古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #18

更新十八回目のまとめです。 ぎこちないながらも歩み寄ろうとする古鷹と青葉。それを時に見守り時に後押ししようとする衣笠と加古。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

秘書艦の仕事を終え部屋に戻った時にはもう夕方だった。雷ちゃんには重巡は休みなんだから秘書艦もいいわよと言われていたけれど、当番はこなしておきたかったし雷ちゃんに対する感謝の意味もあった。加古をベッドに寝かせる。古鷹ねーさんはまだ戻っていない。青葉型の部屋に戻ると青葉が起きていた。

2014-04-10 21:55:24
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉はベッドの上で座り込み、ぼーっと宙を見ている。顔には泣いた痕が生々しく残っていたけれど、その表情は憑き物が落ちたかのようにさっぱりとした印象があった。結われていない藤色の髪の毛が寝癖でぼさぼさ。前髪もいつも通り二本ぴょんと跳ねている。私はベッドの縁の青葉に一番近い所に座った。

2014-04-10 22:02:43
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よく眠っていたとみえて青葉はまだ寝ぼけている。その頭に手を乗せて撫でる。普段なら「なにするんですか」と嫌がられるところだけれど、今日は素直に撫でられてくれている。当たり前の姉妹に戻ったような気がして嬉しくなった私は、両手で青葉の頭をわしづかみ、思い切りわしゃわしゃとやった。

2014-04-10 22:07:55
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「ちょ、わっ、衣笠何するんですかあ!」 ようやく眠気の覚めた青葉が私の手を振り払って飛び退く。ああ、私の知ってる青葉だ。大げさな仕草も慌てた声も長らく目にしていなくて愛おしくなる。にっと笑って青葉に言った。 「良く寝てたわね。いっぱい泣いて、少しはすっきりした?青葉」

2014-04-10 22:11:27
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉がおずおずと頷く。お腹すいてない?と食堂からギンバイしてきたパンを差し出す。インスタントだけどスープも用意してやると、青葉は黙々と口に運んだ。お腹がすくのは元気な証拠。私はまた嬉しくなる。 「衣笠は今日秘書艦じゃ……?」 「もう終わったわ。元々重巡は今皆休みもらってるしね」

2014-04-10 22:17:11
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そうですかと青葉が返す。私は青葉の後ろに回って髪を梳かしてやる。 「雷ちゃんたちも喜んでたわよ。青葉が古鷹ねーさんと会えたこと」 青葉がばっと振り向いた。心なしかその頬が赤い。 「い、言いふらさなくてもいいじゃないですか……」 「言いふらしてないわよ?天龍たちから聞いたんでしょ」

2014-04-10 22:22:33
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青葉が頭を抱える。昨日天龍と龍田さんには私たちが青葉のいる部屋に入るところで遠慮してもらったけれど、その足で仲のいい駆逐艦や軽巡のもとに行ったであろうことは想像に難くない。ただでさえここには噂話の好きな年頃の艦娘ばかり。青葉たちの噂は今頃鎮守府中に広まっているに違いない。

2014-04-10 22:28:15
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「雷ちゃんもテンション上がってあんな作戦計画出してくるくらいだしね」 「作戦計画って何のことですか?」 口が滑った、と私は思った。けれど一瞬後に今伝えておくのも手かと思い直し、サブ島沖海域を青葉を旗艦に第六戦隊と吹雪叢雲で攻略する計画を話した。途端に青葉の顔が青ざめる。

2014-04-10 22:33:44
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微かに左右に首を振りながら青葉が言う。 「無理ですよ……そんなの……青葉には……」 「そーね。私もそう思うって雷ちゃんには言っておいたわ」 え?と青葉が拍子抜けしたような顔をした。ほら、スープが冷めるわよと顔を前に向けさせる。シュシュで青葉の髪をまとめてやる。

2014-04-10 22:37:21
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「サブ島沖海域じゃなくても、青葉には無理です……。また同じことが起こったら……また青葉が仲間もがっ!?」 青葉の口に残ったパンを詰め込む。 「それはいいから。ほら食べちゃいなさい」 「はあ……」 腑に落ちないと言わんばかりの顔で青葉がパンを頬張る。その時部屋のドアがノックされた。

2014-04-10 22:44:45
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青葉が飛び上がり、慌てて布団にもぐりこむ。 「何してんのよ青葉」 「いえ、その……も、もし古鷹さんだったら……」 「何が困るのよ」 「で、でもっ……」 どうやら古鷹ねーさんに会うのが恥ずかしいらしい青葉の様子に呆れながらドアを開けると、そこには眠たげな目をこする加古が立っていた。

