響と瑞鶴が回想する小冊子のお話

艦船を擬人化するというだけなら、いろいろな祖先となるものはあるかもしれませんが、軍艦の一人称として一つの「作品」にして小冊子などにまとめたものは、これは最初かもしれませんね。 艦これというより、艦これ派生同人誌の祖先かもしれない方々のお話。
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衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

えー、実際に帝国海軍兵として戦場を駆け巡った方が、『艦これ』に先立つこと35年近く昔に艦艇を擬人化していた!……っつー例を最近2つほど知りましたので、その話をします。

2014-04-14 23:04:03
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

終戦後、戦没を免れた響は復員船として活躍し、さらにその後はソ連に引き渡された……っつー歴史については、提督の皆様ならよくご存知かと思いますウラー。で、その響の乗員たちによって編まれた『不沈鑑響の栄光』(1978年刊)という分厚い記念誌によりますと

2014-04-14 23:13:25
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

昭和21年末期頃(推定)に、艦内で『ふくいんせん、響記念号』という90ページの冊子が作られていたそうなのですな。「冊子」と言っても。「わら半紙にガリ版で印刷」したものなので、かなり手作り感あふれるアイテムだった模様。

2014-04-14 23:16:27
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

でもってその『響記念号』にゃ、橋本功さんという方が『「響」は想う』と題する文章を寄せています。「静かに過去を振り返るとき、私の一生は苦労と夢の交響楽でした」という詩的な出だしで始まるこの記事は、今で言うところの「なりきり」的な手法で元駆逐艦・響の歴史を語るものでした。

2014-04-14 23:20:48
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

復員船としての役目が終わり、ソ連に向かう日が近づいていることについて、この「響」は切々と以下のように訴えます。「私の重大使命も最後に近い。輸送が終れば永い間私の老体を助け、いたわり、共にはげま合つた思い出多い友達とも、永久に別れねばならぬ。そして私の体は一体どうなるのでせう」

2014-04-14 23:25:35
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

「戦争に勝つたなら私は美しい着物を着て、毎日海で魚と面白く愉快に暮せるでせう。敗戦の今、私は一介の鉄屑となるのでせうか。それとも知らぬ他国で老の身を淋しく暮らすのでせうか。私はいつまでも生きてゐたい。これからの日本の進むべき道を眺めてゐたい」

2014-04-14 23:28:13
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

「ああ私は何処にも行きたくない。一介の鉄屑にならうとも懐かしい日本に住んでゐたい」……ずっと響と一緒に戦ってきた人が、これからの日本の先行きが全く見えない状況下でこれを書いたのだと思うと、ひたすらに切ないです。

2014-04-14 23:35:21
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

ちなみにこの「復員船の響」、文中で何度も今の自分の姿を「年老いた」と形容してますし、また「今私はあまりにも惨めに変り果てた姿に悄然。只々胸込み上げて男泣きに泣けてくるのです」とも言ってるので、『艦これ』の方のロリ駆逐艦とは真逆なおじいちゃんキャラですね多分。

2014-04-14 23:40:24
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

それに対し、瑞鶴の生き残りたちが作った『瑞鶴史』(1979年刊)所載の『私は航空母艦「瑞鶴」です』っつー文は別の意味で凄いです色々と。まず筆者の高橋定さんの来歴からして凄い。 http://t.co/7Gav80XA5y …と、ウィキペデイアにも固有の記事があるほどの歴戦の強者!

2014-04-14 23:46:27
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

では、この「瑞鶴」の自己紹介を見てみましょう……「顧りみますと、私の生涯は3年1か月でございました。人間の生涯に譬えますと、花も羞じらう17、8才の娘時代から、お色気のこぼれる27、8の若奥様の頃までに当たりましょう。この間に、女の幸せと苦しみを十分に体験しました」……おおおお。

2014-04-14 23:57:10
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

「私の身長は242.2m、ヒップ(飛行甲板)は29m、バスト(弦側)は26mで、とてもスマートな姿態でございましたが、昭和17年の暮に、(中略)28,000噸に肥りましたので、(中略)お口の悪いパイロットの皆様から、お前のお尻には脂肪が付き過ぎた、と言われました」……うううう。

2014-04-15 00:00:42
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

これ、戦後に「進駐軍兵への傷害事件を起こし、1953年(昭和28年)5月まで知り合いにかくまわれながら逃亡生活を送」り、さらに海自入りしてから「最終階級は海将」まで昇りつめた方の文章です。

2014-04-15 00:04:34
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

なんつーか……それほどの武人が、今は亡き所属艦への「哀惜」と「萌え」とをギュギュッ!と濃縮してペンに宿らせた感がひしひしと伝わってきて……すげえイイっすね、これ!

