【twitter小説】猫の管理人#4【ファンタジー】

街に猫が増え続けている…清掃ギルドの青年は猫をなんとかしようとするが、そのとき夢に現れたのは猫の魔法使いだった。小説アカウント@decay_world で公開したファンタジー小説です。この話はこれで終わりです
減衰世界 Twitter小説
rikumo 565view 0コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:11:29
     レウンははっとして目が覚めた。つい二度寝をしてしまった! 昨日の光景は夢だったのだろうか、だが今日も仕事がある。時計はすでに出発時間を差していた。急いで着替えて、髭をそる。そして朝食も取らぬまま家を出た。 89
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:18:56
     急いで走り、バスに乗り込む。そして大きく息を吐き、時計を見た。ギリギリ間にあうようだ。レウンは一息ついて昨日のことを思い出した。結局アレは何だったのだろうか。自分はあの場所に行ったのだろうか。どこから夢だったのだろうか。 90
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:23:19
     バスの中に書いてある日付のプレートは確かに翌日の日付になっていた。猫はどこに行ってしまったのだろうか。バスの窓から街を見ても、あれほどいたはずの猫の姿は見当たらなかった。 91
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:26:43
     街はいつものように張り渡された色とりどりの紐で飾られ、赤や黄色の布が揺れている。セラミックプレートで出来た巨大な街並みは古代文明の面影を残していた。今日もこの街を綺麗に清掃するのだろう。 92
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:30:46
     そうだ、今日は早めに仕事を切り上げて恋人に贈るプレゼントでも買ってこよう、そうしよう。急いで走ったあとの心臓の鼓動はようやく落ち着き、レウンはそんないつもの思考に戻りつつあった。 93
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:33:22
     猫は消えた。全てはいつものままだ。いつものように街を清掃し、いつものように恋人と会う。それもいいだろう。猫の暮らしは自分にはまだ早すぎる……。そうしてバスは目的の清掃ギルド前へと辿りついた。 94
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:37:00
     ギルド前では、玄関の喫煙所でいつものように同僚が煙草を吸っていた。驚いたようにレウンを見て、にこやかに挨拶をする。 「よう、レウン。遅いじゃないか。今日は珍しいな」 95
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:39:51
     レウンはいつもは誰よりも早く出勤する。今日はギリギリだったのでかなり珍しいだろう。しかし同僚は奇妙なことを言った。 「そういえばまだボスが来ていないんだ。珍しいことは重なるものだな」 96
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:44:24
     上司が来ていない? レウンは奇妙に思った。上司もまた、レウンと同じく毎朝はやく出勤するのだ。非常にまじめで仕事熱心な上司。彼が、遅刻するなどありえなかった。だが、もう始業時間が迫っているのだ。 97
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:49:20
    「どうしようかね、ボスがいなけりゃ仕事がめちゃくちゃだよ。無断欠勤なんて初めてじゃないか?」  同僚たちはやれやれと煙草を消して仕事を開始した。今日は部長が指揮することになるらしい。部長も困っていた。 98
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-13 18:56:32
     だが、その日はとうとう上司は出勤することはなかった。 99
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 16:33:44
     後から聞いた話では上司は一晩のうちに行方不明になっていたという。上司は急に失踪するほど思い悩んでいたこともないし、借金や人間関係といったいざこざもなかった。それは不思議な事件だった。 100
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 16:43:35
     それから何年過ぎようと、上司は再び現れることも、その痕跡が見つかることもなかった。いわゆる完全な神隠し状態で消えてしまったのだ。清掃ギルドとしては新しい人事が行われて、代わりの上司が来ることになった。 101
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 16:48:46
     レウンはあのときのことをたまに思い出す。そういえば、上司も猫の管理人の夢を見ていた。あの夢を見たのは上司と自分だけだ。もしかしたら上司は猫になってしまったのではないか? そう思えてならないのだ。 102
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 16:54:36
     もちろん確証も手がかりも何もなかった。全ては想像に過ぎない。しかし、管理人の家を訪ねたとき思い起こすことと全てが合致するのだ。あのとき……レウンの他に先客がいたではないか。それが上司だったのでは? 103
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 16:58:25
     あのとき館の中に入っていれば猫になろうとする上司を止めることが出来たのかもしれない。レウンはそこまで考えて、いや、やはりと自分の考えを否定した。館に入った時、それは自分が猫になる時だ。 104
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 17:04:14
     今となっては上司の心の中はわからない。だが、もしかしたら上司はこの人間の世界に一種の壁を感じていたのかもしれない。そしてそれを猫の管理人はかぎつけ、誘ってきたのだ。同僚たちはみな楽しそうに生きている。猫の誘いには乗らなかっただろう。 105
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 17:11:13
     恋人との交際は続いている。今の仕事が落ちついたら結婚する話まで出てきていた。あのとき猫にならなくてよかったとレウンは思う。無味乾燥としているかに見えた人間の生き方も、悪くないものだ。 106
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 17:16:48
     あのときよりは少ないが、いまでも街中で猫を見る機会がある。そのとき、いつも上司の面影を探してしまっていた。もしかしたらいま彷徨っている猫は自分の分岐した未来の先かもしれない。しかしそのたびに思うのだ。 107
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-14 17:22:56
     管理人は猫の国を実現できたのだろうか。それはとうとう、分からないままだった。 108
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-15 20:09:15
    ――猫の管理人 エピローグ
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-15 20:14:00
     上司の家は事件調査のため封鎖されていたが、ある日官憲の調査の立ち会いの一環で彼の家に上がったことがある。レウンはそのときのことを思い出していた。あの日は晴れた夕方だった。 109
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-15 20:17:08
     上司の家は殺風景なアパートメントで、独り暮らしに丁度いいサイズのこじんまりとした家だった。ドアを開けると、あっと驚いた。普段の暮らしの様子がうかがえる独身男性特有のごちゃっとした住まいだったが……。 110

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