露大統領の北方領土訪問問題

国際関係論と安全保障論の学徒・fj197099さんのつぶやき。
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fj197099 @fj197099

露大統領の北方領土訪問について。言うまでもなく日本固有の領土である国後島への大統領の訪問は露の不法占拠を既成事実化するもので、重大な挑発行為であり日本として看過できない。これまでの交渉成果を無にするという意味において、外交上の影響も大きいものだろう。しかし他の見方も可能だ。

2010-11-02 07:37:25
fj197099 @fj197099

つまり、最初から露には日本が受け入れ可能な形で北方領土を日本側に返還する意思はまるでなく、日ロ協調の「機会の窓」は全く開いていなかったと考えるのであれば、露側がこのような挑発行為に出たことに驚く必要は全くないということになろう。すなわち、日本が今更失望する必要もないと言う訳だ。

2010-11-02 07:40:20
fj197099 @fj197099

北方領土については特に1993年の東京宣言や97年のクラスノヤルスク会談等で日本側が解決の見通しに希望を持ったことがあった。当時のエリツィン大統領が「2000年までの領土問題解決」に合意したかのような発言を行ったからだ。しかしプーチン大統領になってそうした希望は殆どなくなった。

2010-11-02 07:43:02
fj197099 @fj197099

露側の強硬姿勢への回帰に伴って日本側ではあろうことか四島返還という外交方針の基本を問い直すかの如き動きが生じてきた。それが二島先行返還論や面積二等分論だった訳だが、これらはいずれも四島返還の要求堅持よりも日本側の要求水準を下げる事で対ロ関係の改善を優先させるもので、問題があった。

2010-11-02 07:46:46
fj197099 @fj197099

メドヴェージェフ政権になって比較的、露の「露骨さ」が目立たなくなったせいか、ここ数年は特に日本側で「領土問題を動かさなければならない」という動きが強まっていた。これは自民党・民主党の政権に関係なく、例えば昨年の麻生政権は露の提案した「独創的アプローチ」なるものに合意していた。

2010-11-02 07:50:47
fj197099 @fj197099

しかし露の態度は1956年の日ソ共同宣言に基づき歯舞・色丹の二島返還でこの問題を最終決着するという姿勢に何ら変化はなかった。すなわち「独創的アプローチ」とはこの二島返還をもって日本に国後択捉の要求を諦めさせようとする露側に有利な提案だったのであるが、日本はそれに乗りかけたのだ。

2010-11-02 07:52:27
fj197099 @fj197099

麻生政権にも危うさがあったが、この点で特に危険だったのは鳩山政権であり、鳩山首相(当時)は今年5月に鈴木宗男元議員をロシアに送り込んで9月の訪ロでのメドヴェージェフ大統領との会談を調整させたと言われる。鳩山は普天間での失敗を対ロ関係改善という冒険主義で取り返すつもりだったのだ。

2010-11-02 07:55:06
fj197099 @fj197099

露側は鳩山の日本の国益を無視した対ロ宥和姿勢にほくそ笑んでいたに違いないのだが、その鳩山は普天間問題で6月に突然辞任。露側の思惑は崩れた。そして9月の代表選で菅首相が再選され、国交相時代に露の態度を「不法占拠」と断言した前原氏が外相になるに至って、露側の不安は高まったに違いない。

2010-11-02 07:57:48
fj197099 @fj197099

そして9月の尖閣沖での漁船衝突事件で日本が示した露にとって「意外な」程の日本の領土に対する強硬姿勢(船長逮捕)は露の不安感をさらに高めたに違いない。露側としては国後・択捉の実効支配の既成事実化を強化しなければと考えたのであろう。それが露大統領の国後島訪問に繋がったと考えられる。

2010-11-02 08:00:23
fj197099 @fj197099

無論、これまで二島先行返還論の旗振り役だった鈴木宗男元議員が有罪確定で失職したことも理由の一つになるのだろう。露側が日本に影響を与えるパイプの一つが失われたという訳である。こういう諸々の事情を考慮すれば、実は露側が今の段階で焦って北方領土訪問をするという事情はよく分かるのである。

2010-11-02 08:02:08
fj197099 @fj197099

長くなったが、何を言いたいかといえば、露大統領の国後島訪問は日本が特に驚くべき話ではなく、経緯を踏まえれば当然そうなるであろうと理解できる現象であるということだ。それは日ロ間に領土問題を巡り双方が受け入れ可能な解決の機運が最初から存在しなかった事を単に確認するだけの話なのである。

2010-11-02 08:04:41
fj197099 @fj197099

二島先行返還論や面積二等分論のような日本外交の基軸たる四島返還論(ただし帰属が確認されれば実際の返還の対応は柔軟に対処する)と相容れない解決法を提唱したきた論者は、露側の態度が変わらないことを見て判断を改めるべきであろう。そもそもが領土を犠牲にする二国間関係の改善などありえない。

