【twitter小説】生きる者たちのステージ【ファンタジー】

廃坑のダンジョンに挑む一人の男。収穫を求めて彼は地下を潜ります。小説アカウント@decay_world で公開したごく短い短編です。この話はこれで終わりです
Twitter小説 減衰世界
rikumo 548view 0コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:06:53
    ――生きる者たちのステージ
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:10:37
     ダンジョン内は静かだった。廃坑型のダンジョンだ。かつて希少な鉱石を産出した坑道は、いまや放棄されて久しい。そういった廃坑には、鉱物から魔力が昇華していき、濃い魔力空間を作る。それを好むものたちが集まるというわけだ。 1
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:14:52
     一次消費者は晶虫と呼ばれるダンゴムシのような虫だ。大きさはまちまちだが、普通は2センチから10センチ程度の大きさだ。大きなものは2メートルほどになり、人を襲ったりするがよほど魔力の濃い所でなければ見られないだろう。こういった場末の廃坑では見られない。 2
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:21:10
     モージクはこういったダンジョンで利益を得る仕事をしている冒険者だ。彼は作業服に硬革の胴鎧という軽装で廃坑に挑んでいた。太い腕でシャツがはちきれそうだ。腰には鈍く光る山刀。ならず者に襲撃されても追い返せるだろう。 3
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:25:05
     彼は手袋で晶虫を掴みとると、腰に下げた捕虫嚢に入れていった。晶虫は効率よくダンジョンから魔力を摂取し、体内に蓄積させる。それが魔法使いなどにそれなりの値段で売れるのだ。腰を若干疲労させるだけで小遣い稼ぎになる。 4
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:30:19
    「ヲホホ! ヲホホ!」 奇妙な笑い声が坑道の奥から聞こえてきた。モージクは警戒して山刀を抜く。ダンジョンの奥はボンヤリとした闇に包まれていた。先遣隊がダンジョンに半永久的な照明を灯していくのだが、ダンジョン内は魔力が濃く空気が不透明なのだ。 5
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:33:41
     ゆっくりと何かの影がダンジョンの奥からスキップで現れた。それは巨大な円盤状の頭を持った化け物だった。頭から直接小さな四肢が生えている。奇妙なほど大きい目や口は、まるで子供のおもちゃのようだ。ビッグフェイスと呼ばれる生き物だ。 6
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:38:14
     こういった化け物が何故こんな場末の廃坑に湧くかモージクはよく知らない。魔法使いが言うには、魔法で瞬間移動する際使用する亜空間の道を辿って魔力を食べに各地を移動するのだそうだ。モージクはにやりと笑い、ズボンに縫いつけてあった楔を抜いた。 7
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:46:08
     ビッグフェイスが気付いたときには、すでにモージクの腕は振るわれていた。楔が一直線にビッグフェイスの大きい目玉に突き刺さった。こうなればスキップどころではない。彼は激痛で怒り狂い、叫び声をあげて突進してきた。だが、すでに右目が潰れている。 8
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:53:00
    「よっと」 モージクは軽々とビッグフェイスの突進をかわすと、交錯した一瞬山刀を振り下ろした。ビッグフェイスの右腕が切り飛ばされ壊れた蛇口のように青い血が噴き出す。ビッグフェイスは戦意を喪失したようだ。一目散にダンジョンの奥へ逃げていく。 9
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 16:58:03
     切り飛ばされた彼の右腕を拾うモージク。「ごちそーさん」 そう言って右腕を背嚢にしまった。こういった魔法の生き物の肉や皮、骨もまた魔法使いによく売れる。モージクは決して逃げたビッグフェイスを深追いしなかった。2メートルはある身体を持ち帰れないというのもある。 10
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 17:02:52
     それ以上に、あういう生物もまた同業者という意識があったのだ。彼も自分も目的は同じ。魔力に魅せられそれを糧とするため地の底に潜るのだ。彼と自分の差は何だろう、今回は自分のほうが強かった、それだけだ。モージクはそう思っていた。 11
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 17:08:42
     ああいったダンジョンの生き物は生命力が強い。失った四肢や視力程度魔力を摂取していけばすぐ再生するだろう。「さて、俺も食われないうちに帰るとするかね」 捕虫嚢はもういっぱいだった。思わぬ収穫もあった。 12
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 17:14:13
    「足を狙ったが……やっぱ片目だと狙いが狂うね。目に刺さるとは悪いことをしたもんだ」 モージクの左目は抉られて空洞だった。以前ダンジョンの生物に襲われて目を失ったのだ。食うか食われるか。全ては同じ戦場。 13
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 17:17:45
    「今回の稼ぎで目を治せるかな……診療所の可愛い魔女ちゃん、待っててくれよ」 闇に沈むダンジョン、今日も彼らはたくましく生きている。 14
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-16 17:19:27
    ――生きる者たちのステージ (了)

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