#トラ泊神戸支部~晴天のサブ島沖編

トラック泊地サーバー所属で神戸に支部を構える提督と、そこに所属する艦娘たちを描いたお話。 三番目のトラ泊神戸支部の第六戦隊話となります。 今回は青葉メインです。この回の前話にあたる『加古の過去語り編』『古衣は入れ替え時編』もあわせてお読み頂けたらと思います。
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ですか @desuka_desuyo

暗闇を貫く一筋の光線。目の前で被弾していく大切な人の姿を、私はただ見ているだけしか出来なかった。その時、一際大きな爆発が彼女を包む。届くはずもないのに、私は咄嗟に手を伸ばした。 「古鷹!」 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 00:52:54
ですか @desuka_desuyo

ハッと目を覚ますと、私は天井に右手を突き出すような形でベッドに寝ていた。身体中汗だくで、心臓はバクバクと大きな音をたてている。私は伸ばしていた腕で額の汗を拭い一人呟いた。 「夢か」 しかもとんだ悪夢を。先ほどの夢を思い出しながら、今度は心の中で呟く。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:02:05
ですか @desuka_desuyo

サボ島沖海戦。重巡青葉が大破し、それを庇うようにして重巡古鷹が沈んだ戦い。あの時のことは艦娘となった今でも夢に見る。それほどまでに私にとって衝撃的な出来事だったということだろう。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:07:03
ですか @desuka_desuyo

このまま眠ってしまうこともできず、私は静かにベッドから起き上がった。チラッと隣のベッドに目を向ける。ぐっすりと寝ている古鷹に安心するとともにズキリと心が痛んだ。あの時彼女を沈めたのはお前だ、と耳元で囁かれたように感じた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:15:30
ですか @desuka_desuyo

彼女を起こさないように、そっと部屋の扉を開ける。音をたてないよう注意しながら、私は廊下に出た。 先ほどの夢によってかき乱された心を落ち着かせようと、暗いままの廊下を当てもなくふらつく。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:23:54
ですか @desuka_desuyo

あの時の夢は今まで何度も見てきた。しかし最近は見ていなかったため油断していたのだった。あの時の出来事を思い出し、胸が苦しくなる。私のせいで古鷹が……。そんな思いが心を埋め尽くしていった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:28:25
ですか @desuka_desuyo

ふらふらと建物内をうろついていると、執務室から明かりが漏れていることに気付いた。こんな夜中にどうしたのだろう。私は気になってそっと執務室のドアを少しだけ開け、そこから中を覗くことにした。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:31:12
ですか @desuka_desuyo

執務室の中では、司令官が多くの資料を整理しているようだった。大戦時代の資料が見えることから、もしかしたら新しい海域の資料が送られてきたのかもしれない。そのようすを眺めていると、ある2文字が私の目に飛び込んできた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:34:38
ですか @desuka_desuyo

「司令官! それは!」 こっそり覗いていたことも忘れ、私は司令官のところまで駆け寄っていた。 「うわっ、青葉! なんでこんな時間にいるんだよ」 驚いた顔で司令官は言うが、今はそんなことどうでもよかった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:38:37
ですか @desuka_desuyo

『サボ島沖海戦』 司令官の持つ資料には、はっきりとそう書かれていた。どうしてそんなものを調べているのだろうか。私は嫌な予感を覚えつつ司令官に尋ねた。 「その資料って何に使うんですか?」 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:42:33
ですか @desuka_desuyo

「これ? これは次の海域を攻略するために何か使えないかと思ってね。それがどうかした?」 司令官の言葉に、私はハンマーで叩かれるような衝撃を感じた。次の海域の攻略の為。司令官の言葉が嫌な予感を確信へと変えた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:45:12
ですか @desuka_desuyo

「次の海域はサボの戦いがモチーフなんですか?」 「そういうことになるね」 出来れば否定して欲しいと願っていたが、返ってきたのは肯定の言葉だった。あの時の戦いを思い出し、鳥肌が立った。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:50:53
ですか @desuka_desuyo

深海棲艦については謎なことが多く、その一つになぜか現れ方が過去の戦いをなぞらえているというのがある。そういう場合はその時の海戦名をもじった名前が付けられており、今回の海域は『サブ島沖』と書かれていた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 01:54:11
ですか @desuka_desuyo

