【DRM】 なぜ絶版本は電子書籍になりにくいのか? 2014年版 【制作コスト】

これから出る本は電子書籍化のハードルが低いだろうけど、過去に出た「電子書籍にするつもりがなかった本」や昭和に出たような「知る人ぞ知る絶版本」「著者存命であるが故に青空文庫からも出せない本」という資産を、どうやって電子書籍にしていったらいいか? という電子書籍出版与太話。
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加藤AZUKI @azukiglg

コミックの場合はネームも含めてスキャンすることになると思うんだけど、底本からのスキャンだとノイズ、汚れもかなり拾うので、それをキレイにクリーニングしなければならない。人力で。photoshop上でぽちぽちやる。

2014-04-17 06:09:33
加藤AZUKI @azukiglg

文字本、小説などの場合は、スキャンしたままでは読み物にならないので、OCRソフトなどでテキスト化しなければならない。OCRの過程で結構な量の誤認識が発生するので、これらは校正を行って底本と付き合わせて直さなければならない。もちろん人力。

2014-04-17 06:10:37
加藤AZUKI @azukiglg

将来的には「全自動高性能OCRソフト」「全自動校正ソフト」とか出てくるんだろうけど、今はまだそれらが手が届く値段で普及する段階になく、少数の異能者w的な才覚と経験と能力を持つ校正者に頼る他ない。

2014-04-17 06:11:48
加藤AZUKI @azukiglg

んで、大多数の「組版データを紛失している本」「電子組版ではなかった本」のうち、電子化のための再編集コストを投じて貰えるのは、「刊行すれば売れる本」だけで、売れないから絶版になった本というのは、再編集コストの回収が難しいから電子化されない可能性が高い。

2014-04-17 06:13:04
加藤AZUKI @azukiglg

過去に、そうしたもののうち著者死亡から50年経過して著作権(出版権)が喪失したものを有志が電子化する試みとして青空文庫があった。今もあるけど、「著者死亡から50年経過していない」「著者存命」「存命だけど行方不明」のものは青空文庫では扱えない。

2014-04-17 06:14:26
加藤AZUKI @azukiglg

著者行方不明……は、どうにもならないから置くとして、著者存命、所在明確だが、「売れなかったから絶版になった、電子データが存在しない本」を電子化するにはどうしたらいいか?(ぶっちゃけ、どこから、誰が再復刻に掛かる制作コストを調達し、負担するか)が課題になる。

2014-04-17 06:15:54
加藤AZUKI @azukiglg

CampFireやKickstarterみたいなクラウドファンディングで制作費を募集して、っていう試みは既に行われてるけど、見てみるとそれらの制作費相場は30~50万の間くらいが多いみたいだった。これは、額面としては「編プロが編集をロット請けする場合」の相場だと思う。

2014-04-17 06:18:00
加藤AZUKI @azukiglg

専従で貼りつく人が2人くらい、貼りつく期間が1カ月程度、と考えると、「編プロが請け負う」なら概ね計算が合う数字。つまり、最終成果物が印刷物であろうと電子データ(電子書籍)であろうと、書籍の再復刻にはそれだけのコストは最低でも掛かる。

2014-04-17 06:19:16
加藤AZUKI @azukiglg

経産省が民主政権時代にやってた緊デジ(経産省コンテンツ緊急電子化事業)とかでは、スキャンのみの電子書籍(レプリカ本)の助成金の相場が6万くらいで、テキスト化したリフロー本の相場は10~20万くらいだった気がする。

2014-04-17 06:21:14
加藤AZUKI @azukiglg

法人が事業として請け負おうと思ったら、そのくらいの金額を取らないとビジネスとして成り立たない。ビジネスとして成り立たないものについては、「やりたい人が好きにやれば」ということになってしまって、なかなか誰も手を上げなくなる。故に、進まない。

2014-04-17 06:22:43
加藤AZUKI @azukiglg

「著者が存命で所在も確かだけど、売れなくて絶版になった古い本なので出版社が電子化をしたがらない本」の需要がどのくらいあるのかはわからないけど、「この本は電子版があったらそれで読みたいのに」って思う古本は結構あるなあ。

