アイヌアニメ第三話『ニタイパカイェ』裏話

丹菊逸治 @itangiku

アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。ちょっと裏話を書いておきたい。アニメそのもの、叙事詩そのものとはあまり関係ないけど。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。当初、何を題材にするかはいろいろな事情で二転三転していた。「虎杖丸」「峡山記」「北蝦夷古謡遺篇」「海馬嫁」…。唯一決まっていたのは「公刊されていて誰でもアニメと原作の突合せができるもの」ということだけだった。

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@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。前回のコンセプトは「先入観無しに叙事詩をそのままアニメ化してみせる」。「自然との共生」だの「平和な人々」だのは無し。喧嘩っ早くて神にも逆らう。服もアットゥシなんぞ着ていない。そういうポイヤウンペを映像にする。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。それは「ルロアイカムイ」でほぼ実現された。だから今回はそれとは違うことをやろう、と思っていた。やり残したことはいくつかあった。「鎧」と「乱戦」、そして「味方の戦士」と「ヒロイン」だった。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。前回の鎧はほぼ脛当てだけだった。兜のデザインは出来ていたが、検討不足と判断して土壇場で削除してもらった。だが、本来多くの叙事詩では英雄たちは鎧兜を身に着けて戦う。それが無いとあっという間に殺されてしまうのだ。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。鎧兜に身を包んだ英雄たちは、敵の軍勢に切り込んでいく。前回は巨大な化物との一対一の戦いだったけれど、本当は「北斗の拳」ばりに「モブキャラを倒しまくる」のが叙事詩の英雄たちの姿なのだ。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。当然ながらポイヤウンペも一人ではない。美貌の戦士「カムイオトプシ」や「戦うヒロインたち」が登場し、一騎当千の武者ぶりを発揮する。二作目に関わるなら、そういう「典型的な叙事詩の戦い」を映像化しようと思っていた。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。つまり、映像制作にあたるアニメスタジオさんには「エイリアン」に対する「エイリアン２」のようなものを作ってもらおう、と心に決めていた。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。今回も短編だということは決まっていた。「鎧・乱戦・ヒロイン」がそろった叙事詩を数分に詰め込む。しかも出来るだけ省略せずに。原作と並べて「確かにこういう話だ」と言ってもらえるようにしたい。物語を改変せずに。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。長編を短編に圧縮することで話が分かりにくくなるのは覚悟の上。ただしメリハリがないのはまずい。最後に残った候補は「峡山記」と「ニタイパカイェ」。前者は中川裕『アイヌの物語世界』で詳しいダイジェストが紹介されている

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。「峡山記」は近代的なアイヌ口承文学研究において紹介された初めての叙事詩といってもよい、記念すべき作品。内容的にも６人×６人の鎧武者との戦いなど見せ場がたっぷりある。敵のボスの妹との恋もある。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。だが「峡山記」のメインテーマは「育ての姉との葛藤」。むしろ長編向きだ。目まぐるしく動く短編アニメで湿っぽい話をやってもわけがわからなくなる。結局「ニタイパカイェ」になった。ドラマが明快でメリハリがある。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。もちろん、それだけではない。前回の「ルロアイカムイ」でもそうだけど大きなメッセージがある。ルロアイカムイのテーマは「団結」。ニタイパカイェのテーマは「アイデンティティ」である。あるいは「帰還」といってもいい。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。ニタイパカイェは複雑な話だ。結局、短編なのに１０分近い大作になってしまった。本当にありがたいことに制作サイドがものすごく頑張ってくださった。映像、声優、音楽など全部半年でできた。信じられない。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。実は「ニタイパカイェ」でなく「海馬嫁」の予定だった（外向きには「北蝦夷古謡遺篇」といっていたけど嘘でした。ごめんなさい）。これはかなり細かい部分まで検討が終わっていた。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。実は「峡山記」「ニタイパカイェ」のどちらにするかという話とは別に、本命は「海馬嫁」で並行して検討していた。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。つまり峡山記かニタイパカイェか、というのは表向きのシリアス路線の場合であって、実は裏で「海馬嫁」で「ラブコメ叙事詩アニメ」をやる計画を進めていた。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。だから2013年度の企画が決まるまではひたすら企画の検討を続けていた。たった数分の短編なんだけども。この手の文化考証の仕事は実際に制作が始まる「まで」が一番重要だから。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。でも結局「海馬嫁」でラブコメ叙事詩アニメを、という企画はお蔵入りになった。理由はいくつかあるんだけれども、１つは樺太方言の発音が少し難しい、ということ。音声録音時に「発音できない！」となっても間に合わない。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。そういうわけで土壇場で没になってしまったんだけれど、「海馬嫁」はいい話だと思います。主人公のオタストゥンクフがほんとに情けなくていい感じです。嫁さんが「海馬（トド）」で、トドの姿のままで戦場にくっついてきます。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。主人公のオタストゥンクフは間抜けなので戦場で矢を射尽くしてしまう。すると後ろにいた嫁さん（トド）が口から矢を出してくれるんです！で、それを射ちまくって戦う。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。細部のよく分からない部分は北蝦夷古謡遺篇を参考にする予定でした。だからまあ「北蝦夷古謡遺篇をやる」という言葉も嘘ではなかったのです。どっちにしてもある段階で消えてしまった企画ですが、話は面白いです。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。ちなみに、「ニタイパカイェ」の敵勢に鳥や虫が登場するのは、実は「海馬嫁」で敵勢に鳥と「石地蔵」が登場することの名残りです。

丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ２。第三話『ニタイパカイェ』制作裏話。企画検討の頃については、すでにいくらか記憶があいまいなところもあるのですが、一応一生懸命企画を練ったというチラ裏でした。

丹菊逸治 @itangiku

ここしばらくツイしている「アイヌアニメ」はアイヌ文化財団が作った短編アニメで、６作品あります。ネット配信もしてます。こちらからどうぞ　http://t.co/Cncb4nNZo2