アイヌアニメ第二話『赤ん坊の知らせ』

アイヌ文化研究者・丹菊逸治氏による解説。
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丹菊逸治 @itangiku

さて、アニメの話でもするか。

2014-04-13 18:52:02
丹菊逸治 @itangiku

アイヌ文化財団による、アイヌ口承文芸アニメ『オルシペスウォプ2』。公式サイトはこちら。http://t.co/YJE4JPUPOr 私も文化考証で参加しました。

2014-04-13 18:59:13
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。 アイヌ語音声(1967年版) https://t.co/xmNBM2fCkl アイヌ語音声(2014年版) https://t.co/hzeJXwD8NA

2014-04-13 18:59:42
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。子守唄にアニメをつけたもの。同じやり方で前回は『60のゆりかご』をやったが、今回は少し違う感じのもの。なお、私自身はこの作品の文化考証を担当していない。

2014-04-13 19:02:05
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。この歌の「原歌」(1967年録音)は白糠の故・四宅ヤエさん(1904年生まれ)という方が歌っていたもの。新規録音(2014年)のほうは、お孫さんに歌ってもらったもの。

2014-04-13 19:05:48
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。アイヌの子守唄は基本的に「個人の作品」である。大雑把な構成は伝承され、また細部は定型句でできているので、「著」というより「編」というべきかもしれないが。これは北方の芸術に共通する特徴。

2014-04-13 19:06:45
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。ウポポなんかと違って、叙情歌や子守唄ってのは基本的に「個人の作品」だから、第三者が「伝承曲でしょ」ということで勝手に歌っていいかどうかは微妙な問題。

2014-04-13 19:08:35
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。そういう意味ではこれは「みんなが共有している歌」ではなく、「四宅さんの歌」である。だからお孫さんに歌ってもらえて良かった。第一に子孫が受け継ぐべきものだから。

2014-04-13 19:09:24
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。お孫さんは歌手ではない。そもそも普段から歌を歌う方ですらない。それなのに一生懸命練習して歌ってくださった。編集委員会としても本当に感謝してます。

2014-04-13 19:11:16
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。さて、アイヌ伝統音楽の「子守唄」というジャンルは、散文や神謡、叙事詩などとは異なり、構成が詩的である。歌詞をそのまま言葉通りに受け取ると解釈を誤る。

2014-04-13 19:12:54
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。また「録音された子守唄」は本来の生活の中で歌われていた子守唄とは異なり、「作品」として再構成されている。ときには壮大な物語仕立てになったものもある。前回と今回アニメ化したものがそう。

2014-04-13 19:15:02
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。今回の子守唄も、別にもっと短いバージョンが存在する。おそらくそちらのほうが本来の「子守唄」に近い形。そのバージョンではそもそも「昔ある村に~」という部分がなく、あまり物語的ではない。

2014-04-13 19:17:45
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。もう1つ重要なことは、「子守唄」は一般的に子供向けの内容ではないということ。むしろ子供が眠くなるような内容である。浮気性の夫への恨み言とか。

2014-04-13 19:20:01
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。この子守唄でも夫はいない。なぜいないのかは語られていないが、とにかくいない。解釈する側からみれば、いろいろな可能性が考えられるけれども。

2014-04-13 19:20:53
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。音楽的にみてもちょっと面白い子守唄である。歌は舌を震わせるhororse(いわゆる「ホロルセ」)で始まる。「ホロルセ」は普通はあまり音を高低させない。メロディーがここまでなぞられるのは珍しい。

2014-04-13 19:21:41
丹菊逸治 @itangiku

いやーほんとは「子守唄」はアニメに向かないと思うんですよ。眠くなるから。

2014-04-13 19:22:35
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。私が文化考証を担当していない作品なので、内容については、さらっと最低限のことだけを解説しておくことにする。ちなみに、今回の「日本語版」はこんな感じ https://t.co/w9CRa85v3E 

2014-04-13 19:27:48
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。ほんとうは前回の『ハンキリキリ』の日本語版も、こういうふうにアイヌ語の後ろに日本語訳を被せたかったんだけど、準備する時間がなかった。

2014-04-13 19:29:46
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。さて冒頭、母子の場面から。泣き止まない赤ん坊が「シンタ」と呼ばれる「ゆりかご」に入れられている。入れられているというより、縛り付けられている。これは囲炉裏で火傷をしたりしないためである。

2014-04-13 19:30:42
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。「ゆりかご」は上からロープでつるし、さらに足で紐を引っ張ってゆすっている。もちろん、手でゆすってもいいです。

2014-04-13 19:32:00
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。母親がタバコを吸っているのは北方諸民族の伝統文化では全く問題ない。赤ん坊の前で吸っているのも全く問題はない。タバコはそもそも心を落ち着けるための「よいもの」とみなされていた。

2014-04-13 19:33:08
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。また、タバコの火は、火の神そのものでもある。アニメの演出では囲炉裏の火の神に向かって祈っているが、歌詞をタバコの火に祈っていると解釈してもいいだろう。なおこの地域では火の神は「おばあさん」ではなく「夫婦2柱の神」。

2014-04-13 19:34:31
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku 「子守唄は眠くなるんだから子供向けアニメにふさわしくない」と私が言うと、みんな私が冗談を言っていると思うらしい。そういう人たちが文化事業決めてるわけですよ。

2014-04-13 19:37:45
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。母親は口の周りと手に伝統的な刺青をしている。服の模様は袖周りにだけ入ったちょっとラディカルなアニメオリジナルのスタイル。普通は裾や襟首など開口部には全て入れる。

2014-04-13 19:40:13
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第二話『赤ん坊の知らせ』。タバコはキセルで吸う。これは北方に広く分布している。ニヴフ文化もトゥングース系諸文化もそう。名称もよく似ている。アイヌ語のtanpakuは日本語から入ったのか、満州語から入ったのか。語形だけからみると満州語だろうが。

2014-04-13 19:42:29