2014-04-10 22:49:37
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私はあらと思った。昨晩徹夜で古鷹ねーさんの話に付き合っただけあって、加古は私が執務室からおぶって帰ってきた時も全く目を覚ます気配がなかったのに。 「お早いお目覚めね、加古」 「古鷹に起こされたんだよ……ふああ、眠い」 「古鷹ねーさんが?なんで?」 加古がもう一度あくびをして言う。

2014-04-10 22:57:16
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「青葉と会うのが照れくさいんだってさ……昨日あんだけ青葉青葉ってうるさかったくせに……で、あたし青葉に『一緒に夕食食べない?』って聞いてきてって言われてさ……」 ぷっと思わず吹き出してしまう。もう、古鷹ねーさんったら可愛いんだから。布団の中で聞き耳を立てているであろう青葉に言う。

2014-04-10 23:01:58
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「青葉ー?『喜んで』って返事していいわねー?」 「ちょ、ちょっと待ってください!」 青葉が慌ててベッドから飛び出してきた。 「いいじゃない。折角仲直りできたんだし二人でしっぽりしてきなさいよ」 「で、でもですね……」 身体をもじもじさせながら青葉が言った。 「その……青葉は――」

2014-04-10 23:08:42
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十分時間を下さい。あと加古さんと衣笠も一緒でいいですか。 そう青葉は返事をした。慌てて着替え、鏡の前で身だしなみを整える青葉を私はベッドから見守った。何度も何度も鏡を見て入念に髪を整えているのがなんだか可笑しい。 「それにしても、私たちまで一緒で良かったの?せっかくなのに」

2014-04-10 23:17:51
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「だって、その……悪いじゃないですか!加古さんと衣笠に!」 青葉が見え見えの言い訳を口にする。二人きりだとどうしていいのかわからないんだなと思った私がニヤニヤしていると、話題を変えようと青葉が言った。 「そ、それにしても衣笠なんかおかしくないですか?普段だったらもっと……」

2014-04-10 23:23:40
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「『絶対に古鷹ねーさんと二人で行きなさいよ』とか言うだろうって?」 青葉が頷く。確かに昨日までの私ならサブ島沖攻略の件も『無理とか言うんじゃないわよ!』と言っていただろう。けれど今の私は不思議とそんな気持ちにならなかった。昨日加古に黙って見守るのも大事だと教えられたせいかな。

2014-04-10 23:30:42
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉の方を見る。不思議そうな顔を顔をした青葉が見つめ返してくる。私は口を開いた。 「鬼怒が言ってたのよ。『どんなことがあっても青葉は日本に帰りさえすれば大丈夫』って。私も同じ意見だけど、ちょっと違うのは」 青葉に笑いかける。青葉は『古鷹』のそばにいさえすれば大丈夫、ってことよ。

2014-04-10 23:36:26
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私の言葉を聞いた青葉が赤面して俯く。口の中で「そんなことは」とかなんとか言っていた気がするけど聞こえない。 「あとね、雷ちゃんにはこう言ったのよ。『今の青葉には無理だと思う』って」 青葉が顔を上げる。道は開けた。焦らなくていいんだ。少しずつ、昔の私たちに戻っていけばいい。

2014-04-10 23:43:44
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

部屋の時計を見上げて言う。 「ほら、もう十分過ぎてるわよ?」 「ええっ?!」 「嘘よ」 「やめてくださいよ衣笠あああ!」 うん、調子出てきてるじゃない。あはは、と笑いながらベッドを降り、ドアを開けて廊下に出る。ちょうど古鷹ねーさんと加古も部屋から出てきたところだった。

2014-04-10 23:47:12
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「遠征お疲れ様、古鷹ねーさん」 「ありがと、衣笠。あの、青葉は?」 「心配しなくても、今出てくるわよ」 ちらと部屋の中を振り向く。私たちの声を聞きつけた青葉が部屋から飛び出してくる。 「お、お待たせしました!」 「ううん、全然待ってないよ……青葉」 古鷹ねーさんが微笑む。

2014-04-10 23:53:26
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉の顔を見て、古鷹ねーさんの顔がぱあっと明るくなる。まるで、古鷹ねーさんの周り中に花が咲いたようだった。それに見惚れる青葉が可笑しい。それにしても、加古はなんでこんな時まで今にも寝そうなのよ。そう思いながら視線を向けると、眠たげだった加古の目がぱっちり開いて私にウインクした。

2014-04-10 23:59:15
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古鷹ねーさんと青葉はお互い見つめ合っていて気づかない。加古の意図を察した私は、足早に加古に近づいた。わざとらしく声を出す。 「あっ、『加古ねーさん』大丈夫!?」 タイミングを合わせて倒れこんでくる加古を抱きとめる。もちろん加古は狸寝入りだ。そのまま加古を肩に担ぐ。

2014-04-11 00:05:10