2010-11-02 08:06:38
fj197099 @fj197099

日ロ間の領土問題を小手先の思いつきで解決することは不可能である。戦争によって奪われた領土は究極的には戦争のみで取り返すことができるであろう。アルザス・ロレーヌと同じだ。だが日本側が戦争をしかける必要はない。単に外交でこの問題を解決するのは不可能に近いと思った方がよいという話だ。

2010-11-02 08:08:37
fj197099 @fj197099

日ロ間は国交は正常化したが平和条約はないという不安定な状況であり、それは予見可能な将来には変わるまい。明言するか否かに係らず、露は日本にとっての仮想敵である。現在進行中で我が国固有の領土を不法占拠しているのだ。露を簡単に日本の味方に出来るという思い込みからは早く脱却すべきである。

2010-11-02 08:12:30
fj197099 @fj197099

外務省の元「ラスプーチン」、佐藤優氏の産経のコラム(http://bit.ly/aYTEsj)。氏は鈴木宗男元議員と極めて親密で二島先行返還論者でもあり、正直言えば私は氏の議論には賛同しかねるが、このコラムの末尾、日本は駐ロ大使を呼び戻す位の決意を示すべきとの指摘には賛同できる。

2010-11-02 11:16:19
fj197099 @fj197099

北方領土に対する露大統領の訪問に怒りを感じるのは当然だが、敵から学ぶ事も忘れてはなるまい。つまりは領土に絡む問題で決意を示すというのはそういう事なのだ。ビデオの一般公開はもちろんのこと、菅首相が尖閣を訪れるというアイデアもあるのではないか。APEC後にはなろうが考慮の価値はある。

2010-11-02 13:59:26
fj197099 @fj197099

前原外相が河野駐ロ大使の一時召還を決定との報道(http://bit.ly/dfnIXa)。結構だが、問題はAPECでの日ロ首脳会談をどうするかであろう。どの道、如何なる宥和ももはや困難だから、露大統領とは会わないというのも一つの選択肢だ。日本も決意表明をする潮時と言えよう。

2010-11-02 15:51:20
fj197099 @fj197099

おまけ。先の日中首脳「懇談」についての外務省の概要(http://bit.ly/awxriS)。さすがに今回は「立ち話」とか「自然な形で」とか、明らかなゴマカシを書くのは止めたようでストレートである。内容の乏しさがかえって過程から排除された外務省の悔しさを漂わせているとも言える。

2010-11-02 15:54:42
fj197099 @fj197099

中ロの反発、米国との協調など現在の政治状況は殆ど「前原外相一人勝ち」と言っても良い形ではないかと思う。日米・日中の外相会談・TPP参加を巡る国内論争・駐ロシア大使一時帰国の方針表明等、前原外相が注目されない日がない。領土や国益について筋を貫く姿勢は国民に好感されているようである。

2010-11-02 22:59:38
fj197099 @fj197099

それが先の産経世論調査等での首相に相応しい人物でトップになるという結果に表れているのだと思う。実は日本を取り巻く国際環境の悪化は前原外相にとって絶好の「腕の見せ所」となっているのである。前原外相の外交理念が極めてクリアで分かりやすいということも関係しているのだろう。

2010-11-02 22:59:44
fj197099 @fj197099

それはすなわち、中ロ等の不当な行動には断固たる姿勢を貫く、逆に米国との関係改善には積極的に取り組む、TPPのような貿易自由化にも国益の観点から積極的に応じてゆく、などの姿勢を意味している。何のことはない、「正しい事を言えば相手を傷つける」という愚かしい鳩山路線の裏返しに過ぎない。

2010-11-02 23:01:00
fj197099 @fj197099

領土や国益に係る問題では「相手を傷つけても正しい事を言う」のを恐れないという姿勢が評価されているのだと思われる。しかしそれは国益を巡る争いの舞台である外交の世界では余りにも当たり前のことで、今迄それがないがしろにされてきたことがむしろ信じられない状況だっただけである。

2010-11-02 23:03:02
fj197099 @fj197099

このまま民主党が公明党との連携ができなければ、来年三月の予算編成で菅政権は殆ど確実に行き詰る。再び代表選で今度は前原首相誕生、という結果になるかもしれない。それを考えると中ロの行動は正に自滅的であると思えるのである。何しろ前原外相を個人攻撃することで彼の人気を高めているのだから。

2010-11-02 23:05:10
fj197099 @fj197099

露大統領の北方領土訪問を別の角度から見るとどうなるか。というのは要するにこれは対中牽制政策の採用に当たって露との協力が困難になったことを意味するからだ。露は近年、急速な発展を続ける中国への警戒心を強めていたが、同時に中国との関係強化を深める志向も見せていた。

2010-11-03 04:35:39
fj197099 @fj197099

今回の露の暴挙は露が直ちに対中傾斜することを意味する訳ではない(その証拠に露は対中牽制のため印との関係強化も進めている)が、しかし連携のパートナーとして日本を選択しない意思は明瞭にしたと言えよう。領土問題で先鋭に対立する国家同士が中国の覇権阻止のため連携できるはずもない。

2010-11-03 04:37:59