2014-04-17 06:23:45
加藤AZUKI @azukiglg

古本を古本として買っても、著者に取り分が届かない。古本を電子化したものを著者が販売できれば、古書に流れるはずだった取り分は著者にちゃんと届く。

2014-04-17 06:25:02
加藤AZUKI @azukiglg

そういう本の需要はごく小さいだろうし、制作費とすぐに釣り合わないのは確かなんだけど、電子化されていて古書と渡り合える程度の価格で、その著者の仕事に対価を払いたいと思うような読者がいてくれるなら、「古書の電子化」というのは意義があると思う。

2014-04-17 06:25:55
加藤AZUKI @azukiglg

繰り返しになるけど、「では、その電子化・電子復刻のためのスターティングコストたる制作費を、誰が負担するのか?」ってところに話が戻る。

2014-04-17 06:26:42
加藤AZUKI @azukiglg

電子化して欲しいと望む読者が篤志を募るのか、 電子化によってメリットがある著者が負担するのか。 電子化コストを価格に反映させる場合、読者が多く望めない本だと単価を高くせざるを得ない。発行部数の少ない稀少本や理工書が高いのは同じ理由w

2014-04-17 06:28:14
加藤AZUKI @azukiglg

この「売れなかった絶版本の山」が電子書籍になりにくい理由については、拙著「なぜ絶版本は電子書籍になりにくいのか?」 http://t.co/cdVqjvfu9x でも触れているところで、他にも理由は色々あるんだけど、まあ、やっぱぶっちゃけ「最初の数万円」を誰も負担できないから。

2014-04-17 06:30:25
加藤AZUKI @azukiglg

「最初の数万円」てのは、「クラウドファンディングで編プロが募ったら20~50万」っていうアレね。それをどこまで抑えられるか、逆に言えば「最低でも幾ら必要なのか」を洗い出す作業というのをやってるのが、竹の子書房の新刊(古書復刻)で、「奇態流行史」では制作費も算出してます。

2014-04-17 06:31:42
加藤AZUKI @azukiglg

今のところ、「できれば5万円以下くらい、掛かっても10万円以内くらい」で電子復刻作業ができれば、「依頼する側」にとっては割と現実的な数字になるかなーとは思ってる。後はそれを「誰が負担するか」「どう負担するか」だね。

2014-04-17 06:33:27
加藤AZUKI @azukiglg

ちなみに、緊デジのぐだぐださ加減wについては、「緊デジ」でぐぐると電子書籍クラスタ界隈からの怨嗟が見えるので、それをさらっと見ておく程度でいいと思う。「スキャンしてPDFにまとめただけのものにカネ払ったのかよ!」とかで満載ですw

2014-04-17 06:34:56
加藤AZUKI @azukiglg

ともあれ、「資料本」や「知る人ぞ知る」という本は、どんなにいいものであっても著者がマイナーだと電子化されないし、必要とする人の人数が見込めない場合も電子化されない。

2014-04-17 06:36:32
加藤AZUKI @azukiglg

ただし。電子復刻というのは、「紙の本を紙で復刻する」よりは実はハードル低い。再編集のための制作コストは確かに紙の本と大差ないんだけど、それこそ「印刷費」やそれに附随するコストがないわけだから。

2014-04-17 06:37:25
加藤AZUKI @azukiglg

ただその「数万円、数十万円」の再制作再編集費用の捻出が難しい程度には、出版事業というのは小商いなんだということは、ちょっとはわかって欲しいかなー。たかだが数百円の本の売り上げをDRM付けて囲い込もうとせざるを得ない懷事情というか。

2014-04-17 06:39:46
加藤AZUKI bot @azukiglgbot

Appleとかファブレスメーカーが大きな鉱脈掘り当ててるのを見て、「これからはグローバルだ、日本は製造業から脱却するのだ」というコンサルさんや作家さんなんかをちょくちょく見かけてきたけど、「勝ち組=抜け駆け勝者」のやり口っていうのは、全員が真似たら恩恵がなくなるものであって(ry

2014-04-17 06:40:05
加藤AZUKI @azukiglg

というわけで、「これから出る新刊本の電子書籍化」はもう心配してないけど、「過去に出た電子書籍化がスケジュールに入ってない古本の電子書籍化(で、著作権がまだ切れてないもの)」をどうするか、っていうのは、作家全体にとっての共通の課題だと思う。

2014-04-17 06:41:31
加藤AZUKI @azukiglg

赤松健先生や佐藤秀峰先生や鈴木みそ先生らの取り組みというのも、それらに対するひとつの問い、ひとつの解だろなと思ってるんだけど、セルフプロデュース能力がある人ばかりじゃないからなあ、作家って(^^;)

2014-04-17 06:43:25