アイヌ語で【蘇る】とは?

アイヌ文化研究者・アイヌ語爺さん( @aynuitak_jiji )による、アイヌ語【蘇る】の解説です。
2
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

①【蘇る】 復活祭。アイヌ語で「蘇る」には二種類あるので注意が必要。つまり 1.siknu しkヌ 2.yaykatcipi やイカッチピ だ。1.の方は死んだと思ったのが、そのままの姿で蘇る事。それに対して2.は別な姿で生まれ変わる事でそれぞれ自動詞、名詞である。

2014-04-20 01:24:47
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

② 特に1.は辞書的に「生きる」の意味で覚えている事が多いため死から「蘇る」という意味がぱっと出てこない。それに対して2.の方はものによっては「蘇る」としか訳語が出ていないため、こちらを選ぶ確立が高いのだ。

2014-04-20 01:32:51
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

③ しかし状況の違いは大変なもので、Huristos siknu ! キリストは蘇りたまえり! を Huristos yaykatcipi ! としようものなら聖書ではなくジャータカの話になってしまう。

2014-04-20 01:38:06
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

④ 今日丹菊君が解説してくれた話でも他のユカラでも問題にされる「蘇り」は siknu、つまりそのままの形での復活である。それに対して神謡の世界では kaykatcipi が多い。サケでもクマでも肉体は死んで魂だけとなり、

2014-04-20 01:43:41
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑤ 人間世界には新たな肉体を得て卵や子の形からやり直す。こう書くと人間と動物の違いかと間違えそうだが、そうではない。人間はそのままの形で生き返る事もあれば魂が新たな肉体を得る生まれ変わりもあると考えられる。

2014-04-20 01:47:48
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑥ ray 「死ぬ、死」という言葉は実は物質であれば動かない状態、音であればシーンと無音の状態である。だから「仮死状態」を ray と表現した例があるし、raykosanu は騒がしい宴会の席が「さっと静まりかえる」という意味になる。

2014-04-20 01:53:32
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑦ 仮死状態であろうと死んだ状態であろうと動かない状態、つまり ray 状態にある者が活動を再開すれば、それは siknu と表現される。この場合は「生きる」というより「生き延びる」という語感がぴったりだろう。

2014-04-20 01:57:38
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑧ それに対して死んだ魂は地下の死者の世界へ行き肉体が朽ち、その後の考えは、実は必ずしも一定しないが、この世に戻ってくるとされる。これは動物と同じで、ただ仏教のように他の生物に生まれ変わる事は基本的になく(物語では変わる話が多いが)現実的には人は常に人

2014-04-20 02:05:05
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑨ クマは常にクマとなり、また性別も変わらないと考えるようである。人については夭逝した赤子への処置や子供の身体的特徴から生まれ変わりを知る事が知られている。特に後者は、例えば耳たぶに穴のあいた子供が生まれてくると祖父の生まれ変わりだとしてそういう名前を付ける例がある。

2014-04-20 02:11:21
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑩ 耳たぶの穴とは耳輪を通す穴で、日本による実効支配後禁止されるまでアイヌは男も耳輪をするのが普通だったからだ。ユカラの中で先の耳たぶに穴のあいた子の事実をふまえた創作として、それぞれ別々の村に生まれた男女の耳に生まれながらに耳輪が片方だけ付いているというのがある。

2014-04-20 02:21:42
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑪ これは神が将来結ばれるべき男女に片方ずつ耳輪をはめたというもので、波乱万丈の生い立ちの末に二人が結ばれるわしが最も好きなユカラの一つ、金成イメカヌ伝承で金田一京助が題を付けた「耳輪の曲」だ。

2014-04-20 02:27:30
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑫ ところで人は地下に(現在の旭川では恐らくキリスト教の影響で天に)、動物は天にそれぞれ魂が行ってまた人間世界に生まれ変わると考えられるが、シカとサケについては魂がどういうルートで循環するか分からない。

2014-04-20 02:37:31
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑬ 人間が作法にのっとって殺せばやがてチェパッテカムイやユカッテカムイの袋に行くんだろうが、それは魂なのか既に肉体をもった姿なのか判然としない。昔の人は疑問に思わなかったのだろうか?伝わってないし、年寄り達もシカとサケにはある意味冷淡なところを見ると関心がなかったのか。

2014-04-20 02:42:34
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑭ 冷淡と言ったのは、ちゃんと殺さないと容易に魂は滅んで循環しなくなり、人間が食料に困るから生まれ変われるようにはするが、今のアイヌが学校などに呼ばれて「アイヌはどんな生き物でも命は大事にします」という商売の口上とは違って

2014-04-20 02:47:26
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

⑮ シカとサケは他のものと差がつけられている。つまり魂は神ではない。だいたい命は平等って、生きて死ぬ事は等しくても人間でも動物でも神でも階級は厳然としてあるから一般に創作されているものと本物はかなり違うんだな。

2014-04-20 02:52:26
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

@longopenroads アイヌの話かな?自殺者は確かに懲罰として二度と生まれ変われぬよう、あるいは地獄に行くよううつぶせに墓穴に入れる。だからアイヌは何があっても自殺だけはいかんとわしも言われてきた。その事を言ってるのかな。

2014-04-20 02:58:05
非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

@longopenroads それはクマに対する懲罰だな。石狩でもどこでもやるはずだ。単に死者の下にするだけでなく爪や歯も切ることになっている。こうして地獄に落とされたクマは天どころか地上にも永劫上がってこれん。

2014-04-20 03:50:45