「ツバメ・フライズ・ネオサイタマ」#1

ひたちえぼ @EVO_Hitachi

＊これからしばらく、ニンジャスレイヤーの二次創作小説をタイムラインに投下していきます。邪魔だと思われた方は何らかの方法でタイムラインから隔離して下さい＊実況したい方、誤字脱字の指摘をしたい方、とりあえず殴りたい人はこのタグを使おう #owl_nj ＊

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＊＊これから投下するお話はフクロウが昼寝の間に見ていた夢であり、ニンジャスレイヤー本編とはなんの関係もありません。たまたまここにいて、お話を投下する＊＊

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ネオサイタマ。猥雑と絢爛、栄華と欺瞞の街。平素は重金属酸性雨降りしきるこの街も、今日は薄い雲がオブラートめいて街を覆っている。 1

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ミツオモテストリートに狭い感覚で立ち並ぶビルの壁面を蹴り、隣のマンション階段へしめやかに着地する影あり。文字の欠けた『みん　持ってる』のネオン看板が、機能的な流線型のサイバネ脚に美しい光を投げかけた。 2

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影は階段の手すりを掴んだ。即座に鉄棒めいて一回転して下の階へ。よどみなく廊下を駆け進む。サイバネ脚に履かせた伝統的ブーツ「ジカタビ」によって、彼の足音はほぼ無音だ。 3

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やがて影は目当ての部屋を見つけると、バックパックから射出された物を大切そうに備え付けの郵便受け箱に落とした。カワイイな百合の花の、オリガミメールだった。 4

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『配達完了ドスエ』左耳のイヤフォンから合成マイコ音声。今日の業務はこれで終了だ。あとは、時間外業務――なにより大切なミッションをこなさなければならない。影――オジロ・メグロは、「安全」と編み込まれた真っ赤なネックウォーマーを口元まで引き上げた。 5

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ツバメ・フライズ・ネオサイタマ #1

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オジロ・メグロはパルクール・ヒキャクである。それも、ヒキャクのために両脚と呼吸器をサイバネ手術している、エリートだ。彼には誇りがあった。イダテンの誇りだ。 6

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現在のパルクール・ヒキャクは体力自慢の食い詰め者が選ぶ職の定番になっているが、エド時代には信書や軽貨配送に携わる者としての要職にあった。当時にしては破格であるテッポウの携帯さえ許されていた程だ。とはいえＩＲＣ化が進んだネオサイタマでは、どれほどの需要があるかは定かでない。 7

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ただひとつ確実に言えるのは、かつて栄華を誇ったヒキャク事業は、パーソナル端末がポストであり文机になった現在その業務を大幅に縮小したということだ。全てはショッギョムッジョ。驕れるブル・ヘイケの末路は皆さんもご存じであろう。 8

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今やヒキャク業界は氷の時代だ。ライフスタイルの多様化したネオサイタマに於いて、24時間配達は当たり前。少ない人員で過剰な連続勤務を強いた挙げ句配達中に転落死するヒキャクも少なくないという。 9

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しかし、オジロの勤めるシロヤギチャン・ユウビンは違う。オリガミメールだけでなく、バックパックに収まる程度のミニマル貨物、書類やフロッピーディスクなどを「ハヤイ・ヤスイ・アンゼン」をモットーにしており、実際その通りの仕事をするよう、現場たたき上げの社長自らが職員を鍛える。 10

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「この仕事は歴史あるイダテンの仕事だ。誇りを持ってやれ」イダテンとは、古来よりヒキャクが信仰する俊足のニンジャである。そのイダテンに恥じぬよう仕事せよという社風、そんな社風に胸打たれたヒキャクが集まり、シロヤギチャン・ユウビンは、一部大手企業も得意先とする中堅企業となった。 11

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しかしその風向きも変わる。つい四日前の出来事だ。帰宅途中のシャグチ社長が、オジロのアンドン（ナビゲート役の業界用語である）だったタイシロが屋台の豚足を喉に詰まらせて亡くなった。 12

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ヤギ・シャグチ社長、およびリコウ・タイシロの社葬は、中堅会社らしい規模で、しめやかに執り行われた。取引先、競合他社、社長個人の友人、知人、同じビルの住人、そしてオジロを始めとする非番の従業員たち。ヤギ未亡人に声をかけられたのは、そのときだった。 13

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ツバメ・フライズ・ネオサイタマ # 1 終わり # 2に続く