルほどの森に一緒に出かけちょった。森へ行く途中にはおっけな川が流れちょって、小舟がつなげてあってのう。 #雪女

2014-04-05 09:51:45
出雲弁 @izumo_ben

3)この小舟のあーあたりには、なんべんかは橋がかけらいたこともあったけど、そのたんびに大水で流さいてしまっちょったと。今でも、普通の橋じゃあ、川が荒れえと流さいてしまーやな場所でした。 #雪女

2014-04-05 09:52:24
出雲弁 @izumo_ben

4)さむさむ夕方のこと、茂作と美濃吉は、帰り道にマゲな雪嵐に逢ってのう。二人は渡し舟には着いたども、もうはい船頭はえのっちょって、川の向こうっぱたに舟がゆわいてああ。とてもだねが、泳げえやな日だねけん、二人は、ほにょって船頭小屋に逃げ込んだと。 #雪女

2014-04-05 09:53:13
出雲弁 @izumo_ben

5)なんぞかんぞ言ったてて、休んとこがあってエかったと思っての。小屋ん中には、火鉢もなし、囲炉裏もなし。わずか2畳ほどの小屋で、戸が一つあーほどで、窓もね。 #雪女

2014-04-05 09:54:03
出雲弁 @izumo_ben

6)茂作と美濃吉は戸をたてて、タバコさかと蓑をかけて横しんなった。はじめは、そげんもさぶんなかったし、嵐もじきに止んと思っちょった。 #雪女

2014-04-05 09:54:36
出雲弁 @izumo_ben

7)おじじは、じきに寝入ったども、若け美濃吉は、なかなか寝れらんでのお。戸に打ちつけえ、マゲな風と雪の音を、長げこと聞いちょった。 #雪女

2014-04-05 09:55:14
出雲弁 @izumo_ben

8)川は轟々いっちょる。小屋は、海の藻屑なやに揺れて軋ん。まー、まげな嵐だわ。寒かったども、美濃吉もしまいに寝入ってしまったと。 #雪女

2014-04-05 09:55:57
出雲弁 @izumo_ben

9)美濃吉は、顔に雪が降りかかって目が開いた。小屋の戸は開いちょった。そーで、雪明りに照らさいて、全身白装束のおなごが部屋におる。おなごは、茂作の上にかがんこんで息を吹きかけちょー。おなごの息は、まぶしい白い煙なやなだった。 #雪女

2014-04-05 09:56:46
出雲弁 @izumo_ben

10)と思う間に、おなごは美濃吉の方に向いて、ちいとなかい、じっと見ちょった。美濃吉は叫ばかとしたけど、かいしき声が出せれらん。白いおなごは、美濃吉に向かって身をかがめてきたと。もう、ほおべたがひっつくやなった。 #雪女

2014-04-05 09:57:44
出雲弁 @izumo_ben

11)そん時、美濃吉は、そのおなごがほんにエニョバだと気がついた。目は、ほんにおぞかったどものー。ちょんぼしなかい、おなごは美濃吉をじーっと見ちょって、そーから笑って、ささやいたと。#雪女

2014-04-05 09:59:27
出雲弁 @izumo_ben

12)「お前も、オジジと同じやにしてやらかと思っちょったども、まんだ若けけん、なんだい、あわれになったわ。おまえはエエオトコだの、美濃吉。お前はそのままにしちょいちゃる。 #雪女

2014-04-05 10:00:08
出雲弁 @izumo_ben

13)だども、もし、誰ぞに~〜そーが、おまえのオカカでも〜~今晩お前が見たことを言いと、わしゃ、わかーけんの。そげしたら、殺いちゃる。忘れえだねで。」 #雪女

2014-04-05 10:00:42
出雲弁 @izumo_ben

14)そげ言いと、おなごは美濃吉から離れて、戸口からいんだげな。そげしたら、美濃吉は動けえやになった。美濃吉ははね起きて、外を見たども、おなごはもうどこにも見えらん。 #雪女

2014-04-05 20:25:27
出雲弁 @izumo_ben

15)雪がまげに小屋に吹き込んできたけん、美濃吉は戸をつめて、何本かつっかいぼうをやって開かんやにした。美濃吉は、この戸は風で開いてしまっただらかと思ったと。わしは、夢を見ちょったほどで、戸のとこの雪明りを、白装束のおなごに見間違えただわ。だども、そげ言い切る自信もね。 #雪女

2014-04-05 20:26:20
出雲弁 @izumo_ben

16)美濃吉は、茂作を呼んだども、返事がねもんだけん、おぞんなった。美濃吉は、くらがりに手を伸ばいて、茂作の顔に触ったども、氷なやだった。茂作は、凍えて死んじょった。。。 #雪女

2014-04-05 20:27:24
出雲弁 @izumo_ben

17)夜明けに雪嵐が止んと、船頭が船着場までもどってきた。日の出の時分に、船頭は、茂作の凍えた体のそばで、美濃吉が気を失って寝ちょーのを見つけたと。美濃吉は手当てさいと、じきん気がついた。だども、美濃吉はこのおぜ夜の寒さで、長病みをしたと。 #雪女

2014-04-05 20:28:10
出雲弁 @izumo_ben

18)美濃吉は、おじじが死んだことも怖がっちょった。だども、白装束のおなごを見たことは、一言も言わんだったと。病気が治おと、美濃吉は我が仕事に戻った。 #雪女

2014-04-05 20:28:41
出雲弁 @izumo_ben

19)朝ま、森に一人で行っては、日が沈んころに薪を抱えて帰ってきて、美濃吉のオカカが売るのをてごした。 #雪女

2014-04-05 20:29:30
出雲弁 @izumo_ben

20)何年か経った、ある冬の夕方だと思いなはい。美濃吉が帰りしなに、たまたまおんなじ道を旅しちょうおなごんこに追い付いた。おなごんこは、すらっとして背が高かて、えらいエニョバだった。そーで、美濃吉のあいさつに、小鳥が鳴くやな、耳ざわりのエエ声で答えての。 #雪女

2014-04-05 20:31:17
出雲弁 @izumo_ben

21)そーから、美濃吉はおなごんこと一緒に歩きながら、話を始めた。おなごんこは、自分の名前はお雪で、せんど両方の親を亡くしたばっかだ、てて言ったと。 #雪女

2014-04-05 20:32:09
出雲弁 @izumo_ben

22)そのおなごんこは、見れば見いほどに、まっとエエニョバに見えてきての。美濃吉は、おなごんこに、いいなづけでもおらいますかや、てて聞いたら、おなごんこは笑って、しゃんしはおらいませんですわね、と答えたと。 #雪女

2014-04-05 20:33:44
出雲弁 @izumo_ben

23)こんだはおなごんこの聞く番だわ。美濃吉が結婚しちょーか、予定がああか、聞いた。だけん、美濃吉は、面倒をみてやらないけんオカカが一人おって、「気のつく親戚の娘」も、美濃吉がまんだ若けけん、話は進んじょらん、と返事した。 #雪女

2014-04-05 20:34:23
出雲弁 @izumo_ben

24)身の上話もすんで、二人はながいあいだ、話もせずに歩いちょった。だども、ことわざにもあーとおり、「気があれば 目も口ほどに物を言う」。二人が村につくころには、二人は互いを好きになっちょった。 #雪女

2014-04-05 20:35:03