2014-04-15 00:09:35
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

この「瑞鶴」、帝国海軍によって建造された空母たちについて、赤城を長姉・信濃を末妹とするひとながりの「姉妹」だと捉えています。また同型艦の翔鶴を「双生児の妹」と呼んでいたり。そのあたりは『艦これ』の瑞鶴と違ってますが……

2014-04-15 00:20:34
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

本来もの言わぬ兵器に「うら若き女子」としてのキャラクター性を与え、その歴史を自ら解説させているという点で、こいつぁいわゆる「萌えミリ」の先駆だと言ってもいいのでは?……と、思いまする。

2014-04-15 00:23:44
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

「瑞鶴」のトークは、次のようにしめくくられます。「私は悪戦苦闘して敗れました。そして、子孫である皆様方に汚名を残しました。お恥ずかしうございます。しかし、せめて皆様方にだけは、私の苦闘の跡を知って頂きたかったのです。長々とお喋りしたのもそのためでございます」

2014-04-15 00:27:45
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

「哀れと思召して、一掬の涙を注いで下されば、これに過ぎる喜びはございません。皆様のご自愛とご健闘を遥かに祈っております」

2014-04-15 00:30:29
衆道士ペドフェチ @hihonsyudo

世間にゃ「萌えミリ」というジャンルに対し、「不謹慎! 生命を賭して懸命に戦った先人を侮蔑するものだ!」と腹を立てる向きもいらっしゃるようですが…いやいや他ならぬその「先人」の中に、こうして自分の「戦い」を後世に知ってもらうための一手法として「擬人化」を用いた実例があったのですよ。

2014-04-15 00:35:20

コメント

Mizuta Fumitaka @Humi_TW 2014年4月15日
艦艇又はミリタリの擬人化を永らく愛好されている方々にとっては既知の情報なのだろうけれど、このような事実を掘り起こされる方が居て、それを目にする事が出来るなんて…「艦これ」をやっていての一つの楽しみであり、素晴らしさだと感じるね
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司城肥後介誠治 @opinel432 2014年4月15日
『瑞鶴史』『不沈艦響の栄光』ともに国立国会図書館に所蔵あり。ただし国会図書館は貸出をしないので、直接来館して確認するか、コピーを依頼するかしかない(要会員登録)
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neologcutter @neologcuter 2014年4月15日
歴史は繰り返す、それが歴史の悪い点…ばかりじゃないよね?!
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ぬこ田ぬこ道(国民脇差協会会長) @nukomiti 2014年4月15日
人間は、と言うか、日本人は変わらない。と、言うか、絵を描ける人が増えただけ日本の文運は亢進したのかもしれない。
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伊達要一@野営班(とうきょうDD954) @Yohichi_Date 2014年4月16日
本件、もっと遡れそうな気がする。文献畑の方には是非発掘して欲しいと思う
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BUFF @geishawaltz 2014年4月17日
船を「She」と呼ぶのは昔からだったから、そこから自然な発想ではなかったかと。しかしどういうきっかけで彼女呼びするようになったんだろう?
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
geishawaltz 元来船舶は"女性名詞"です。その明確な証拠は、ドイツ語等の"性変格"が存在する言語に見受けられます。"性変格"とは、不定冠詞における"性毎に別々の格変化をする"と云う事です。英語の性変格は殆どなくなりましたが。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
geishawaltz さて、実は、船舶を女性として扱う理由ですが、実は海が男性名詞だったためです。と云うか、海自体は嘗ては海神ポセイドンそのもので、故に船は海に愛されるべき存在として、航海の無事を祈り女性として扱ったのです。ポセイドンの嫉妬は即海難につながるとされました。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
geishawaltz 遠くギリシャ時代でこの様に扱ったのですから、もっと古い時代は…と云うと、同じく海は男性の神として扱われました。河川はその娘達なので女性でした。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
もっと遡れば何時から海を男性、船を女性として扱う様になったのかは、もっと突き詰めれば面白い結果が出そうですね。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
唯皆さん、"萌え"と云う"間違った形容詞"を平気で使ってるけど、これは、"悶え"の誤読が切っ掛けの"性的表現"の一つなので、多用は品格を疑われます。"オタク"を肯定的に使用するのも然り。一般の人は"オタク"=気色悪いの公式で当て嵌めますよ。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
そう云えば、昔の船の舳に女性の彫刻を着けている海難回避策がありますが、これも、船舶を女性として扱う一つの方法ですね。その彫刻像を見れば、一目で女性と判る。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
@hihonsyudo この本書籍の出所が知りたいです。現在ネット上には古本さえ存在してないみたいなので。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
こんなページを発見しました。http://www3.ocn.ne.jp/~kkoomei/hibikitowatasi/hibikitowatasi.html どうやら乗艦者の記録ページらしく、お年を召した方々の写真も。この方々が乗艦して戦ったんですね。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
この二冊の書籍を原作にした映像作品が見てみたいです。アニメでなくて実写でも面白くなりそうなので。寧ろアニメ実写混交で。嘗ての名作『二十四の瞳』のニッセイアニメスペシャルみたいに。
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
そうすれば、響がロシア・ソビエト連邦に賠償艦として"ヴェールヌイ"として移籍した後のロシア軍艦時代も映像化出来ると思います。勿論、ロシア軍が協力してくれればの話になりますが。同じく"丹陽"時代の"雪風"も一緒に映像化…
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ちいさいおおかみ〜クリアカード編〜 @siu_long 2014年4月18日
…、あ、若しこれが実現したら、ヴェールヌイ時代を含めてナレーターはジェーニャさんにお任せしたいなぁ。彼女、ロシア人だしスラブ美人だし。ヴェールヌイのイメージぴったりじゃなイカ?
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