「この海域へはいつ出撃するんですか?」 私の問いに司令官は少し考えてから答えた。 「数日中には出撃予定だけど」 「それなら青葉を艦隊に入れてください!」 勢い勇んでそう言うと、司令官は驚いた顔で聞き返した。 「厳しい戦いになるけど大丈夫か」 私は力強く頷いた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:03:28
ですか @desuka_desuyo

「そうか。ではそのことも踏まえて編成を考えておくよ」 「はい、お願いします」 先ほど見た夢の光景が頭をよぎる。今度こそ勝ってみせる。私はそう決意したのだった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:14:03
ですか @desuka_desuyo

それから数日後、サブ島沖への出撃が決まった。ヴェールヌイを旗艦とし摩耶、私、時雨、金剛、比叡の6人で出撃する。問題の海域に着く頃にはすっかり日も落ちていた。あの時の戦いを思い出す。大丈夫、今度は絶対勝てる。そんなことを思いながら前を進む摩耶について行った。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:20:00
ですか @desuka_desuyo

「敵だ」 先頭のヴェールヌイが静かに言った。前方をみると暗闇に紛れてゆらゆらと蠢くものが見える。 「出来るだけ近づいた後戦闘し。すぐさま離脱する」 ヴェールヌイの言葉に皆が静かに頷いた。 「それでは行くぞ」 ヴェールヌイの言葉を合図に、一気に速力をあげた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:24:27
ですか @desuka_desuyo

だんだんと敵の全貌が見えてくる。どうやら相手は重巡を旗艦とする前衛警戒艦隊のようだ。そんなことを思っていると先頭のヴェールヌイが魚雷を発射した。敵の誰かに当たったのか大きな爆発音が聞こえる。それを皮切りに砲撃の打ち合いが始まった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:29:58
ですか @desuka_desuyo

ドンという砲撃の音が聞こえるたびに。バシャンという着弾の音がするたびに。あの時の光景が脳裏に浮かんでいった。どんどん心を暗い闇が埋め尽くしていく。冷静さを失い、無我夢中で向けた砲の先にあったのは古鷹の姿だった。 「ふる、たか……?」 両目に涙が浮かぶ。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:37:16
ですか @desuka_desuyo

「バカ! 何してんだよ!」 摩耶の怒号が響く。ハッとしてよく見ると、そこにあるのは黄色いオーラを纏った重巡リ級の姿だった。ニヤリと笑うリ級の砲がこちらへ向けられていることに気付いたのは、持っていた主砲が爆ぜた時だった。 目の前が真っ暗になる。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:41:26
ですか @desuka_desuyo

あの時の光景がフラッシュバックする。全身を突くような痛みを抱え、必死に逃げようとしたとき、私の前に飛び出る姿が見えた。古鷹だった。共に戦った仲間が、実の姉妹のように過ごした姉が、お前たちが狙うのはこっちだと言わんばかりに、私の前に飛び出す姿が見えた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:49:02
ですか @desuka_desuyo

「逃げて!」と叫ぶ彼女は瞬く間に敵の集中砲火に遭った。だがボロボロの私には、彼女を助けることも、手助けすることも出来なかった。出来たのは彼女の言うとおり逃げることだけ。私は彼女の無事を祈りながら振り返ることも出来ずにその場を去った。 彼女は帰ってこなかった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 02:54:15
ですか @desuka_desuyo

「青葉、しっかりしろ! おい、青葉!」 摩耶の声によって意識が現実へと引き戻される。私は海面にしゃがみ込んでおり、摩耶はそんな私の両肩を掴んで必死に声を掛けていてくれたようだった。隣を見ると、時雨が私の右手を掴んで心配そうにこちらを見つめていた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 03:02:04
ですか @desuka_desuyo

「青葉、大丈夫?」 金剛が心配そうに言ってから、ハンカチを差し出す。そこで初めて自分が泣いていたことに気付いた。 「被弾したと思ったら急にしゃがみ込んで焦ったんだからな」 「ごめんなさい」 摩耶の言葉に謝ると、慌てるように彼女は私の背中をさすった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 03:08:48
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